今季12球団ワーストのチーム打率.233と、打撃不振に苦しんだ千葉ロッテだが、その中でも一際苦いシーズンを送った選手がいる。プロ9年目、33歳の岡田選手だ。今季は31試合に出場したが、ルーキーイヤー以来の一軍無安打でシーズンを終えた。
栃木県出身の岡田選手。作新学院高校を卒業後日本大学に進学するも、直後に全治1年を超える大怪我を負い、失意のまま中退。その後2004年からは給食センターで働きながら、全足利クラブというクラブチームで野球を続けた。2006年に左手首の骨折や右ひざ半月板損傷の怪我を負う苦難を味わうが、プロの道を諦めず努力を続け、2008年に千葉ロッテの入団テストに合格。育成ドラフト6位でプロ入りを果たす。翌年3月、支配下選手登録。
2年目の2010年6月1日、一軍に初昇格。翌日の試合では9番・中堅で初スタメンに抜擢されると、初安打初打点に初盗塁も成功させる活躍ぶりを見せる。この年チームはクライマックスシリーズで優勝、日本シリーズに進出。岡田選手は日本シリーズ第7戦、延長12回に中日の浅尾投手から決勝打を放ち、「史上最大の下克上」と呼ばれるシーズン3位からの日本一に大きく貢献した。
翌年、育成出身選手としては史上初となるシーズン全試合に出場。打率.267、チーム最多41盗塁を記録した。そして岡田選手と言えば「エリア66」と冗談交じりに称賛される鉄壁の外野守備が代名詞だ。俊足を生かした守備範囲の広さ、球際の強さ、的確な打球判断で幾度となくチームの危機を救い、外野手連続守備機会無失策359で連盟特別表彰も受ける。また、もともと長距離打者でないことは周知の事実だったが、2014年にプロ初打席から1771打席連続本塁打なしというプロ野球新記録を樹立したことでも話題になった。
波乱万丈の野球人生を生き抜いてきたハングリー精神、勝負強い打撃と球界屈指の華麗な守備などで、本塁打が打てずとも存在感を示し続けてきた岡田選手。「本塁打が打てなくてもプロ野球選手になれる。それよりも自分の役割を果たす」「(外野に飛んだ打球は)本塁打以外なら全部取りたい」というプロ意識の高さ、前向きさも、岡田選手の大きな魅力だ。
ところが今季は開幕戦にスタメン出場するも、なかなか安打が出ない。出場機会も徐々に減っていく中で初安打が待たれたが、とうとう開幕から40打席無安打のままファーム降格となり、そのままシーズンを終えてしまった。
井口監督が就任し、来季へ新たなスタートを切る千葉ロッテ。チームの浮上には岡田選手の復調が必要だ。一軍打撃コーチには、2010年から2年間コーチを務め、岡田選手の打撃も指導した金森栄治氏が再任する。来季は攻守において勝負強い本来の姿を見られることに期待したい。
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