道産子投手として2つの記録を打ち立てた快速右腕が、いよいよ本格的な開花の時を迎えようとしている。北海道日本ハムの鍵谷投手が、今季自己最多60試合に登板し、キャリアハイとなるシーズンを送った。地元・北海道出身の好投手として、高校時代から注目されてきた鍵谷投手にとっては、過去2年の不振から脱し、周囲の信頼を勝ち取るための価値ある1年となったことだろう。
北海高校と中央大学で活躍した鍵谷投手は、2012年ドラフトで地元・北海道日本ハムから3位指名を受けてプロ入りを果たす。ルーキーイヤーの2013年に早くも一軍での登板機会を得ると、4月14日のオリックス戦でプロ初勝利。チームにとって初となる道内出身者の白星に、「そのチャンスがあるのは(今は)自分しかないから、何とか達成したかった」と、道産子としての責任感を滲ませていた。
この年は38試合に登板して2勝3敗5ホールド1セーブ、防御率3.33という成績を残し、順調にプロ生活の第一歩を踏み出す。翌年は二軍調整を余儀なくされる時期が長かったが、終盤に再昇格してからは安定した投球を披露。シーズン通算では21試合に登板して1勝0敗2ホールド、防御率2.20で、福岡ソフトバンクとのクライマックスシリーズファイナルステージ第2戦では勝ち投手にもなる。地元出身の北海道日本ハムの選手としては初めてクライマックスシリーズで勝ち星を挙げ、大舞台で確かな足跡を残した。
プロ入り2年で、北海道出身者初の記録を2つ達成し、地元の期待を集めていた鍵谷投手。2015年にはさらに重要な局面を任され、40試合に登板し15ホールドをマークするも、防御率は4.67と安定感を欠く。翌2016年にも48試合に登板して5勝3敗3ホールド3セーブを記録するが、防御率は4.23。4つの暴投を記録するなど制球面でも課題を残し、周囲の高い期待に完全には応えられずにいた。
マーティン投手や宮西投手など、ブルペン陣が充実の陣容を敷いていることもあり、今季も鍵谷投手の出番はホールドのつかない場面が主となっていた。しかし、開幕直後から不振に喘ぐチームの中で好投を続け、5月17日の楽天戦から6月11日の巨人戦まで12試合連続無失点の快投を披露するなど、シーズンを通して安定感を維持。終盤には再び首脳陣の信頼を獲得して重要な場面を任されるようになり、最後の8試合で6ホールド1セーブを記録する活躍でその期待に応えてみせた。
最終的にチーム最多となる60試合に登板して2勝3敗17ホールド1セーブ、防御率2.53という好成績を残す。右のセットアッパーとして谷元投手(中日)の穴を埋め、シーズンを通して大車輪の活躍を見せた1年となった。
前年の日本一から一転、最後まで調子の上がらなかった北海道日本ハムにとって、2年間壁にぶつかっていた鍵谷投手がついに本格化の兆しを見せていることは、来季に向けた希望の1つとなるだろう。鍵谷投手が自身の登場曲に使用しているのは、同じく北海道出身のシンガーソングライターRuneさんが作成した「Key Man」である。そのタイトル通りに、来季以降も地元の人々に勝利を届けられるか。北海道日本ハムのブルペンを支える道産子の、さらなる成長に期待大だ。
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