投手、捕手、内野手、外野手…長く在籍できるポジションはどこ?
2018年ドラフト会議で104名(育成21名を含む)が指名され全員が入団、今季よりプロ野球選手としてのキャリアをスタートさせます。指名順位が高かろうと低かろうと入団してしまえば横一線でのスタートとは言いますが、指名順位によってプロ野球選手として生き残れる年数に差が生じるものなのでしょうか。また、ポジションごとの差や、高校からの入団、大学・社会人からの入団での差はあるものなのでしょうか。そこで、1993年から2008年のドラフト会議で指名された選手がどのくらいプロ野球選手としてNPB、MLBに在籍していたかの年数を分析してみました。
1993年から1999年のドラフト会議で指名され入団した選手を、指名時のポジション別にどれだけの年数以上在籍していたかを紹介します。
ポジション別の代表値を比較しますと
【投手】
平均在籍年数 9.17年 中央値 8年 最頻値 4年
【捕手】
平均在籍年数 11.92年 中央値 11年 最頻値 8年
【内野手】
平均在籍年数 11.50年 中央値 12年 最頻値 15年
【外野手】
平均在籍年数 9.69年 中央値 9年 最頻値 9年
投手と外野手、内野手と捕手とが同じ推移の様相を呈しています。10年以上在籍確率で比較すると最も低いポジションは投手で40%程度となっています。投手の最頻値が4年ということで、そこからの在籍確率の落ち込みが顕著になっており、新陳代謝の激しいポジションであることを物語っています。捕手は指名者数の少なさ、ポジションの特殊性もあって平均在籍年数が最も長くなっていることは想像に難くないでしょうが、実は内野手の在籍年数も捕手と同様であることがデータからわかります。特にショートとして入団した選手が、その後他の内野ポジションや外野へのコンバートによって長く選手として在籍している事例が少なくありません。
では2000年から2008年のドラフト入団選手の状況はどうなっているでしょうか。
2000年から2008年に指名された投手の10年以上在籍確率は33%とより生存が厳しい世界となっています。また内野手、外野手、捕手の在籍確率の推移がほどんと変わらない状況であることもわかります。
高卒選手は長生きできているのか
次に高校からドラフト指名された選手と、大学、社会人ドラフトとで在籍年数に差があるのかを検証してみましょう。
当然ながら、15年や20年といった長期在籍の確率が高いのは高校からの入団です。特に15年以上在籍確率で比較すると
高校生33.0% 大学生21.5% 社会人12.3%
と大きな幅があります。年齢ベースで言えば、高校卒なら33歳、大学、社会人は36~38歳ですのでそれくらいの差は出て当然でしょう。ただ、9年目以前の推移で見るとそこまで大きな差はないように見えます。
そこで、高校生のグラフを4年左にずらして、年齢ベースでの比較として見るとどうなるでしょうか。
高卒選手の5年以上在籍確率は80%です。つまり大学から入団した選手と同年代の選手で4年前にプロ入りした選手のうちの2割がすでにプロ選手でないということです。また2000年から2008年に指名された選手の推移を見ると、高校、大学、社会人とほぼ同様の状況を示しています。高校卒だからといって長く育てるという傾向ではないようです。
(鳥越規央 / Norio Torigoe)
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、様々なスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、アイドル業界にも精通し、テレビ・ラジオ番組への出演、データ監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。
セイバーメトリクストークイベント「セイバー語リクスナイト2.5」2019年1月29日開催
文化放送「ライオンズナイター(Lプロ)」出演
千葉ロッテマリーンズ「データで楽しむ野球観戦」イベント
記事提供: