来季ブレイクの足掛かりとなるか。今年もアジアウィンター・ベースボールリーグにNPBから若手が武者修行へ

パ・リーグ インサイト

2017.11.28(火) 00:00

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プロ野球はオフイベント真っ盛り。長いシーズンを戦い終えた各球団の主力選手にとっては、来季を見据えて疲れを癒す季節だ。そして、それは同時に、一軍定着を目指す若手には、レギュラーとの差を埋めるチャンスでもある。来季へのステップアップを目指し、今年もNPBからは各チームの若手たちが実戦の場を求めて台湾へ集った。

この時期、野球強豪国を中心に開催されるのがウィンターリーグだ。2012年の開始以降、アジアウィンター・ベースボールリーグ(AWB)にはNPBの選手が毎年、腕磨きに派遣されている。昨年、18試合の出場で打率.556、6本塁打の成績で最優秀打者賞に選ばれた吉田正尚選手(オリックス)の打棒は記憶に新しい。現在、NPBの選手はオーストラリアン・ベースボールリーグにも参加している(http://tv.pacificleague.jp/page/pc/insight/detail.php?id=1103)。

今年のAWBへの参加は6チーム。日本からはNPBファームのイースタン選抜とウエスタン選抜に加え、今回は社会人野球(JABA)の選抜チームが新規で参戦する。開催地台湾の中華職業棒球大連盟(CPBL)、韓国野球委員会(KBO)の選抜チームと、米国と欧州の混成チーム(WBSC)を合わせてシーズン合計51試合が組まれ、その後にプレーオフ5試合が行われる予定だ。パ・リーグTVはNPBファーム選抜2チームの直接対決3試合と、プレーオフ4試合をライブ配信する。

■ライブ配信予定日時
11月29日(水) NPBウエスタン選抜対NPBイースタン選抜 19:05~
12月2日(土) NPBイースタン選抜対NPBウエスタン選抜 19:05~
12月8日(金) NPBウエスタン選抜対NPBイースタン選抜 13:05~
12月16日(土) プレーオフ シーズン3位対シーズン2位 13:05~
12月16日(土) プレーオフ シーズン4位対シーズン1位 19:05~
12月17日(日) プレーオフ 3位決定戦 13:05~
12月17日(日) プレーオフ 優勝決定戦 19:05~
※時間はいずれも日本時間

【いぶし銀で鳴らした監督の下、NPB2チームは今年もリーグ優勝を目指す】

昨年はプレーオフ決勝でNPBウエスタン選抜がNPBイースタン選抜をくだして初優勝を飾った。ディフェンディング・チャンピオンの今季メンバーで目を引くのは、オリックスで一軍正捕手の座を得ようとしている若月健矢選手(オリックス)だ。今季はチーム最多の99試合でマスクをかぶったが、シーズン前に目標に掲げた全試合出場を達成できず、ウィンターリーグ参加は来季に向けた意気軒昂を感じさせる。

ウエスタンでリーグベストのチーム防御率3.20を記録したオリックスからは、単独では唯一の完封勝利を記録した吉田凌投手ら1997年生まれの3投手が参加。社会人経由で阪神に入団した竹安大知投手は20試合で78.1回を投げて防御率2.76の成績を残し、一軍のマウンドも経験するなど、ウエスタン選抜のキーマンとなるかもしれない。

バッターは全体的に巧打者が多く、特に鈴木将平選手(埼玉西武)は高卒1年目ながらリーグ4位の打率.280をマークした。チームメイトの山田遥楓選手や川瀬晃選手(福岡ソフトバンク)、オリックスの岡﨑大輔選手(オリックス)はいずれも打率.250を切ったが、常時スタメンで出場しているように、期待の高さがうかがえる。対照的に、九鬼隆平選手(福岡ソフトバンク)は強肩強打が売りの捕手で、二軍の21試合で放った11安打のうち6本が長打、三軍ではチーム最多の7ホーマーと素材が光る。

