ＷＢＣ日本代表の宇田川優希投手（２４）が２４日、世界一＆リーグ３連覇を経て、将来的に日本の絶対的なクローザーになることを誓った。７か月前まで育成選手だった右腕。宮崎合宿初日からＷＢＣ球への対応に取り組み、周囲にも気後れしていたが、ダルビッシュらの心遣いで心身ともに上向き。生い立ちや減量苦についても赤裸々に語り、注目を集めた食事会「宇田川会」の内幕も明かした。

　ＷＢＣ日本代表の一員として１週間を過ごした。宇田川はすっかり、投手陣のムードメーカー的存在だ。注目を集めたのは、強化合宿休日の２０日に開催された投手陣の食事会。ダルビッシュから「宇田川さんを囲む会」とＳＮＳ投稿され、主役はニタッと笑った。

　「合宿初日なんて、ロッカーで一人でいました。『初日、やばかったよね』ってイジられて、今ではみんなとしゃべれます。これで『由伸にくっつく作戦』からは卒業です（笑い）」

　人見知りでおとなしい性格を知る山本は「キャッチボールやろう」と初日に誘ってくれた。ＷＢＣ球への適応とともに取り組んでいたのが減量。「宇田川会」の前日、練習中にダルビッシュにおなかを触られた。

　「別に太ってないやん、と言われました」

　ダルビッシュの初ブルペンは、一人だけ見学ができなかった。理由は減量メニューをこなす必要があったから。「みんな見に来てくれたけど、どうしたの？」と問いかけられた。

　「たまたま２人でウェート場にいて、僕がやっている減量メニューを見せたんです。『あまり自分をいじめないように。優しくね』と言ってくださって。僕にとって『頑張れよ』と逆の意味の言葉が響きました。すごくしんどくて、どうしていいか分からない時期でもあったので…。少し気持ちが楽になりました」

　オリックスでも屈指の大食漢。最大の難所が食事制限だった。「パフォーマンスを落とさないための食事」を助言され、揚げ物やケーキ類とともに控えていたステーキには手を伸ばすようになった。でも、せっかくの「宇田川会」はチートデー（ダイエット中に好きなものを自由に食べる日）。胃袋を解放し、仲間の心もわしづかみにした。

　「デザートのバニラアイスもおいしかったので、１個目を食べて、２個目も食べて。３個目は恥ずかしかったので、隠しながら食べていたんですけど、それがバレて。ダルビッシュさんに『宇田川くん、デザートのおかわり大丈夫？』って聞かれたので『あ、持ってます！』って。そこで笑いが起きてしまいました」

　悩まず、前を向くことを決めた。日本人の父とフィリピン人の母の間に生まれた。小学２年で野球を始め埼玉・八潮南高から仙台大へ進んだ時も同じだった。

　「大学１年の時に『あいつは努力をしてない。ハーフだから球が速い』と言われたことがありました。自分ではそうじゃないと思っていて、すごく腹が立ったんです。でもあの時、そう思われても、自分の特長を生かそうと思いました」

　表情にも、言葉にも自信が戻った。２３日のブルペンでは、投球後に「球に自信があった」と胸を張った。ダルビッシュにも「手の届かないところに行ってしまった」と褒められた。

　「由伸は日本のエースと言われていますけど、僕は先発投手ではないので。藤川球児さんのように、絶対的なクローザーを目指したいです。いつかは『日本のクローザー』と呼ばれる投手になりたいと思います」

　わずか７か月前までは育成選手だった男のサクセスストーリー。体重も９７キロ台まで絞り、目標の９６キロまであと少しだ。世界一奪還、オリックスの３連覇に貢献した先に、ほほ笑ましい夢も思い描いた。

　「分厚い牛タンとデザートでショートケーキ。食べられるとしたら、思いっきり食べたいです（笑い）」

（取材・構成＝長田　亨）

　◆宇田川　優希（うだがわ・ゆうき）１９９８年１１月１０日、埼玉県生まれ。２４歳。日本人の父、フィリピン人の母を持つ。八潮南高から仙台大に進み、２０年育成ドラフト３位でオリックス入団。２２年７月に支配下登録され、８月３日に１軍デビュー。通算１９試合で２勝１敗３ホールド、防御率０．８１。最速１５９キロ。１８４センチ、９７キロ。右投右打。今季年俸１７００万円。

　〇…宇田川はこの日、ダルビッシュらと休日返上で練習に参加し、アップと軽いキャッチボールだけでコンディション維持に努めた。当初はＷＢＣ球で球威の低下を実感していたが、日を追うごとに適応。２５日のソフトバンク戦は１イニングを投げる予定。

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