中村剛也選手や浅村栄斗選手、森友哉選手など、高卒野手の活躍が目立つ埼玉西武。しかし高卒ルーキーと言えば、まずファームで経験を積むことがほとんどだ。一般的に野手の育成は投手に比べて時間がかかると言われており、ファームとはいえプロの厳しい環境は、高校を卒業したばかりの若者に多くの試練を強いる。ところが埼玉西武には、今季イースタン・リーグで好成績を残し、早くも大器の片鱗を見せ付けている高卒ルーキーがいた。静岡高校出身のドラフト4位・鈴木将平選手である。
・鈴木選手の2017年ファーム成績
101試合289打数81安打0本塁打32打点 打率.280
参考として、埼玉西武が誇る高卒野手の先輩たちが、ルーキーイヤーに残したファーム成績は以下の通り。
・松井稼頭央選手(1994年)
90試合319打数83安打4本塁打24打点 打率.260
・中村剛也選手(2002年)
77試合181打数39安打7本塁打28打点 打率.215
・栗山巧選手(2002年)
51試合78打数16安打3本塁打12打点 打率.205
・浅村栄斗選手(2009年)
99試合347打数76安打3本塁打27打点 打率.219
・森友哉選手(2014年)
68試合232打数79安打5本塁打41打点 打率.341
この年、一軍で6本塁打を放っている森選手は別格だが、鳴り物入りで入団した1年目、プロの世界の厳しさを痛感したという選手は少なくなかったはずだ。そんな中、鈴木選手はチーム4位の101試合に出場し、リーグ4位の打率.280をマークした。これだけでも充分新人離れした成績だが、実は選んだ四球の数も突出している。リーグ7位の39四球は高卒ルーキーの中ではもちろんトップ。盗塁数も、チームトップの15個を記録した。今季中の一軍昇格は叶わなかったが、充実したルーキーイヤーだったと言えるだろう。
鈴木選手の持ち味は、前述した通りその確かな選球眼である。冷静にボールを選び、甘い球を確実に仕留める姿は、とても高卒1年目とは思えない。また、左方向への打撃も魅力だ。対応力に優れ、ボールをしっかりと引き付けて逆方向に強い打球を放つことができる。さらに、50メートル5秒8の快足を生かした堅実な外野守備で、チームを勢い付けるシーンも幾度となく見せてくれた。
そしてシーズンオフに入っても、鈴木選手は前進を続けている。秋季キャンプでは同じく左打ちの外野手である秋山翔吾選手に師事し、熱心にその姿を見つめた。11月に行われた「2017アジアウィンターベースボールリーグ」にも、ウエスタン・リーグ選抜として参加。「一軍の舞台へ」という同じ志を持った仲間とともに、着実に実戦経験を積んでいる。
近年、内野手として入団した金子侑司選手や外崎修汰選手などが外野手に挑戦し、埼玉西武の外野のポジション争いは激化する一方だ。来季から、鈴木選手もこの中に身を投じることになる。高卒2年目の選手にとっては厳しい競争になるかもしれないが、いずれはそこに食い込んでいけるだけのポテンシャルを持っていることは、今季自らの力で示してくれた。目標は「応援される選手になる」こと。埼玉西武の環境下で育て上げられた数多の高卒野手の先輩たちに続き、スケールの大きな選手に成長していってほしいものだ。
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