オープン戦首位打者とシーズン成績の対比がシーズン終了後に行われるケースは少なくないが、「チーム内首位打者」というところまで限定すると、かえりみられる機会はそこまで多くはないだろう。そこで、今回は昨年のオープン戦におけるパ・リーグ6球団のチーム内首位打者を紹介し、各選手が送ったシーズンの推移を振り返っていきたい。
12球団打率トップだった東北楽天・内田靖人選手は序盤に苦しむも……
西川遥輝選手(北海道日本ハム)
2018年オープン戦:14試合 40打数13安打 打率.325 1本塁打 7打点 出塁率.481 OPS1.006
2018年シーズン:140試合 528打数147安打 打率.278 10本塁打 48打点 出塁率.391 OPS.796
昨年のオープン戦でも好調をキープしてみせた西川選手は、無事に開幕から「定位置」ともいえる北海道日本ハムのリードオフマンの座に収まっていた。しかし、シーズンに入ってからは4月21日まで打率2割にも届かないほどの深刻な不振にあえいでしまう。その後は若干持ち直しを見せたものの、7月頭までの打率は2割台前半にとどまり、なかなか完全復活には至らなかった。
しかし、そんな中でも4月の後半以降の出塁率は3割台後半をキープし続けており、リードオフマンとしての役割はきっちりと果たしていた。シーズン後半に入ると打撃面でも調子を取り戻し、7月に打率.316、9月に.338と躍動。埼玉西武・源田壮亮選手、千葉ロッテ・中村奨吾選手との三つ巴の争いを制し、自身3度目の盗塁王にも輝いた。シーズンオフには初めて侍ジャパンにも選出されるなど、最終的にはさらにその評価を高めた1年となった。
内田靖人選手(東北楽天)
2018年オープン戦:16試合 44打数17安打 打率.386 4本塁打 12打点 出塁率.471 OPS1.153
2018年シーズン:58試合 177打数35安打 打率.198 12本塁打 25打点 出塁率.259 OPS.694
オープン戦期間中に規定打席到達者としては12球団最高となる打率.386という数字を残し、見事にオープン戦首位打者へと輝いた内田選手。プロ入り後の4年間で出場31試合、2本塁打にとどまっていた若武者には一躍ブレイクへの期待も高まったが、シーズン本番では一軍のバッテリーによる厳しい攻めに苦しんだ。オープン戦とはうって変わって打率は2割前後を推移し、2度の登録抹消を経験するなど大きな壁に当たってしまう。
しかし、23歳の和製大砲は8月末に一軍へ復帰すると、9月だけで6本塁打を放つ活躍を見せて再び存在感を発揮。最終的なシーズン打率は2割に届かなかったが、わずか58試合で12本塁打を放ってみせ、持ち前のパワーが一軍の舞台でも通用することを証明している。確かな足跡を残した1年を経て、来季こそはレギュラー定着、そしてさらなる飛躍へとつなげることができるだろうか。
源田壮亮選手(埼玉西武)
2018年オープン戦:16試合 60打数18安打 打率.300 0本塁打 4打点 出塁率.344 OPS.761
2018年シーズン:143試合 594打数165安打 打率.278 4本塁打 57打点 出塁率.333 OPS.707
昨季は埼玉西武の“獅子おどし打線”がリーグを席巻したが、打率.136に終わった山川穂高選手を筆頭に、オープン戦では多くの主力打者が本領発揮とは言い難い成績にとどまっていた。そんな中でチーム唯一となる3割打者となった源田選手は、シーズンが開幕してからも好調を維持。5月23日まで打率3割をキープする活躍を見せ、2番打者として幾度となくチームの勝利に貢献していた。
その後、7月は打率.250、8月は打率.227と夏場にかけて調子を落としたが、9月には打率.320を記録して復調。10月は5試合で打率.353と絶好調のままシーズンを締めくくり、シーズン通算の打率も昨年の.270から8厘上昇。チームのリーグ優勝にも攻守両面で大きく貢献し、ゴールデングラブ賞も初受賞。ルーキーイヤーから2年連続でフルイニング出場という史上初の偉業も達成し、名実ともにリーグを代表する遊撃手として認められる1年とした。
オープン戦では打率.261だった上林選手は、開幕後に大きく調子を上げた
鈴木大地選手(千葉ロッテ)
2018年オープン戦:14試合 38打数14安打 打率.368 0本塁打 4打点 出塁率.478 OPS.925
2018年シーズン:143試合 477打数127安打 打率.266 8本塁打 49打点 出塁率.346 OPS.744
