苦しみ抜いたシーズンで、「人生初」のその体験が一服の清涼剤となっただろうか。北海道日本ハムの中島卓也内野手が、昨年、プロ初本塁打を放った。深刻な打撃不振と相次ぐ怪我に悩まされた1年。新たな立場で迎える今年は、中島卓選手にとってもチームにとっても、巻き返しを期す重要な年となる。
中島卓選手は福岡工業高校時代、同級生の三嶋一輝投手(現・横浜DeNA)の陰に隠れて無名だった。思いがけず北海道日本ハムスカウトに見出され、いわば「秘蔵っ子」として2008年ドラフトで5位指名を受ける。4年目に一軍に定着すると、課題だった打撃でも少しずつ成長を見せ、主力のひとりとして自身の立場を確立していった。
プロ野球選手としては細身で、トレードマークのオールドスタイルがそれを強調しているようにも見えるが、一方で「1年を通して試合に出続けられる」ことが、中島卓選手の強みでもある。2015年は全試合に出場して打率.264をマークし、34盗塁で盗塁王に輝く飛躍のシーズンに。翌2016年も全試合出場を継続し、粘り強い打撃と巧みな走塁・守備でチームの日本一に大きく貢献。いやらしさにあふれる選手として、対戦相手の脅威となり続けた。
しかし、2017年は一転して苦難のシーズンに。開幕当初から不振に苦しみ、8月上旬ごろまで打率が2割に届かない。試合中の負傷によって、2015年から続いていた連続スタメン出場記録もストップし、ようやく状態が上向いてきた矢先に再び怪我に見舞われる。最終的には91試合、打率.208、11盗塁という成績に終わってしまった。
ただ、一方で待望の記録も飛び出した。7月30日の福岡ソフトバンク戦で、プロ9年目、通算2287打席目にして初アーチを描いたのである。地元でノーアーチ記録に終止符を打ち、「初めてなので。ああいう感覚なんですね」と喜んだ中島卓選手は、「ずっとやりたかった」という、当時チーム内で流行していたホームランパフォーマンスも笑顔で披露した。
アマチュア時代を含めても初めて、まさに「人生初」の一発だったという中島卓選手。記念すべき初体験を味わったシーズンを終えると、オフにはこれまた自身初となる選手会長への就任が発表された。10年目の節目を迎えるシーズンに、27歳で任された大役。チームの立て直しに向け、精神面でも重要な役割を担うことになった。
絶大な存在感を誇った大谷翔平投手(現・エンゼルス)と、前選手会長である大野奨太選手(現・中日)が退団し、2018年、チームは大きな岐路を迎えるだろう。そんな中で、中島卓選手の技術と経験は貴重なもの。走・攻・守の全てで仲間たちを引っ張るべく、北の大地で躍動するチームリーダーの勇姿を楽しみにしている。
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