離れていてもつながるパ・リーグチアの絆。舞台裏を通して見えたパ・リーグの未来

パ・リーグ インサイト

2019.1.25(金) 15:00

1月5日に大阪・オリックス劇場にて、「パ・リーグ ダンスフェスティバル 2018-2019」が開催された(C)PLM
1月5日に大阪・オリックス劇場にて、「パ・リーグ ダンスフェスティバル 2018-2019」が開催された(C)PLM

年に一度の目標の場、憧れの舞台

 1月5日、大阪・オリックス劇場にて「パ・リーグ ダンスフェスティバル 2018-2019」が開催された。パ・リーグ6球団のチアリーディングチーム、パフォーマンスチーム、ダンス&ヴォーカルユニットのメンバーが一同に会し、個性あふれるパフォーマンスを披露。新春を彩る年に一度の舞台に、全国各地から1500人を超えるファンが詰めかけた。

 パ・リーグダンスフェスティバル(以下、ダンスフェス)が初めて開催されたのは2016年の1月。それから多くのファンからの支持を得て、今年で4年連続での開催となった。各チームから選抜されたメンバーだけが立てるこの舞台について、北海道日本ハムでチア運営を担当する尾暮沙織氏は、「メンバーにとっての目標の場になりつつある」と話す。

 その言葉が示すように、各チームで選ばれたメンバーがこの日のために一丸となって練習を重ね、それらがひとつに結集するこの舞台は、普段チアを見慣れているファンでも圧倒されるほどクオリティが高く、ダンスフェスに懸ける一人一人の熱量が伝わってくるものであった。

「ダンスフェスは球場と違い、6球団のファンに自分たちのパフォーマンスを見てもらえる機会。bluelegendsを知らない人にも自分たちのカラーを伝えられた」と、bluelegends(埼玉西武)のMihoさんは振り返っている。

 普段はチームとファンを繋ぐ存在として試合前やイニング間などの限られた時間の中で活動している彼女たちが、この日ばかりは主役となる。ステージを存分に使って思い思いのパフォーマンスを披露することができるダンスフェスは、より多くのファンに自分たちの良さを知ってもらうことができる貴重な機会であると同時に、彼女たちのモチベーションにも繋がっているようだ。

会場が一体となるエンターテインメントへ

 また、今年のイベントは初めて2チームに分かれた紅白対抗戦という形式で行われ、勝敗に関わる投票は来場者だけではなく「パーソル パ・リーグTV」のライブ配信の視聴者も参加。ファイターズガール(北海道日本ハム)の畠山茉央さんは、「投票制度ができたことで、北海道で見ているファンの皆さんにも参加してもらえてうれしい」と喜びを語った。

 勝敗を左右するのは、恒例となった「ダンスバトル」に加え「ジェスチャー伝言ゲーム」と「イラスト」の計3種目。彼女たちの本業であるダンスだけではなく、チームワークや表現力を試されるアトラクションが加わったことにより、イベント全体としてのエンターテインメント性が向上し、より一体感の強いステージへと進化を遂げた。

 シーズン中は相手チーム同士である彼女たちが一致団結し、互いを鼓舞し合いながら奮闘する姿は、まさにこのダンスフェスの一つの醍醐味と言える。一瞬たりとも目を離せないコラボレーションに会場全体が熱気に包まれ、絶えず歓声が上がっていた。

 得票数は、白組1048票、紅組984票という僅差であった。「何よりも白組が勝って嬉しい」と笑顔で語ったのは東北ゴールデンエンジェルス(東北楽天)のMARIさん。勝ちにこだわる姿勢も、チアならではだ。

 また、ハニーズ(福岡ソフトバンク)のNAYONさんは「来年は6球団の混合チームでやれたら、よりコラボ感が出ると思う」というアイディアを語っている。次回以降のイベントに向けた期待感も、より高まってくるところだ。

 今回のイベント開催を担当したオリックスの水島亜由美氏は「今回で4回目の開催を迎えるにあたって、今までの"見せる"エンターテイメントから何か変化をつけたいと考えていました。ダンスパフォーマンス以外にも、ジャスチャーやイラストといった対決イベントを組み込むことで、普段球場で見ることのない新たな一面をお見せできたのではないかと思っています。もちろん、まだまだパワーアップできる部分はありますが、『パ・リーグ6球団が力を合わせると、こんなにも素晴らしい空間が生まれるんだ!』ということを感じていただけたら嬉しいです」と、新しい試みに手応えを感じていた。

プロ野球を盛り上げる、という彼女たちの決意

 前述したステージでの姿以上に印象的だったのは、舞台裏での彼女たちの仲の良さである。ステージを降りた後も時間の許す限りチームの垣根を超えてコミュニケーションを取り合う姿からは、彼女たちの本当の親密さが垣間見えた。

「このイベントで(他チームのチアに対して)久しぶりと言えるのがすごくうれしい」と語るのは、昨シーズン中にパ・リーグ全てのチアチームとの交流を行ったというM☆splash!!(千葉ロッテ)のASUKAさんだ。

 近年のパ・リーグのチアチーム内ではシーズン中に他チームの本拠地を訪ねてコラボパフォーマンスを行う「チア交流」が定着し始めており、彼女たちによるとチア同士のつながりは年々強くなってきているという。

 BsGirls(オリックス)のCHALさんは、「離れていてもひとつのパ・リーグとしていいものを作っていける企画。何年も続けていきたい」という今後の展望を語っている。

 今回彼女たちへの取材の中で幾度となく出てきた「パ・リーグとして」という言葉に表れているように、チアとして各々のチームを応援するだけではなくパ・リーグが一体となって、プロ野球を盛り上げていこうという彼女たちの決意は固い。その決意はパ・リーグ、そしてプロ野球界にとってかけがえのない財産のひとつであり、今後の新たなプロ野球ファン獲得にもつながっていく大きな力となり得るだろう。

 今回の取材では、シーズン中から育んできたパ・リーグチアとしての絆が、ダンスフェスという特別な時間を通じてより深いものへと変化してゆく姿を目の当たりにした。彼女たちの笑顔にこれからのパ・リーグの未来の明るさを確信した、と表現しても、決して大げさにはならないのではなかろうか。

 そして、春の訪れとともに、彼女たちは再びそれぞれの球場でファンと共にチームを応援し、グラウンドに華を添える。

 離れていても、彼女たちの心はひとつだ。

「ひとつのパ・リーグとして」、プロ野球界を盛り上げていこうというメンバーの決意は固い(C)PLM
「ひとつのパ・リーグとして」、プロ野球界を盛り上げていこうというメンバーの決意は固い(C)PLM

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