鈴木選手は昨年のオープン戦で東北楽天の内田選手に次ぐ12球団2位の打率.368という好成績を収めたが、シーズンが始まってからは一転して不振にあえいだ。とりわけスタートダッシュの失敗は顕著で、4月は打率.197と絶不調に。6月には打率.325と持ち直したものの、続く7月は.212と再び調子を崩してしまい、シーズンを通してなかなか波に乗り切れなかった。
それでも、9月には打率.328とあらためて調子を上げ、10月も打率.286と本来の打撃を取り戻しつつある状態でフィニッシュ。最終的な成績は例年に近い水準となっており、鈴木選手の安定感が再び発揮されたシーズンにもなった。今季はレアード選手の加入で定位置争いの激化が予想されるが、鈴木選手もチームリーダーとして負けてはいられないところ。安定した打撃と高い修正力を武器に、今季もレギュラーの座を守り抜けるだろうか。
宗佑磨選手(オリックス)
2018年オープン戦:13試合 49打数15安打 打率.306 4本塁打 5打点 出塁率.370 OPS.962
2018年シーズン:74試合 266打数62安打 打率.233 5本塁打 22打点 出塁率.281 OPS.653
2017年までは主に遊撃手としてファームで研鑽を積んでいた宗選手だったが、昨季開幕前に外野手へ転向したことが大きな転機となった。コンバートが実ってオープン戦で出場機会をつかむと、わずか13試合で4本塁打を放つ大暴れでアピールに成功。「1番・センター」として自身初の開幕スタメンにも名を連ね、本格ブレイクへの期待が高まった。
しかし、シーズンが開幕してからの打率は2割前後にとどまり、トップバッターの座を守り抜くことはできず。7月1日の試合を最後に約2カ月の二軍調整も強いられたが、再昇格を果たした9月は月間打率.270と成長の跡を見せた。9月30日から10月1日にかけては3打席連続ホームランを放って存在感を示し、終盤は再び1番に復帰してシーズンを終えた。オープン戦での活躍をきっかけに多くの貴重な経験を積んだ22歳の若武者は、今季こそ一軍定着、そしてレギュラー奪取を果たせるだろうか。
上林誠知選手(福岡ソフトバンク)
2018年オープン戦:14試合 46打数12安打 打率.261 0本塁打 0打点 出塁率.292 OPS.640
2018年シーズン:143試合 551打数149安打 打率.270 22本塁打 62打点 出塁率.315 OPS.803
2018年のオープン戦では12球団中10位と低迷してしまった福岡ソフトバンク。打率.261の上林選手がチーム内首位打者だったという事実自体が、当時の苦境を端的に物語るものでもあっただろう。しかし、上林選手自身は開幕から好調を維持して昨季終盤の不振を払しょくし、レギュラーの座をがっちりとつかんでみせた。
全試合に出場して自己最多の22本塁打を放ったことに加え、歴代4位タイとなるシーズン14三塁打、外野手としてはリーグ最多の10捕殺と、走攻守の全てにおいて大いに存在感を発揮した23歳の若武者。今回紹介した6球団のオープン戦首位打者の中で、シーズンに入ってから打撃成績をオープン戦時よりも向上させたのは上林選手ただ1人だった。
「チーム内で最高の打撃成績」という実績は嘘をつかない?
以上のように、オープン戦でチーム内首位打者に輝いた6選手のうち4人がシーズン開幕直後にいったん成績を落としている。上林選手は打率.261とオープン戦期間中は決して好調とは言えず、むしろシーズンに入ってから調子を上げていることを考えれば、シーズン開幕まで好調を保つことの難しさがあらためてうかがい知れるところだ。
一方で、今回紹介した6選手全員がシーズン終盤にかけて調子を上げ、いずれもポジティブな形でシーズンを締めくくっているのもまた興味深いところ。実績ある4選手はいずれも一定以上の数字を残しており、昨季開幕の時点では一軍での実績に乏しかった内田選手と宗選手もキャリアハイの1年に。昨季に限って言えば、チーム内首位打者を獲得するほどの打棒を見せた面々はシーズンに入ってからもその実力を発揮したと言えそうだ。
今季も各球団が間近に迫ったシーズン開幕に向けてしのぎを削っているが、果たして各球団のオープン戦首位打者はどのようなシーズンを送るのだろうか。主力選手がシーズン前からその能力を見せ付けるのか、あるいは新たなブレイク候補が現れるのか。球春真っ盛りの今だからこそ、今一度応援するチームの選手たちの成績を確認してみてはいかがだろうか。
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