【舞洲Heroes】
オリックスの将来を担う若手選手らが汗を流す大阪市此花区の球団施設「舞洲」の今を伝える【舞洲Heroes】。1回目は、三方陽登外野手です。
オリックスの育成ドラフト1位の三方陽登外野手が、大学時代のコーチで甲子園レジェンドの助言を胸に、全力プレーで支配下を目指してアピールを続けている。
三方は兵庫県養父市出身。創志学園高(岡山)、駒大、BCリーグ栃木ゴールデンブレーブスから2025年育成ドラフト1位でオリックスに入団。高校時代は最速146キロの速球派右腕として岡山県独自大会で準優勝し、駒大2年秋季リーグ後、打者に転向した。190センチ、97キロの恵まれた体を生かしたパワフルな打撃がセールスポイントで、栃木では1年目から主軸を任され、外野手として49試合に出場し打率.286、33打点、5本塁打を記録した。
自他ともに認める長距離砲。入寮直後の新人合同自主トレの打撃練習で柵越えを連発。2021年に32本塁打を放ちホームランキングに輝いた190センチ、104キロの杉本裕太郎外野手と体格も似ていることから、ファンの間で“ポストラオウ”の呼び声も高い。
チーム関係者の度肝を抜いたのは、宮崎市で行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の強化試合、チェコ戦だった。代打で途中出場し、2打数2安打、2打点。1打席目に投手強襲の内野安打、4‐3の6回1死一塁には右腕オンドジェイ・バンク投手から左へ豪快な2ランを放った。
「カウント1‐1からの3球目、真ん中寄りのツーシームでした。ストレートを狙っていましたが、うまく反応できました」と自画自賛する。新人合同自主トレや春季キャンプでも軽々とフェンスを越える打球を放ち、「バッティングには自信があります。足元にも及びませんが、杉本さんのようなホームランバッターになりたいと思っています」とポストラオウを目標に据える。主に2軍を指導する福川将和打撃コーチから「(長所を生かすために)ゴロは打たなくていい(笑)」という“指示”が飛ぶほど期待を寄せられている。
そんな三方が、打撃以上に意識しているのが全力プレーだ。練習では常に後輩の新人選手を引っ張り、全力疾走は欠かさない。忘れられない出来事がある。野手に転向した駒大3年の6月での紅白戦で、安打を放った際の走塁などを林裕也コーチに指摘された。手を抜いていた自覚はなく、指摘は意外だった。打者に転向したばかりなのに打撃が好調だという自負もあった。しかし、徹底して最後までやり切ることの大切さを説かれ、時間はかかったが心のどこかに潜んでいる慢心を指摘されていることに気付いた。
林コーチは、駒大苫小牧高(北海道)が2004年夏、2005年夏に甲子園連覇を果たした時の主将。2年夏の横浜高戦では涌井秀章投手(中日)から大会史上5人目のサイクル安打を記録。3年夏の鳴門工戦では先頭打者本塁打を放った強打者で、駒大、東芝を経て2019年1月に駒大のコーチに就任した。「林さんは甲子園のレジェンド。その方から見れば気を抜いたプレーだったと思います。長い時間、話をしていただき、このままじゃアカンなと思いました。それからは絶対に気を抜いてプレーはしないと誓いました。僕が変わるきっかけを作っていただきました」と三方は感謝。「大学で鍛え直してもらったことは、プロでも絶対に大事なこと。これだけは守っていこうと思っています」。原点を心に刻み、全力プレーで支配下を勝ち取る。
取材・文=北野正樹