他方、昨年は届かなかった優勝を狙うイースタン選抜には、より実戦で結果を残している投手が多く選抜されている。今村信貴投手(巨人)はリーグ2位の防御率2.45、京山将弥投手(横浜DeNA)は同4位の4.17をマーク。ルーキーの菅原秀投手(楽天)は一軍で29試合に登板して防御率5.02とプロの厳しさを味わったが、二軍では13試合に投げて2失点に抑えた。

谷岡竜平投手(巨人)は主に救援で51.1回を投げて防御率2.98。昨年のドライチ左腕として注目を集めた寺島成輝投手(東京ヤクルト)は故障もあり、シーズン終盤に一軍デビューを果たしながら二軍では6試合の登板にとどまったが、投球回数と同じ19三振を奪っている。同年のドラフトで指名された中尾輝投手もイニングを上回る67奪三振と、それぞれが将来を楽しみにさせる投球を披露した。

打者では、ファームで2桁本塁打を放っている横浜DeNAのルーキー2人には期待が持てる。佐野恵太選手は規定打席に届かなかったが長打率.453はリーグトップの水準で、細川成也選手は日本シリーズでヒットを2本放ち、名を売った。巨人にドライチ指名されて入団した吉川尚輝選手はイースタン3位タイの20二塁打を記録し、二遊間を50試合以上ずつ守るなど、攻守で飛躍するべく奮闘中の原石だ。田中和基選手は一軍で54打数6安打と苦しんだが、二軍の42試合では打率.295を残している。

チームを率いるのは、ウエスタンが大道典良監督でイースタンが川相昌弘監督。ともに現役時代は玄人好みのする職人だった。コーチ陣は全体的に若く、数年前まではグラウンドで汗を流していた、かつての名選手の姿を見るのも楽しみ方のひとつになるだろう。

【日本にゆかりのある選手や来年のドラフト指名候補にも注目】

外国人選手で日本に馴染みがあるのは、2015、2016年の2年間、千葉ロッテに所属した、KBO選抜のイ・デウン投手だ。今年は韓国の警察野球団で19試合に投げ、フューチャーズリーグで防御率2.93の成績を残して最優秀防御率のタイトルを獲得した。

先の「ENEOSアジアプロ野球チャンピオンシップ2017」で来日した選手も数人、今回のCPBL選抜に合流している。今季40登板した力投型の朱俊祥投手と、192cmの長身からサイドハンドで投げ込む王鴻程投手は、ともに日本戦で登板。速球はそれぞれ150km台を計測する。ちなみに、名前が似ている捕手の陳重羽選手と内野手の陳重廷選手は双子だ。2人は今年7月のドラフトで統一から1位、2位指名されてプロ入りした。

チームWBSCでは、クレイトン・モーテンセン投手がメジャー通算5年で74試合に登板の実績を持つ。2013年にはワールドシリーズを制したレッドソックスでプレーし、今年はマーリンズのマイナーに所属した。捕手のジョン・マーフィー選手は、20113年のアジアシリーズ準決勝で延長10回に決勝2ラン、決勝ではグランドスラムを放つなど、9試合で2本塁打、9打点と大活躍で大会MVPに輝いている。

JABA選抜も見逃せない。アマチュア代表とはいえ選手の平均年齢はNPB選抜のチームより高く、10月の侍ジャパン社会人代表メンバーが8人選ばれるなど国際経験もある。サイドスローの鈴木健矢投手や、日本選手権で優勝したトヨタ自動車をけん引した北村祥治選手など、来年のドラフト指名候補を筆頭に注目したい。

「実戦に勝る練習なし」とは、よく言われる格言だ。勝手の違う異国で生活を送り、慣れない相手と戦い、異なる文化に適応を迫られる――。遭遇して対処したイレギュラーの数だけ、特殊な肥やしとなって将来に芽吹く可能性が高まるのではないだろうか。一冬を越えて、若手選手がどれだけたくましく成長するか、その過程を楽しみにしたい。

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