オープン戦の成績は参考にならない、とはよく言われるが……
シーズンが終わってから振り返ってみると、タイトルを獲得した選手がオープン戦の時点では不振にあえいでいたというケースは決して少なくない。2018年に47本塁打を放って自身初のタイトルを手にした埼玉西武の山川穂高選手が、この年のオープン戦では打率.136と極度の不振に陥っていたのが格好の例だろう。
ましてや、来日初年度となる新助っ人にとっては見知らぬ投手たちとの対戦であり、より難しいものとなるであろうことは想像に難くない。来日1年目から見事にタイトルを獲得するほどの活躍を見せた優良助っ人も過去には存在したが、彼らのオープン戦での成績はどのようなものだったのだろうか。
そこで今回は、2012年以降のパ・リーグにおいて、来日1年目で打撃タイトルもしくはベストナインを獲得した外国籍選手たちのオープン戦での成績を紹介し、そこから見えてくる傾向について考察していきたい。
上記の条件にあてはまる選手たちの、来日1年目のオープン戦の成績は以下の通り。(所属は当時)
李大浩選手(2012年・オリックス)
オープン戦成績:12試合 打率.250 0本塁打 3打点 7三振 出塁率.270 OPS.631
シーズン成績:144試合 打率.286 24本塁打 91打点 85三振 出塁率.368 OPS.846
最多打点、ベストナイン(一塁手)
ウィリー・モー・ペーニャ選手(2012年・福岡ソフトバンク)
オープン戦成績:16試合 打率.227 1本塁打 3打点 20三振 出塁率.320 OPS.706
シーズン成績:130試合 打率.280 21本塁打 76打点 130三振 出塁率.339 OPS.829
ベストナイン(指名打者)
ケーシー・マギー選手(2013年・東北楽天)
オープン戦成績:17試合 打率.200 2本塁打 9打点 11三振 出塁率.286 OPS.686
シーズン成績:144試合 打率.292 28本塁打 93打点 119三振 出塁率.376 OPS.891
ベストナイン(三塁手)
ミチェル・アブレイユ選手(2013年・北海道日本ハム)
オープン戦成績:13試合 打率.310 3本塁打 10打点 6三振 出塁率.362 OPS.933
シーズン成績:138試合 打率.284 31本塁打 95打点 132三振 出塁率.357 OPS.863
最多本塁打、ベストナイン(指名打者)
エルネスト・メヒア選手(2014年・埼玉西武)
シーズン途中入団、オープン戦出場なし
シーズン成績:106試合 打率.290 34本塁打 73打点 156三振 出塁率.369 OPS.950
最多本塁打、ベストナイン(一塁手)
マイク・ボルシンガー投手(2018年・千葉ロッテ)
オープン戦成績:4試合 14回 1勝1敗 7奪三振 15失点 防御率8.36
シーズン成績:20試合 117.2回 13勝2敗 84奪三振 44失点 防御力3.06
最高勝率
多くの選手が適応に苦しむ中、例外的に好成績を収めていたのは
このように、多くの選手がオープン戦の時点では打率2割台前半と適応に苦しんでいたことがわかる。アブレイユ選手を除いた全ての打者がオープン戦とレギュラーシーズンではOPS.100以上の差異があり、シーズンに入ってから大きく打撃内容を向上させていたことが数字からも見て取れる。
多くの選手が苦戦する中、例外的に好成績を収めていたのが2013年の本塁打王・アブレイユ選手だ。オープン戦の時点で打率.310といち早く日本球界に適応しており、シーズンに入ってからも他球団からの研究に負けることなく好調を持続。プレシーズンの好成績は決してフロックではなく、自らの実力によるものであることを結果をもって存分に証明してみせた。
また、この中では唯一の投手となったボルシンガー投手も、防御率8点台という数字が表す通りにオープン戦では絶不調。開幕した時点では不安視する意見も少なからず見受けられたが、レギュラーシーズンでは11連勝を飾る活躍を見せてタイトルも手にした。野手のみならず、投手であってもオープン戦の成績だけが日本球界での成否を左右するわけではないことを示す好例と言えるだろう。
練習試合やオープン戦で好調だった選手が弱点を見極められてレギュラーシーズンでは苦戦を強いられるケースもあれば、オープン戦で大苦戦した助っ人がシーズンに入ってから本来の実力を発揮するケースも、これまでに数多く存在してきた。今季新たに海を渡って日本球界に挑戦する外国籍選手たちは、オープン戦、そしてレギュラーシーズンでどのような成績を収めていくのだろうか。
記事提供: