◆パ・リーグ　ソフトバンク３―２西武（１９日・ＰａｙＰａｙドーム）

　きれいな放物線ではなかった。それでも、舞い上がった打球は左翼テラス席へと落ちていった。１点を追う４回２死。西武・中村剛也内野手（４０）がかけたアーチは一時同点となる１２号ソロになった。「テラス席に入ったらいいと思ったので良かったです」。スタンドインではなくても本塁打に変わりはない。静かに喜びをかみしめた。

　恩師にささげる一発でもあった。通算４６６本塁打となり、球団ＯＢでもある土井正博氏を抜いて単独１２位に躍り出た。「土井さんの記録を超えることができてうれしいです」。若手の頃にヘッド、打撃コーチとして指導してくれたのが土井氏だった。「いろいろ教わりましたけど、オレの記録は抜いてくれよって言われていました」。その願いを見事にかなえてみせた。

　右の脇を空けた力みのない構えも土井氏の教えを受けてのもの。「赤子を抱くように懐を深くというのは本当に口酸っぱく言われました」。その言葉は２２年目を迎えた今でも打撃の礎になっている。この日の一発も、板東が投じた真ん中高めの１０８キロのカーブをよどみのないフォームで捉えた。「一発で仕留めたのは見事」と松井監督。２回の第１打席では１４８キロの速球を詰まりながらも右前へ。この日のチーム初安打を放ち、無安打無得点を喫した前日のイヤな雰囲気を振り払った。

　かねて口にしている目標の５００本塁打へ３４本。４７４本で１１位の田淵幸一氏へはあと８本と迫った。「１本ずつ頑張ります」。１５日に４０歳になった大ベテランは、高みへ向けて舞い上がっていく。（秋本　正己）

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