折れなかった心―千葉ロッテ鈴木、“必然”のサヨナラ打「チームで獲った1勝」

Full-Count 岩国誠

2019.4.10(水) 12:38

千葉ロッテ・鈴木大地※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)
千葉ロッテ・鈴木大地※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

オリックス戦で劇的なサヨナラ打、レギュラー落ちも井口監督に「感謝の気持ち」

 9日のオリックス戦で劇的なサヨナラ勝利を飾った千葉ロッテ。延長戦を制したのは、折れない心で自らを奮い立たせてきたチームリーダーの一打だった。

 それは必然だったのかもしれない。2点差の9回裏、4番・角中が3号同点2ランを放ち、延長に突入。迎えた10回、1死満塁でこの日、2回に先制適時打を放っていた6番・鈴木に打席が回ってきた。

「絶対に回ってくると思っていたので、準備はできていました」

 集中力を高めて迎えたその打席。オリックス4番手・近藤の初球、146キロの直球を迷いなく振り抜き、右前サヨナラ適時打を放って見せた。

 鈴木の置かれる環境は今年、大きく変わっている。守備位置こそ変わりながらも3年連続全試合出場を果たしていたチームリーダーは今年、本塁打が見込めるレアードが加入したことで、三塁以外のポジションを模索することに。「最後の最後まで、スタート(スタメン)で出ることは諦めていない」と、オープン戦では慣れない守備位置や途中出場など、限られた出場機会でアピールを続けてきたが、その名前は開幕オーダーにはなく、開幕戦は出場機会も訪れなかった。

「悔しくないかと言われればもちろん悔しい」。出場のなかった開幕戦について、正直に気持ちを口にした鈴木。ただ、井口監督からは「チームの核になる選手。必ずレギュラーに戻る日がある」と開幕前に伝えられたいたという。

「代打の一番手で考えていると言ってもらいましたし、もう一度(レギュラーを)取り返すつもりでやってほしいとも(言われていました)。そう話してもらえて感謝の気持ちもありますし、僕自身、全然気持ちが落ちていなかった」

 指揮官の言葉を胸に、ベンチメンバーとして、日々チームのために準備をしてきた。

「すごく声をかけてくれて、ありがたみをすごく感じました」

 そんな中、昨年4番を務めた一塁・井上晴哉の不調もあって、4日の埼玉西武戦では「6番・一塁」として、鈴木がスタメンに名を連ねた。

「(一塁でのスタメンは)今までの自分じゃ考えられないですね」と語る鈴木だが、「それでも試合がすごく楽しいですし、(出場できることは)嬉しいです。今も一生懸命やるだけです」とも明かす。この日のお立ち台で語っていた「今できることを100%毎日やる」を実践し続け、サヨナラ打を呼び込んだ。

「いつか絶対にチャンスは来る。その時に『待ってました!』っていう準備をしておこうと取り組んできました」と、オープン戦から前向きな姿勢を貫き続けた背番号7。お立ち台では「選手、スタッフ、監督コーチもそうですが、すごく声をかけてくれて、ありがたみをすごく感じましたし、本当にファンの方の声援も感じたので、それもあって心は折れなかったです。まずはこういう目に見える形で、チームに貢献できてすごく嬉しいです」と周囲の支えを力に変え、それを結果として出せたことを喜んだ。

 鈴木に始まり、鈴木に終わったこの一戦。先制適時打とサヨナラ打、2つの適時打を放ち「目に見える形」でチームに貢献した鈴木だが、実はもう一つ「自身のやれること」を遂行できた打席があった。それが9回、同点に追いついた直後、無死一塁で決めた送りバント。実は5日の福岡ソフトバンク戦でも同様の場面があった。

 延長10回に角中が勝ち越し3ランを放った直後、レアードが左安打で出塁。続く鈴木は送りバントを試みるも捕邪飛となり、走者を進めることができなかった。しかし、今回はしっかり走者を進めることができた。

「福岡で大事なところでミスしてしまったので、その後でああやって決められたことも大きかったです。確かに得点にはつながりませんでしたが、本当にこれからに活きる1打席、犠打でした」

 安打を打つだけではない部分で、チームのために仕事ができたこの場面を、納得の表情で振り返った。

「今日は美味しいところを僕が取っただけ。角さんが追いついたのもそうですし、リリーフ陣が抑えたのもそう。チームで獲った1勝だと思っています」

 お立ち台では「本当の4番が帰ってきても、試合に出られるように頑張ります!」とアピールしたチームリーダーは、会見を終えると愛用のバット2本を携えて、室内練習場へと歩いていった。

(岩国誠 / Makoto Iwakuni)

記事提供:Full-Count

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