藤川球児氏がフォーム解析、オリックス・山下舜平大は「モンスター」大谷翔平、佐々木朗希に次ぐスケール感じた

スポーツ報知

  • ニュース

2023.4.18(火) 11:50

山下舜平大のフォームの連続写真

 オリックスの3年目・山下舜平大投手(20)が最速158キロの剛球を武器に球界に衝撃を与えている。3月31日の西武戦(ベルーナD)では新人・外国人を除く2リーグ制後初の「プロ初登板の開幕投手」を務め、11日の楽天戦では5回無失点&10Kでプロ初勝利。エンゼルス・大谷似と評されるショートアームの投球フォームを、スポーツ報知評論家・藤川球児氏(42)が連続写真で徹底解剖した。日米通算245セーブを誇る理論派は、ネクスト侍と呼び声の高い剛腕を「モンスター」と表現し、あらゆるポイントを絶賛した。(構成・小松 真也)

■セットポジションから素晴らしい

 山下は、はっきり言ってバケモノ、モンスターだ。ポテンシャルは間違いなく、日本でも飛び抜けている。大谷、佐々木朗(ロッテ)に次ぐスケールの大きさを感じる。恵まれた体格、投球フォームは大谷に近いものがある。

 まず〈1〉のセットポジションが素晴らしい。注目すべきは右股関節から内転筋のあたりにユニホームのしわが入っている点。内側に力を絞り、軸となる右足に体重を乗せる準備ができている。投球フォームの土台が安定しており、あとはシンプルに左足を上げるだけの理想的な状態だ。山下が調子を落とした時は、この〈1〉が本来の姿か確認するといいのではないか。

 始動から〈2〉〈3〉にかけて、上げた左足の高さも十分。〈3〉では、頭から右かかとまで一直線で、地面に突き刺さっているイメージだ。ちなみに、大谷はこの段階が非常にきれいな投手と言える。加えて、私も現役時代に取り入れていたが、顔を一度、三塁側に向けることで頭が本塁方向に突っ込まない工夫をしている。

■「しわ」に表れるスムーズな体重移動

 少し気になる点があるとすれば〈4〉の頭の位置。詳しくは後述する。それでも、〈5〉〈6〉と回旋しながら修正していき、ヒップファースト(でん部から体重移動すること)もいい。〈5〉で右足の内側にエネルギーが蓄えられていることも、右股関節付近のしわで分かる。そして、そのまま軸足を捕手に対して真っすぐに送り出せており、〈6〉で左股関節にしわが移っている。スムーズな体重移動ができている証拠だ。

 また、腰も落ちないから〈7〉以降は「人」の漢字に見える。右足でマウンドを力強く蹴らないと、右腰が下がり、踏み込んだ際の左膝が突っ張る。それでは力の伝達にロスが生じ、「人」の漢字に見えない。〈7〉~〈10〉にかけた下半身の動きは申し分ない。

■メジャーで浸透の「ショートアーム」

 もう一つのポイントはテイクバック。大谷、ダルビッシュ(パドレス)らメジャーで浸透しているショートアームだ。〈7〉で上半身が突っ込み気味だが、ショートアームにしていることでトップの位置が間に合っている。大きな腕の使い方なら〈6〉〈7〉で振り遅れるところ、胸がしっかり張れ、〈7〉〈8〉〈9〉で着地した左足がずれることなく、いいタイミングでリリースできている。

 〈10〉の頭の高さにも着目したい。ボールを上からたたけている根拠として、フィニッシュで〈7〉と同じライン上に戻る。打者目線だと〈8〉〈9〉で頭がやや沈むため、ボールが直進的な軌道を描いてきそうな錯覚に陥るのではないか。でも、実際のリリースポイントは高い位置で直球に角度がある。だから、155キロ前後のスピードも相まって、バットの上を通過する空振りが多いのだろう。

 ただし、〈8〉は右腕の通り道をつくるために頭を一塁側に倒している印象も受ける。その理由が〈4〉につながる。連続写真を見る限り、〈4〉で頭がベストな股関節の上ではなく左膝(三塁側)寄り、わずかに前かがみの姿勢になっているように映る。そうなると、頭一つ分だけ邪魔になって右腕を振り抜きにくい。前述の頭を逃がす余分な動作が必要で、右肩への負担も増す。現状はショートアームでうまく対応しているが、故障だけには気をつけてもらいたい。

 とはいえ、20歳でこの投球フォームは称賛に値する。理にかなった投げ方で、ボールが一級品なことに意味がある。球速もまだまだ伸びる。オリックスは登板間隔を空けるなど、将来を見据えた育成プランを立て、先輩には体の軸で投げることに優れた山本や平野佳らお手本が多い。山下の今後が楽しみだ。(藤川 球児)

 ◆今季の山下舜平大 3月4日の阪神とのオープン戦(甲子園)で1軍デビューし、自己最速の158キロをマークするなど1回を3者凡退。その後も好投を重ね、3月31日の西武戦(ベルーナD)では、新人・外国人を除く2リーグ制後初となる「プロ初登板の開幕投手」に抜てきされた。初勝利こそ逃したが、6回途中4安打1失点で7奪三振。中10日で先発した11日の楽天戦(楽天モバイル)で5回2安打無失点10奪三振で待望の1勝目を挙げた。

■21日からの西武3連戦に先発予定

 ○…山下は21日からの西武3連戦(京セラD)で自身3度目の先発マウンドに上がる見込みだ。11日の楽天戦(楽天モバイル)でプロ初勝利を挙げ、翌12日に出場選手登録を抹消された後も、チームに帯同しながら調整を続けている。球団は球数制限や登板間隔を空け、じっくり育てる方針。本人は「どんどん(自分を)超えていければと思います」と高い向上心を見せている。

 ◆山下 舜平大(やました・しゅんぺいた)2002年7月16日、福岡市生まれ。20歳。福岡大大濠では甲子園出場なし。20年ドラフト1位でオリックス入団。昨季は2軍で8試合に登板し、2勝2敗、防御率3・31。自己最速は158キロ。名前の由来は著名な経済学者のヨーゼフ・シュンペーター。190センチ、102キロ。右投右打。年俸700万円(推定)。

関連ニュース

【写真】山下の豪快なフォーム
【オリックス】ドラ1位・山下舜平太が公式戦デビュー
【衝撃】6億円→3500万円…通算5億6500万円の減額は球界最大幅
【写真】“美人すぎる売り子”がビキニになった
【写真】岡本和真、佐々木朗希に「あいつはなめてる」

記事提供:

スポーツ報知