千葉ロッテの兄弟選手といえば、祐太投手と翔太選手の「大嶺兄弟」が思い浮かぶだろう。しかし、実兄と同じユニホームをまとい、一軍で奮闘している選手がもう1人いる。
石川県出身の30歳、田中靖洋投手だ。兄の田中良平氏と同じ加賀高校を経て、2005年高校生ドラフトで西武(現・埼玉西武)から4位指名を受けた。ファームで経験を積むと、5年目の2010年に一軍デビュー。初先発も含めて6月までに11試合に登板する。防御率は4.97ながら、一軍定着への足がかりをつかむシーズンとした。
しかし、右ひじに違和感を訴えて登録抹消となると、状態が上向かずに8月末には靭帯再建手術を受けることに。実戦復帰まで1年以上を要する大手術とリハビリを乗り越えて2012年に復帰したものの、この年は5試合に登板し、防御率6.48。翌年は登板機会がなく、2014年は8試合で防御率6.43。結果を残せないまま、もどかしく長い時間を過ごした。
2015年には、10年目にしてプロ初勝利と初セーブを記録し、18試合1勝1敗1セーブ、防御率1.35という好成績を残したが、シーズンオフに埼玉西武から戦力外通告を受ける。そしてそこに声をかけたのは、2000年ドラフトで実兄の良平氏を1位指名した千葉ロッテだった。田中靖投手はその鴨川秋季キャンプに参加し、入団テストに合格。10年近い時を隔てて、田中兄弟は同じユニホーム袖を通すことになった。
「兄も在籍していたチームに入団することが出来て、深いご縁を感じています。兄からは『とてもやりやすい球団だよ』と聞いています」と語った田中靖投手。「今年は一軍で18試合に投げてプロ初勝利を挙げるなど、手ごたえもあったので、マリーンズでしっかりと生かして結果を出したいと考えています」とコメントし、新天地での飛躍を誓った。
移籍1年目の昨季はチームの中継ぎ陣が軒並み好調だったこともあり、なかなか一軍から声がかからない時期が続いた。しかし、終盤に入って昇格。ビハインドの場面での登板が主となったものの、速球と切れ味鋭いシュートを武器に奮闘する。最終的には17試合に登板して0勝1敗1ホールド、防御率2.76。入団時に語った「手ごたえ」の確かさを証明した。
今季も、シーズン終盤から登板すると、13試合1勝0敗1セーブ、防御率1.98と安定感を発揮。井口監督の引退試合となった9月24日の北海道日本ハム戦では、同点で迎えた12回表に登板して相手打線を無失点に抑え、鈴木選手の劇的なサヨナラ打を呼び込んだ。
過去3年はシーズン終盤のみの登板にとどまっているとはいえ、田中靖投手の実力は一軍で残してきた数字が如実に示している。兄の良平氏は高校時代、同世代の内海投手(巨人)らと並び称された。先にユニホームを脱いだ兄の思いも背負って、来季こそはシーズンを通して活躍し、「千葉ロッテに田中あり」ということを知らしめたいところだ。
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