【ゴールデンスピリット賞】日本ハム・宮西尚生が受賞「すごく名誉」チームの中継ぎ全員のH&S総数に応じた支援

スポーツ報知

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2023.11.15(水) 05:00

宮西は折り鶴を手に難病の子供たちの回復を祈った(カメラ・池内 雅彦)

 プロ野球人の社会貢献活動を表彰する報知新聞社制定「ゴールデンスピリット賞」の第24回受賞者が14日、日本ハム・宮西尚生投手(38)に決定した。救援陣が公式戦で挙げたホールドとセーブの総数に応じた支援額を決める活動を2015年に始め、18年からは一般社団法人「北海道こどもホスピスプロジェクト」を支援先に。個人ではなく投手陣全体で継続的に支援する仕組みを作ったことなどが評価された。表彰式は12月21日に都内で行われる。

 「野球以外で賞をもらうことって、なかなかない。すごく名誉なことやと思います」

 16年目の今季は3度目の左肘手術から復活。現役最多の839登板を誇る鉄腕の元へ、「球場外のMVP」の知らせが届いた。

 社会貢献活動を始めるきっかけになったのはプロ3年目の2010年。同僚のダルビッシュ(現パドレス)が受賞し、「一流の選手ってこういうのも受賞するんやなって。プロとしてすごく大事だと感じた」。15年から手足が不自由で声を出すことができない患者らのコミュニケーション支援を行う「iCareほっかいどう」のサポートを開始。1ホールド、1セーブにつき1万円を寄贈すると決めた。

 18年からは、支援先を重病の子供たちとその家族が治療や療養の合間に滞在できる施設「こどもホスピス」に変更。道内初の導入で、支援を「形」として残せる点が決め手になった。「僕も幼稚園ぐらいの時に病気で入院して、病院に行くことが多かった。一日でも親と離れたら不安になるから」と自身の経験を踏まえ、家族と過ごす時間を取れない子供たちにくつろげる場所を提供した。

 取り組みの大きな特徴は、宮西個人だけではなく、日本ハム救援陣全体での支援であること。パ・リーグ最長の14年連続50試合登板などの実績を持つ男だからこそ「継続は力」と球場外でも信念を貫いた。「リリーフは3年やったらすごいって言われるぐらいやから平均寿命が短い。いつけがするかわからへんし、それじゃ一過性のものになる。自分が(現役を)終わっても、何十年も続いてほしいと思ったから、新しい仕組みを作りたかった」と、球界で前例のなかった一体型の支援を決めた。

 38歳のベテランは「僕一人の力では絶対取れなかった。リリーフ陣全体で取った賞やし、それがこの仕組みの醍醐(だいご)味やと思う」と、受賞決定後すぐに救援陣のグループLINEで感謝を伝えた。「ホールド、セーブの数が多くなればなるほど、チームは優勝に近づく。寄付額も上がる。全てがいい循環になる。こういう形があるんだよ、と輪が広がればうれしい」。来季で17年目。北のレジェンドには、腕を振り続ける理由がある。(堀内 啓太)

 【選考経過】 最終候補に挙がったのは巨人・菅野、阪神・西勇、宮西。いずれも5年以上活動を行ってきた。

 榊原委員は「継続性で(活動通算)13年の西選手」と評価。12球団から昨年より4人増の計19人がノミネートされたこともあり、佐山委員も「パスはないんですか? つらいなあ」と迷いながら同調した。

 一方、鈴木委員は「他の選手に輪を広げている」と、宮西の活動に着目。依田委員も「投手陣全体で支えていく独自性が素晴らしい」とした。新たに加わった栗山委員も「一緒に野球をやっていたから推しにくい」としながら、「周りを巻き込める力は球界に必要」と教え子の名前を挙げた。

 欠席となった三屋委員は書面で西勇を中心に宮西も挙げていた。ここ数年、成績で苦しむ宮西には「本業との両立」についても議題となったが、栗山委員が「(成績は)全然ダメ。ただ、いい時はできる。現場の感覚として、そうじゃなくなった時にその魂があるかというのを教えていきたい」と熱弁。最後は全員が納得し、宮西に決まった。

 ◆こどもホスピス代表理事「感謝しきれません」 〇…「こどもホスピス」を運営する一般社団法人北海道こどもホスピスプロジェクトの佐藤貴虎代表理事(51)は「正直、当初は長くても3年ぐらいかなと思っていた。ここまで継続してご支援いただけるとは…。感謝してもしきれません」と頭を下げる。道内で初めて仮施設が完成した時は「宮西さんが『道民の方々に正しくこどもホスピスを理解してもらう必要がある』と記者会見まで開いてくださって。支援の継続=見守り続けてくれているということ。厳しい状況に置かれている子どもたち、ご家族は本当に勇気づけられています」と話した。

 ◆玉井「引き継ぐ」正義「存在意義」 〇…宮西とともにブルペンを支え、入団から7年で計72ホールドを積み上げてきた玉井は「宮(西)さんがリリーフ全体を巻き込んでやってくれているので、その背中を見て力になりたいと思った。僕らが下の代にどんどん引き継いでいきたい」。移籍1年目で25セーブを挙げた田中正も「野球を通して何かを感じていただくのが僕らの存在意義。活動がモチベーションになっていた」と語った。

 ◆宮西 尚生(みやにし・なおき)1985年6月2日、兵庫・尼崎市生まれ。38歳。市尼崎から関学大を経て、2007年大学・社会人ドラフト3巡目で日本ハム入団。1年目から中継ぎで21年までパ・リーグ最長の14年連続50登板。16、18、19年に最優秀中継ぎ投手賞。今季は31登板で1勝3敗13ホールド1セーブ、防御率2.66。180センチ、78キロ。左投左打。

 ◆ゴールデンスピリット賞 日本のプロ野球球団に所属する人の中から、積極的に社会貢献活動を続けている人を表彰する。毎年1回選考委員会(委員名別掲)を開いて、球団推薦で選ばれた候補者から1人を選定する。社会貢献活動の表彰は米大リーグの「ロベルト・クレメンテ賞」が有名で、球界最高の賞として大リーガーの憧れの的に。日本では球場外の功績を評価する表彰制度は同賞が初めて。いわば「球場外のMVP」。受賞者にはゴールデントロフィー(東京芸術大学名誉教授・絹谷幸二氏作製のブロンズ像)と阿部雄二賞(100万円)が贈られる。また受賞者が指定する団体、施設などに報知新聞社が200万円を寄贈する。

 ◆阿部雄二賞 本賞を第1回から協賛している株式会社アイ・インベストメントの代表取締役社長・阿部雄二氏が2001年4月9日に逝去したことを受け、報知新聞社が「阿部雄二賞」を創設した。

 ◆第24回ゴールデンスピリット賞選考委員

 栗山 英樹 野球日本代表前監督

 榊原 定征 プロ野球コミッショナー

 佐山 和夫 ノンフィクション作家。米大リーグに造詣が深い。ゴールデンスピリット賞の提唱者の一人。2021年野球殿堂入り。

 鈴木 俊彦 日本赤十字社副社長

 長嶋 茂雄 (療養のため、今回は欠席)読売巨人軍終身名誉監督。現役時代のチャリティー活動が評価され、1982年に日本のプロ野球人として初めてローマ法王ヨハネ・パウロ2世に謁見(えっけん)した。88年バチカン市国からバチカン有功十字勲章を受章。

 三屋 裕子 日本バスケットボール協会会長。バレーボール女子日本代表としてロス五輪銅メダル。

 依田 裕彦 報知新聞社代表取締役社長。(敬称略・50音順)

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