WBC開幕投手を任された日本代表の技巧派エースが、シーズンでは3勝11敗、防御率5.09という数字に終わることを、誰が想像しただろうか。キャリア5年目。千葉ロッテ・石川歩投手は、自身の前に立ちはだかるプロの高い壁に、今年改めて立ち向かう。
滑川高校、中部大学を経て東京ガスで活躍した石川投手は、2013年のドラフト1位で千葉ロッテに入団。最速150キロを誇る速球と、直球のような軌道でストンと落ちるシンカーのコンビネーションで、1年目から10勝。新人王に輝き、早くも先発の柱のひとりとして、チーム内における自身の立場を確立した。
個性的な風貌通り、飄々とした右腕にとっては、2年目のジンクスもどこ吹く風。2015年は27試合に登板して12勝を挙げ、2年連続で2桁勝利を達成する。そして2016年には、23試合14勝5敗、防御率2.16で最優秀防御率のタイトルを獲得。「火の玉投手」こと荒巻淳氏の記録を塗り替え、ルーキーイヤーから3年連続2桁勝利という球団記録を樹立した。
しかし、先述の通り2017年はまさに苦難のシーズンに。3年連続で160イニングス以上を消化した安定感は鳴りを潜め、100イニングスを下回った。前年は162回1/3でわずか22個だった四球も、この年は97回1/3で23個。制球の乱れが球数の増加を招き、早い段階での降板につながるという悪循環に陥ってしまっていた。
球団記録を更新中だった連続2桁勝利もストップし、新体制となるチームでは、おそらく先発ローテーションの座も確約されない立場になる。節目の30歳を控えて、まさに1からの出直しを図る2018年。
ただ、今年の5月15日、富山市民球場アルペンスタジアムで千葉ロッテの主催試合が開催されることが発表された。地元を愛する石川投手にとっては、それは大きなモチベーションとなるに違いない。「いつか地元でホームゲームを開催してもらいたいとずっと思っていましたので、実現をしていただき嬉しく思っています」と、率直に喜びを語っていた。
石川投手はさらに、「自分も子供の時、何度か富山でプロ野球を見たことがあります。その時の思い出は、今もはっきりと覚えています」、「当日、投げる機会があるかどうかは分かりませんが、多くの地元の方、知人、家族の前で投げたいという思いがあります」と、地元への凱旋を心待ちにしている様子だった。
2018年の5月15日は火曜日。再び先発ローテーションの軸に返り咲くことができれば、カード頭の試合で出番が回ってくる可能性は高い。故郷のファンのため。未来の野球選手のため。待ちに待った舞台で好投を見せ、お馴染みの「絶景」を見ることができるだろうか。洒脱なシンカーボーラーにとって、巻き返しを期す1年が始まる。
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