パ・リーグは上林、柳田と福岡ソフトバンク勢が並ぶ
2018年のNPBの記録を振り返るシリーズ。今日は外野守備の記録を振り返ろう。チーム別の外野守備成績。1試合当たりの外野守備でのアウト数であるRF(レンジファクター)順に並べる。刺は刺殺。外野手の場合、ほとんどが飛球の捕球。補は補殺、送球で走者をアウトにした数。失は失策、併は併殺。
○パ・リーグ
1北海道日本ハム 852刺20補11失6併 率.9875 RF6.10
2東北楽天 848刺22補10失8併 率.9886 RF6.08
3オリックス 848刺20補12失6併 率.986 RF6.07
4千葉ロッテ 820刺34補11失5併 率.987 RF5.97
5埼玉西武 835刺18補13失2併 率.984 RF5.92
6福岡ソフトバンク 771刺21補8失8併 率.990 RF5.54
アウトにした数は北海道日本ハムが1位だが、3位までの差はわずかだ。また、現代のプロ野球では外野手の失策は極めて少ないので、守備率での差は出にくい。
○セ・リーグ
1広島 784刺16補9失5併 率.989 RF5.59
2巨人 777刺20補11失2併 率.986 RF5.57
3中日 758刺24補5失5併 率.993 RF5.47
4東京ヤクルト 743刺16補15失3併 率.980 RF5.31
5阪神 734刺20補10失7併 率.987 RF5.27
6横浜DeNA 729刺14補8失2併 率.989 RF5.20
パに比べるとセの外野の守備機会は明らかに少ない。パの1位北海道日本ハムとセの最下位横浜DeNAでは、1試合当たりの外野のアウト数は1個近く違う。これは、両リーグの投手のタイプの違いが影響していると考えられる。パはフライアウトが多い投手、いわゆるフライボールピッチャーが多いとされ、対照的にセはゴロの比率が高いグラウンドボールピッチャーが多いとされる。その違いが、外野の守備機会の数字になって表れていると思われる。
外野守備の見どころと言えば、スーパーキャッチと補殺だ。イチローのレーザービームに代表されるように、走者を外野から刺す補殺プレーは醍醐味の一つだ。
両リーグの補殺数5傑。
○パ・リーグ
1上林誠知(ソ)10補殺/142試合
2柳田悠岐(ソ)8補殺/127試合
3岡大海(日/ロ)7補殺/71試合
3荻野貴司(ロ)7補殺/78試合
3ペゲーロ(楽)7補殺/84試合
阪神のベテラン・福留は6補殺で5位にランクイン
○セ・リーグ
1平田良介(中)9補殺/134試合
2鈴木誠也(広)8補殺/116試合
3亀井善行(巨)7補殺/114試合
3大島洋平(中)7補殺/141試合
5福留孝介(神)6補殺/113試合
補殺数もパのほうがやや多い。「2桁補殺」は強肩の外野手の代名詞だが、今季は両リーグ合わせて上林1人だけ。ただパには、71試合で7補殺の岡、78試合で7補殺の荻野がいる。1試合当たりの補殺の比率はこの2人のほうが上林よりも高い。
補殺が増える条件はいくつかある。守備位置は中堅よりも左翼、右翼。強肩に加えて俊足、さらには中継する内野手の能力も影響する。また、強肩であることが他球団に知れ渡ると、コーチが走者に進塁を自重するように促す傾向もある。そうした「抑止力」も外野守備能力の一つだといえよう。
ところで、球史に残る外野補殺数を記録した現役選手がいる。今は一塁手となっている北海道日本ハムの中田翔だ。彼は、2012年に19補殺を記録している。NPBの外野手シーズン最多補殺は、1950年、大洋の平山菊二が記録した24だがこれは両翼90m、中堅110mの狭い球場が標準だった時代の記録。両翼100m中堅122mが標準になった1989年以降の5傑はこうなる。
1平野謙(西)1989年 21補殺/98試合
2中田翔(日)2012年 19補殺/138試合
3柴原洋(ダ)2001年 17補殺/139試合
3田口壮(オ)1997年 17補殺/135試合
5荒波翔(De)2013年 16補殺/124試合
中田は投手出身だけに強肩で、左翼から本塁突入する走者を刺すのが得意だった。しかし翌年の補殺は7に減った。走者が自重するようになったのだ。一見シンプルに思える外野守備だが、様々な要素が絡んでいることが数字から見えてくる。
(広尾晃 / Koh Hiroo)
記事提供: