【ゴールデンスピリット賞】日本ハム・宮西尚生がつなぐダルビッシュからのバトン 社会貢献を球団伝統に

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2023.12.22(金) 05:00

「ゴールデンスピリット賞」に選ばれた日本ハム・宮西(左)をたたえる栗山氏(カメラ・関口 俊明)

 プロ野球人の社会貢献活動を表彰する報知新聞社制定「第24回ゴールデンスピリット賞」を受賞した日本ハム・宮西尚生投手(38)が21日、東京・虎ノ門のジ・オークラ東京で行われた表彰式に出席した。救援陣が公式戦で挙げたホールドとセーブの総数×1万円を寄付する形を考案し、2015年から意思疎通が困難な患者などを支援。ダルビッシュ(現パドレス)が受賞したことをきっかけに社会貢献を始めた左腕は、支援活動が球団の伝統として受け継がれていくことを願った。

 緊張気味だった宮西の表情が変わった。スクリーンに次々と映し出されたビデオレター。背番号「25」を着た支援者が「いつもありがとうございます」「道民の誇りです」と祝福する姿を、柔和な笑顔で見つめた。「活動を喜んでくれていたことを実感できた。それが一番うれしかった」。近年はコロナ禍で対面が難しかった支援者からの思いがこもったメッセージ。その一つ一つが、宮西の心を震わせた。

 活動のきっかけは10年に当時同僚だったダルビッシュが表彰され「一流の選手はこういうのも受賞するんやな」と思い立ったことだった。サポートが必要な団体が無数にあることを知り「長く継続できる形を」と球団とも話し合いながら支援の形を模索した。

 考案したのは投手陣の柱で、後輩からの人望も厚い男ならではのシステムだ。ブルペン陣のホールド、セーブ数を合算し、救援陣全体で一体型支援をすることを決めた。15年から声での意思伝達ができない患者らの支援団体「iCareほっかいどう」、18年から重病の子どもと家族が滞在する施設「こどもホスピス」をサポート。9シーズンでの寄付額は計1283万円に上り「ともに腕を振り続けた一人ひとりの顔が思い浮かびます。ファイターズブルペン陣の代表として来たという気持ちです」と実感を込めた。

 毎年、開幕前に若手投手に宮西の思いが球団から説明され、共感した選手が取り組みに参加している。日本ハム一筋で14年連続50登板、歴代最多393ホールド。「継続」を体現し、数々の金字塔を打ち立ててきた左腕は「ファイターズに投手として入団すれば、おのずと社会貢献への意識が高くなる。僕がいなくなったとしても、続けられるシステムをつくりたかった」。ダルビッシュから宮西、宮西から次代を担う若手投手陣へ―。社会貢献のバトンは受け継がれていく。(内田 拓希)

 ◆宮西 尚生(みやにし・なおき)1985年6月2日、兵庫・尼崎市生まれ。38歳。市尼崎から関学大を経て、2007年大学生・社会人ドラフト3巡目で日本ハム入団。1年目から中継ぎで21年までパ・リーグ最長の14年連続50登板。16、18、19年に最優秀中継ぎ投手賞。180センチ、78キロ。左投左打。年俸5000万円。

 ◆栗山氏「戦友」祝福 「本当に特別な賞」

 今回からGS賞の選考委員となった侍ジャパン前監督の栗山英樹氏(62)が、宮西を祝福した。日本ハム時代は監督、選手として10年間共闘。「戦友なので。野球界の中でも本当に特別な賞。一緒にやってきた仲間として本当にうれしかった」と感慨を込めた。

 表彰式では宮西の口から過去の“秘話”も明かされた。シーズン中に状態が上がらず、監督室へ謝罪に向かった際にかけられた言葉が「どれだけ助けられたか。おまえで失敗して負けても俺は納得できる」。現役最多839登板を誇る男の胸には今でも当時の記憶が鮮明に残っており「ここまでこられたのも、栗山さんのおかげ」と感謝を伝えた。

 一体型支援に加え、評価したのがその「継続力」。活躍した年だけでなく、故障で苦しんだ時期も社会のために支援を続けた。「魂を下の代に伝える。野球選手がぜひ目指してほしい姿。まだまだ大活躍してくれると思います」と師は誇らしげにステージを見つめた。(堀内 啓太)

 ◆ゴールデンスピリット賞 日本のプロ野球球団に所属する人の中から、積極的に社会貢献活動を続けている人を表彰する。毎年1回選考委員会(委員名別掲)を開いて、球団推薦で選ばれた候補者から1人を選定する。社会貢献活動の表彰は米大リーグの「ロベルト・クレメンテ賞」が有名で、球界最高の賞として大リーガーの憧れの的になっている。日本では球場外の功績を評価する表彰制度は同賞が初めて。いわば「球場外のMVP」。受賞者にはゴールデントロフィー(東京芸術大学名誉教授・絹谷幸二氏作成のブロンズ像)と阿部雄二賞(100万円)が贈られる。また受賞者が指定する団体、施設などに報知新聞社が200万円を寄贈する。

 ◆阿部雄二賞 本賞を第1回から協賛している株式会社アイ・インベストメントの代表取締役社長・阿部雄二氏が2001年4月9日に逝去したことを受け、報知新聞社が「阿部雄二賞」を創設した。

 【選考委員】

栗山 英樹 野球日本代表前監督

榊原 定征 プロ野球コミッショナー

佐山 和夫 ノンフィクション作家。米大リーグに造詣が深い。ゴールデンスピリット賞の提唱者の一人。21年野球殿堂入り

鈴木 俊彦 日本赤十字社副社長

長嶋 茂雄 読売巨人軍終身名誉監督。現役時代のチャリティー活動が評価され、1982年に日本のプロ野球人として初めてローマ法王ヨハネ・パウロ2世に謁見(えっけん)した。88年バチカン市国からバチカン有功十字勲章を受章

三屋 裕子 日本バスケットボール協会会長。日本オリンピック委員会副会長。バレーボール女子日本代表としてロス五輪銅メダル

依田 裕彦 報知新聞社代表取締役社長

(敬称略・50音順)

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