【独占手記】オリックス・平野佳寿が最年長39歳で250S プロ18年…「打たれても下を向かない。簡単に謝らない」

スポーツ報知

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2023.10.3(火) 05:00

日米通算250セーブを達成した平野佳寿(右)は、16勝目を挙げた山本由伸と記念ボードを手にする(カメラ・義村 治子) 

◆パ・リーグ オリックス3―0日本ハム(2日・京セラドーム大阪)

 オリックス・平野佳寿投手(39)が、今季29セーブ目で日米通算250セーブに到達。名球会入りの条件を満たした。岩瀬仁紀、佐々木主浩、高津臣吾に続き、プロ野球4人目で最年長での到達。日米通算での達成は3人目。日米通算203ホールドもマークしている名リリーバーは、スポーツ報知に独占手記を寄せ、周囲への感謝と自らの引き際などについて赤裸々に明かした。

 * * *

 たくさんの人に支えられて、この日を迎えられました。250セーブ、名球会というものを意識せずにやってきましたが、本拠地で達成でき、少しずつ実感が湧いています。中嶋聡監督を始め、今まで起用して下さった指導者の方々、チームメート、大切な家族…。感謝の思いでいっぱいです。

 実は3連覇した9月20日の試合前、中嶋監督に聞かれました。「250セーブは来年の楽しみにしておくか?」と。僕のモチベーションを心配してくれたんだと思います。「チャンスがあるなら、行かせてください」とお願いしました。

 今は9回で使ってもらっています。でも(山崎)颯一郎や宇田川(優希)のように、常時150キロは投げられません。どう見ても、僕より能力の高い投手がいます。僕と同じ能力なら若い方を使う。その気持ちも理解しています。いつか彼らにポジションを譲る日が来ることも、覚悟しています。自分の球が全く通用せず、全く抑えられなくなったら終わりです。僕の存在意義は抑えること。若い投手のように猶予はないと胸に刻み、戦ってきました。

 常に完ぺきに抑えられるクローザーはいません。西武の増田(達至)君、ロッテの益田(直也)君、日本ハムの宮西(尚生)君や楽天の松井(裕樹)君。それぞれのチームで身を粉にして投げています。大きなものを背負い、抑えても打たれても、常に変わらない姿で準備しています。失敗したら終わり。しんどい思いをしながら戦っているはずです。うれしさより悔しさの方が後に残ります。経験した人間にしか、この気持ちは分かりません。

 周りからは「メンタル、すごいね」と言われます。そんなことはありません。振り返ると、鈴木誠也君に打たれて2試合連続サヨナラ負けした時(※1)は、本当に落ち込みました。また球場に行かなアカン。重い腰を上げて球場に行く、その18年間です。夏場には後輩の阿部(翔太)に伝えました。簡単に切り替えられない。悔しさを持ったまま、次の登板に行く。その登板で抑えて初めて、気持ちを切り替えることができるんだと。

 リリーフの僕をつくってくれたのは岡田彰布監督(現阪神監督)です。09年の秋季練習で、金子千尋や山本省吾さんを中心に、4人の先発だけが監督に呼ばれたことを知りました。前年まで僕も先発。メンバーから漏れ、危機感が芽生えました。そして、翌年のオープン戦で先発を任されました。安芸でマートンに先頭打者ホームラン(※2)。

 あの一撃、あの登板が、いい意味であきらめさせてくれました。

 僕には決めていることがあります。打たれても下を向かない。簡単に「申し訳ないです」と謝らない。新人時代、チームメートだった吉井理人さん(現ロッテ監督)に教わったことです。「KOされても、上を見て帰ってこいよ」と。投手としての意地です。

 巨人の斎藤雅樹さんにあこがれ、上原浩治さんに理想像を重ねました。同じポジションとして尊敬するのが、藤川球児さんです。高校時代に補欠だった僕がWBC、メジャーリーグの舞台にも立つことができました。「いつでも待ってるからね」と温かく見守ってくれた横田(昭作)球団本部長、福良(淳一)GM。オリックスの方々が、戻る場所をつくってくれました。今も肌で感じ、やがて来るのが世代交代です。これからも一所懸命(※3)、簡単には引き下がらない気持ちで投げていきます。

(オリックス投手・平野 佳寿)

※1 16年6月17日の広島戦(マツダ)で平野佳は2点リードの9回に追いつかれ、セーブ失敗。チームは延長12回、比嘉が鈴木に2ランを浴び、サヨナラ負け。翌18日も2点リードの9回に平野佳が鈴木にサヨナラ3ランを浴びた。当時の広島・緒方監督が「今風の言葉で言うと“神ってる”よね」と発言したことが流行語となった。

※2 10年2月27日の阪神とのオープン戦初戦(安芸)で平野佳はマートンから先頭打者アーチを浴び、その後、リリーフに転向した。

※3 鳥羽高時代の担任だった田中英一先生から授かった座右の銘。その場、その場で一つのことに全力を注ぐという教え。

 ◆平野 佳寿(ひらの・よしひさ)1984年3月8日、京都府生まれ。39歳。鳥羽高2、3年のセンバツに出場し、2年準決勝で救援。京産大から05年ドラフト希望枠でオリックス入団。11年に最優秀中継ぎ、14年は最多セーブ。17年オフにメジャー移籍し、21年にオリックス復帰。186センチ、88キロ。右投右打。年俸2億2000万円(推定)。

 【記録メモ】

 ▼…オリックス・平野佳寿投手(39)が2日、日本ハム25回戦(京セラD)で日米通算250セーブ(日本242セーブ、大リーグ8セーブ)を達成。日本だけで通算250セーブ以上は、通算407セーブの岩瀬仁紀(中日)のみ。日米通算は佐々木主浩(日本252セーブ、大リーグ129セーブ)、高津臣吾(日本286セーブ、大リーグ27セーブ)に続き3人目だ。

 ▼…通算200勝もしくは250セーブを達成した年にチームが優勝したのは、47年若林忠志(神)、55年中尾碩志、藤本英雄(巨)、67年梶本隆夫(阪急)、10年岩瀬仁紀(中)、16年黒田博樹(広)に続いて今季の平野佳が7人目となった。

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