【日本ハム】伊藤大海WBC後“燃え尽き症候群”…ストレスで「ウーバーにはお世話に」…独占インタビュー

スポーツ報知

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2023.6.1(木) 05:05

日本ハム時代のダルビッシュ有の写真の前でポーズをとる伊藤大海(カメラ・関口 俊明)

 日本ハム・伊藤大海投手(25)がスポーツ報知の単独インタビューに応じ、プロ3年目に懸ける思いと巻き返しを誓った。3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では救援として3試合に登板し、一人の走者も許さない完全投球で世界一に貢献。だがシーズン開幕後は“燃え尽き症候群”に陥り、WBCメンバーの先発陣の中で最も遅い5月2日に今季初勝利を挙げた。不振にあえいだ当時の心境や秘話を語った。(取材=堀内 啓太)

 苦しみから解放された。開幕から5登板目。伊藤は「ラストチャンス。腕がちぎれてもいい」と腹を決めた5月2日・西武戦(ベルーナD)で今季初勝利を手にした。新球場元年―。球団初の道産子ドラ1右腕は、18日にエスコンでも待望の初白星を挙げた。

 「ホッとしたのが一番。やっと気持ちと体がノってきました」

 3月のWBCでは世界一に貢献。だがシーズン開幕後は侍先発陣で唯一未勝利と後れを取り「魂を燃やしきれていない」と“燃え尽き症候群”に陥った。新庄剛志監督(51)からは「次悪かったら(2軍降格を)考える」と“最終通告”も受けた。

 「正直、精神も肉体もズタボロでした。何をしても悪い方向にいく。当時は感じていなかったけど、張り詰めていた緊張の糸が切れたのかなって。疲れを感じ始めた状態でシーズンインして、休んでも休んでも、体が戻って来ない。体が元気じゃないから心も明るくなれない。悔しくもなれない。その自分にすごくイライラして。勝負師として最低でしたし、勝負の土俵にも立てていなかった。チームにはすごく迷惑をかけました」

 今オフは「憧れ」のダルビッシュ有(パドレス)と初めて自主トレを行い、肉体改造に成功。栄養学を勉強して自炊も始めた。開幕後も規則正しい生活を貫くはずだったが…。

 「実は勝てなかった4月、自炊をしていませんでした。原因は完全にストレス。自分のために頑張れなくなって、家にはウーバーイーツのゴミだけがたまり続けました。4月はウーバーにすごくお世話になってましたね…」

 立ち直るきっかけになったのは4月25日・オリックス戦(エスコン)。序盤に5点の援護をもらいながら、4回6失点でまさかのKO。降板後はベンチで膝をつき、数分間うずくまった。

 「泣いてはいなかったけど『何やってんだろ俺』って。あの試合で気持ちがプッツリ切れました。でも逆に、それがトドメの一撃になったかなと。家に帰って『ここまでどん底に来たら、もう上しか見るとこないな』って。去年までチームメートだった(ソフトバンク)近藤健介さん、(オリックス)石川亮さんがすぐ連絡をくれたり、たくさんの方がメッセージを送ってくれました。頑張りすぎるのをやめよう、気持ちが戻ってくるのを今は信じようと思いました。そこから楽になりましたね」

 同時にダルビッシュの存在も思い出した。現状打破へ、4月下旬から食事、睡眠と生活の全てを見直した。

 「WBCメンバーの中でもやっぱりダルビッシュさんの話が一番参考になりました。朝、昼、晩を意識的に食べて、よく寝るようにしたら体の調子がすごく良くなって、筋肉痛も一気に減りました。思い返すと、調子が上がってきたのは生活をちゃんとしだしてから。前向きになれたので、今は毎日自炊を頑張っています。得意なのはチキンステーキ。絶妙な柔らかさで誰よりも上手に焼ける自信があります(笑い)。レモンを使ってつくるソースもお気に入りです」

 東京五輪で共に戦った建山投手コーチの存在も大きかった。

「僕から聞くことが多いですし、常に見てくれている。僕より僕の状態をわかってくれている時もあります。うまくいかなかった時も『まずこうしてみよう』、『このワンステップから行ってみよう』と。すごく助かりました」

 北海道・鹿部町出身の右腕にとって地元での登板は特別なもの。本拠地・エスコンには毎回友人たちも駆けつけてくれる。

「高校、大学とお世話になった方々が今でも応援してくださるのは、すごく励みになります。勝っても負けても、見に来てくれたらすごくうれしそうにしてくれる。僕は返信もマメじゃないし、マイペースで自分勝手なのに、それをわかってくれる。そういう人たちのためにも少しでも長く(野球人生を)と思います」

 大卒3年目。正真正銘の「エース」を目指す25歳は、シーズンでの更なる巻き返しを誓った。

 「ここから挽回します。好きな野球で4月みたいな精神状態になるのは嫌だし、楽しいから野球をやっているという根本を見失っちゃいけない。1、2年目は加藤(貴之)さん、上沢(直之)さんにおんぶに抱っこで、今年も見事にスタートダッシュに失敗してしまいました。後半は僕が、2人を支えていきます」

 ◆伊藤 大海(いとう・ひろみ)1997年8月31日、北海道鹿部町生まれ。25歳。駒大苫小牧高2年春の甲子園1回戦で完封勝利。16年に駒大入学も同年秋に退学し、翌年に苫小牧駒大(現・北洋大)に入学。20年ドラフト1位で日本ハム入団。22年は10勝9敗1セーブ、防御率2・95。21年東京五輪、23年WBCは共に救援で3試合無失点で金メダルに貢献。176センチ、82キロ。右投左打。

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