通算では金田正一の365完投が1位、10傑は全員が200勝以上&殿堂入り
「完投」は、先発投手が試合終了まで1人で投げ切ることを言う。投手にはチームの勝敗に関係なく「完投」がつく。昭和の時代、「完投」は、先発投手の「責任」と言われてきた。しかし、投手の分業制が進んだ現在、完投はレアな記録になりつつある。
1969年の完投試合数はパが30.6%、セが26.3%、2018年はパが4.9%、セが5.0%。半世紀の間に完投数は5~6分の1に減ったことになる。
○NPB通算完投数10傑 ()は実働期間
1 金田正一 365完投(1950-1969)
2 スタルヒン 350完投(1936-1955)
3 鈴木啓示 340完投(1966-1985)
4 別所毅彦 335完投(1942-1960)
5 小山正明 290完投(1953-1973)
6 山田久志 283完投(1969-1988)
7 若林忠志 263完投(1936-1953)
8 米田哲也 262完投(1956-1977)
9 野口二郎 259完投(1939-1952)
10 東尾修 247完投(1969-1988)
平成時代の投手は一人もいない。1位は唯一の400勝投手、金田正一。以下、200勝以上した投手が並ぶ。またすべて野球殿堂入りしている。
現役では松坂大輔が72完投と2位以下を大きく突き放す
○現役投手の完投数10傑
1 松坂大輔(中) 72完投(1999-2018)
2 上原浩治(巨) 56完投(1999-2018)
2 涌井秀章(ロ) 56完投(2005-2018)
4 岩隈久志(巨) 48完投(2001-2011)
5 金子千尋(日) 43完投(2006-2018)
6 和田毅(ソ) 38完投(2003-2017)
6 岸孝之(楽) 38完投(2007-2018)
8 成瀬善久(オ) 37完投(2006-2017)
9 菅野智之(巨) 31完投(2013-2018)
10 則本昂大(楽) 29完投(2013-2018)
昭和の時代とは桁が違っている。最多の中日松坂でもNPB歴代100傑に入ってこない。近年は投手の投球数も厳格に管理されている。完投は、先発投手が好調で、投球数も120球前後でフィニッシュできるときにのみ許される。多くの先発投手は6~7回で救援投手にバトンタッチするようになった。
昨年のパの最多完投は、埼玉西武、多和田真三郎の5完投。セは巨人、菅野智之の10完投。NPBのシーズン記録は1947年、南海の別所昭(のち毅彦)の47完投。30完投以上を記録した投手は過去に34人もいる。そもそも現代の先発投手は、登板数が25前後なので、全試合、完投したとしても、この数字は不可能なのだ。
MLBでは完投(Complete Games)は、さらにレアになっている。通算ではMLB最多勝投手サイ・ヤングの749完投だが、現役ではバートロ・コロン(現在FA)と、CC・サバシア(ヤンキース)の38完投が最多なのだ。「完投数」は、昔と今の野球の違いを如実に証明する数字だといえるだろう。
(広尾晃 / Koh Hiroo)
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