スラッガーに多くみられる掌の骨折、なぜ起きてしまうのか専門家が解説
北海道日本ハムは5日、清宮幸太郎内野手が東京都内の病院で右手有鈎(ゆうこう)骨骨片摘出手術を受け、無事に終了したと発表した。退院後は自宅静養と通院治療を経て、12日から千葉・鎌ケ谷市の球団施設でリハビリを開始する予定で、ゲーム復帰まで3か月の見通しとしている。
ヤンキースのジャンカルロ・スタントン外野手もマーリンズ時代に経験するなど、スラッガーに多くみられる掌の骨折。強打者の“職業病”に予防法はあるのだろうか――。サッカー元日本代表MF中村俊輔(ジュビロ磐田)のパーソナルトレーナーを務める入船しんもり鍼灸整骨院の新盛淳司院長が解説してくれた。
――――――――――
有鉤骨は、手のひらの小指側にある骨で、フックのように突起があります。骨折する原因は大きく分けて3つあります。突起に直接ぶつかるなど1度の強烈な外力で生じるパターンと、筋肉や靭帯などに引っ張られる力で、骨に負荷がかかり続け、段々と強度が弱くなっていく疲労骨折のようなパターンがあり、その2つが複合しているパターンもあると思います。同じ動作の繰り返しで骨が弱くなり、ある瞬間の強い衝撃で完全に骨折するイメージです。
有鉤骨骨折は野球などの球技によるもの、そして、転倒して手のひらを地面でぶつけてしまうケースなどがあります。
野球選手の場合、バッティングの際にグリップが原因になる症例も目立ちます。有鉤骨の突起部分に当たり、それが骨折の直接的な要因となります。ファールチップや空振りの際に多いのも特徴的です。ファールチップでバットの先端にボールが当たると反作用でバットの根元部分のグリップに負荷がかかります。手首にいつもの打撃以上に、強い負担がかかると思います。特に長距離バッターの場合、バットスイングスピードが通常のバッターよりも高まります。そこで、手首への負担は増加することになります。
有鈎骨骨折の予防法、リハビリで必要なこととは…
それでも、過去の有鉤骨骨折をしたプロ野球選手をみると、長距離バッターだけに限られてはいません。フォームなど技術的な部分や、骨の形など解剖学的な部分など原因は一概には言えないのが実際です。
手術は、骨片を摘出するか、骨片を接合する手術があります。骨が付きにくい部位である事や復帰までの時期や、また折れるのではという心理的なストレス等から競技パフォーマンスを低下させるリスクを避ける為に、清宮選手のケース同様に摘出手術を選択することが多いです。
その後は、柔軟性や筋力などをリハビリしながら改善し、段階的に競技復帰していきます。
予防はプロアスリートの場合、ドクターやトレーナーやコーチなどがついて、技術的、身体的な向上を進めていくと思います。
これまでの治療経験から、野球やテニスやゴルフをされている方で手首や肘を痛める方は、指につながる筋肉の柔軟性が低下しているケースが多くみられます。肘から手首を通り指についている筋肉がありますが、肘、手首、指と複数の関節をまたぐ筋肉の柔軟性低下は、関節への負荷が高まる懸念もあるので注意が必要だと思っています。
故障の防止として、指のストレッチやウエイトトレーニングを指導するようにしています。今回手術を選択した清宮選手ですが、1日も早く復帰できるように祈っています。
◇新盛淳司(しんもり・じゅんじ)【新浦安しんもり整骨院入船院】【新浦安しんもり整骨院今川院】【クローバー鍼灸整骨院】代表。柔道整復師、鍼灸師の資格を持ち、関節ニュートラル整体普及協会会員。サッカー元日本代表MF中村俊輔をセルティック時代から支える。ブリオベッカ浦安のチーフトレーナーも務めている。
(Full-Count編集部)
記事提供: