ロッテ・黒木コーチ「1年通してのマネジメントを監督と相談しながら」今季の先発陣を振り返る

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2023.11.20(月) 08:00

チームトップタイの10勝を挙げた小島和哉投手(左)と種市篤暉投手(右)[撮影=岩下雄太]

◆ 序盤は安定感抜群だった先発陣

 試合前まで3位だったロッテは、10月10日の4位・楽天との最終戦に勝利すれば2位、敗れれば4位という絶対に負けられない大一番で、先発・小島和哉が7回を無失点に抑えて2年ぶりに2位に入った。

 先発陣のチーム防御率は4月終了時点でリーグトップの「2.51」だったが、最終的にはリーグ4位の「3.43」。ソフトバンクとの開幕3連戦で3連敗したが、シーズン序盤は佐々木朗希、種市篤暉、小島和哉、西野勇士、C.C.メルセデスと勝ちがある程度計算のできる投手が複数人いた。4月終了時点で佐々木朗が防御率1.00、種市が防御率1.40、小島が防御率2.19、メルセデスが防御率2.31、西野が防御率3.50だった。

 また前半戦は6連戦が交流戦以外では、雨天中止などもあった関係で、リーグ戦期間中の6連戦(4月18日日本ハム〜4月23日のソフトバンク戦)は1度しかなく、先発陣はゆとりのあるローテションが組め、戦いやすい日程となっていた。

 黒木知宏コーチは「1年通してのマネジメントを監督と相談しながら。要はスタミナ切れ、ガス欠しないところでの配慮、人によって中6でいける選手もいれば、中8空けた方がいい選手もいるだろうし、投球のボリュームとかを含めて監督とコントロールをやっていましたね」と振り返る。

 シーズンを振り返ってみると、美馬学、森遼大朗らは春先から先発で登板する機会が何度かあったが、ファームで開幕から好調で5月終了時点で9試合・44回2/3を投げて、防御率1.81だった本前郁也の一軍での先発機会が6月10日の広島戦しかなかった。一軍の先発陣が安定していたとはいえ、本前の登板チャンスはなぜ極端に少なかったのだろうかーー。

 黒木コーチは「もちろん一軍の状態が良いところもあったし、当時の本前はバックアップの選手としてコントロールはしていました。なかなかタイミングがうまく合わなかったというのがあったので、本人にとっては不本意なシーズンだったかなと思います。一軍だけを見ているだけではなくて、ファームの選手も大谷コーチとやりとりをしてコントロールはしていましたね」と話した。


◆ 夏場以降不安定だった先発陣

 開幕から好調だった先発陣も交流戦を境に、徐々に不安定になっていく。小島は6月の月間防御率8.50、7月は月間防御率5.66と苦しみ、登板間隔を空けながら開幕から投げていた西野は右肩の不安で登板間隔を10日以上空けた時期もあった。さらに佐々木朗希が7月24日のソフトバンク戦で左脇腹に違和感を感じ、翌日病院で『左内腹斜筋損傷』と診断を受け離脱。

 それでもチームは7月終了時点で貯金は12あり、首位・オリックスと3ゲーム差の2位。リーグ優勝を狙える位置につけていた。8月1日の日本ハム戦から5週連続で6連戦、9月中旬以降は土曜日からの変則的な6連戦が2週連続で続く中で、大事なシーズン終盤に向けて、序盤から先を見据えて管理してきた。

 小島が8月以降復調すれば、種市も8月10日のオリックス戦に中5日で先発し9勝目をマークすると、続く8月18日の楽天戦で10勝を挙げた。メルセデス、西野も登板間隔を空けながらゲームを作った。

 ただ、美馬学は8月4試合に先発して0勝2敗、防御率6.20、先発ローテーションの谷間で投げた菊地吏玖、森、カスティーヨ、中森俊介にも8月は白星がつかなかった。ファームでも開幕から安定していた本前が打ち込まれ、夏場に一、二軍ともに先発の駒がやや不足気味になった。

 「一番は夏場以降、スタミナ切れが起こしやすい時期で、そこのバックアップがなかなか噛み合わなかったですよね。二軍の方も本前、森であったり、他の選手も含めて裏合わせをしてはいたんですけど、なかなかいい結果が出なかったり、調子が出なかったりというところがあった。一軍はインフルエンザだったり少し不具合が起きたり、ちょうど悪い時期に重なっちゃったというところ。逆にいうと選手にすごくリリーフ陣だったりに負担をかけたなと思いますけどね」(黒木コーチ)。


◆ 種市の中5日は予定されていた?

 投手陣を開幕からしっかりと管理してきた中で、8月10日のオリックス戦に中5日で先発した種市は、最初から中5日で投げることを予定されていたのだろうかーー。

 「そういうことも想定しながら球数を少なくしたり、中5日で行けるのか探りつつ、1年間通して我々やってきましたので、小島も含めてですね」(黒木コーチ)。

 その小島は8月以降調子を取り戻し、9月25日のソフトバンク戦、中5日で先発すれば、絶対に負けられないシーズン最終戦となった10月10日の楽天戦に先発するなど、立ち位置がかなり上がったように見える。

 黒木コーチは「それぐらい逞しくなってきたというのもあります。またチーム事情とかもありましたし、彼のスタミナ、体の強さを考えたら中5日、チームの運用の仕方としては間違いではないですし、それをやっていかないと他の投手に歪みがくるというのを考えたら、オジに託したいという思いもありましたね。開幕投手を託して、チームで一番大事なここを勝たなければいけないという登板に投げて、大事なところで投げて全部もぎ取ってきた。開幕だけはうまくいかなったですけど、小島は中5日であったり、チームを引っ張っていくという意味ではエースとしての自覚であったり、そういう成績を残したというところでは、1つ2つ成長したのかなと思いますね」と絶賛した。


◆ 間隔を空けながら投げ抜いた西野

 西野はトミー・ジョン手術を受けてから本格復帰2シーズン目となった今季、基本的には登板間隔を空けながらの先発となったが、大きな離脱することなく1年間を投げ抜いた。西野は「すごく気を遣ってもらったところもあるし、そういう意味では味方にいろんな部分に助けられてはいるんですけど、1年間しっかり投げきれたというのはよかったなと思います」と首脳陣に感謝した。

 そのことを黒木コーチに伝えると、「我々なりにそういうことを考えて、選手の体の状態を見ながら含めて運用していきましたけど、とはいうものの、選手からすると登板間隔を詰めてもっと投げたいという投手もいるだろうし。もう少し空けてくれないと回復しない、本当にうまくいかないというのがあると思うんですよね。ただなんとか多少なりとも不具合が起きながらも、なんとか1年間通してローテーションを守りきれて、かつちゃんと結果を出してくれたという意味では、西野には本当に頭が下がる思いですよ」と黒木コーチも西野に感謝の言葉を述べていた。


◆ 痛かった佐々木朗希の離脱

 シーズン通してみると、佐々木朗が夏場以降故障で離脱したのは結果的に痛かった。今季も離脱前の7月までの成績を見ても、7勝2敗、防御率1.48。5回未満で降板した登板は1試合もなく、全て5イニング以上投げ、13試合中11試合がクオリティスタート(6回以上3自責点以内)をクリア。“たられば”になってしまうが、佐々木朗が1年間怪我なく投げ続けていれば、チームもまた違った展開になっていたかもしれない。

 黒木コーチは「投げれば圧倒的なピッチングをするので、送り出した時にはベンチとしての安心感はあるんですけど、1年間通して大きな故障をさせないような運用の仕方をしないといけない。結果としては怪我をしてシーズン終盤はうまく本人が思うような、我々が期待を込めて送り出しているようなものではなかったというのがあるので、そこはお互いに反省しないといけないところではあると思うんですよね。ただやっぱり投げて自分のパフォーマンスを出した時は圧倒的なピッチングができるものがある。そういうものを来年、開幕から1年間通して守ってほしいなと」とお願いした。


◆ 若手の突き上げは不可欠

 来季以降に向けては、若手の突き上げは必要不可欠。森、中森がオーストラリア、菊地は11月下旬から台湾のウインターリーグに参加し、技術向上を図る。

 黒木コーチは若手投手陣に「素材的には十分いい素材を持っていますよ」と評価しながらも、「ただ素材を本当に5試合、8試合託した時にそれを継続できるかどうかというのはベンチの中で判断しないといけない。そのステージに上がってもらわなきゃ困る選手。彼らがそういう自覚を持って一軍で投げたことによってとか、一軍で投げてうまくいかなくて悔しい思いをする、さらなる高みを目指して練習するとかね。そういったものをこの秋、冬、来年に向けて取り組んでほしい。若い選手がベテラン、中堅を突き上げるようにならないとチームとして強くならない。それを担うような選手ではありますよ」と期待した。

 種市、小島、佐々木朗が3本柱を形成し、西野、美馬といったベテランに若手がローテーションに入り込めるくらいの力をつけてくれば、一定期間ではなく、シーズン通して強力な先発陣が作れるはずだ。

▼ 先発陣の成績※成績は先発のみ
小島和哉 25試 10勝6敗 158回1/3 振114 四57 QS16 防3.47
種市篤暉 23試 10勝7敗 136回2/3 振157 四45 QS12 防3.42
メルセデス 20試 4勝8敗 112回1/3 振56 四36 QS9 防3.45
美馬 学 18試 3勝9敗 98回1/3 振67 四32 QS5 防4.76
西野勇士 18試 8勝5敗 117回 振92 四23 QS14 防2.69
佐々木朗希 15試 7勝4敗 91回 振135 四17 QS11 防1.78
カスティーヨ 9試 3勝3敗 43回2/3 振28 四2 QS4 防3.09
森遼大朗 6試 1勝4敗 29回 振24 四8 QS0 防6.21
中森俊介 2試 0勝2敗 10回 振2 四5 QS0 防4.50
唐川侑己 1試 0勝1敗 3回 振1 四0 QS0 防6.00
菊地吏玖 1試 0勝1敗 4回 振0 四3 QS0 防2.25
本前郁也 1試 0勝0敗 5回 振5 四4 QS0 防3.60

取材・文=岩下雄太

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