オリックスに大経大の“師弟”が同時入団 才木海翔「心強い。自分は恵まれている」

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2023.1.12(木) 05:04

育成2位の才木海翔(右)を激励する広報の山本和作さん [写真=北野正樹]

◆ 「足の神様」にあやかる

 オリックスの新人選手が10日から入寮を開始。11日には、育成ドラフト2位で指名された才木海翔(投手/大阪経済大)が新たな拠点に姿を見せた。

 最速153キロのストレートとスライダーを武器に、打者を圧倒する投球がウリの右腕。昨年3月8日に行われた大阪経済大とオリックスの練習試合では先発として登板し、二軍で調整中だった吉田正尚を自慢の速球で二ゴロ併殺に仕留めるなど、4回を無失点に抑える好投を見せた。


 ルーキーの入寮と言えば、恒例となっているのが持ち物チェック。才木が持参したのは、自宅のある豊中市の服部天神宮の十日戎で求めた縁起物の「熊手」。福をかき集めることやお金を呼び込むことで、商売繁盛を想起させる縁起の良いものだ。

 服部天神宮はかつて菅原道真が九州に向かう途中に立ち寄り、足の病気から回復して目的地の大宰府まで無事についたことから「足の神社」として知られ、メキシコ五輪の男子サッカーで得点王に輝いた釜本邦茂氏や、昨年行われたFIFAワールドカップのカタール大会で活躍した堂安律らも参拝したことがあるという。

 才木もプロで活躍して年俸を稼ぐとともに、ケガなく支配下登録をつかむ思いも込めて参拝。大経大が加盟している関西六大学野球連盟に属する大商大の野球部の選手が10日に西宮神社で福男の「一番福」を手にしたこともあり、それにあやかる狙いもあったのかもしれない。


◆ 球界でも珍しい監督とエースの“同時入団”

 そんなルーキーの記者会見を、特別な思いで見届けた人物がいた。今年から広報担当としてオリックスに加わった山本和作氏である。

 大経大から2009年の育成ドラフト3位で巨人に入団した元プロ野球選手。トレードで移籍したオリックスでは2013年から2015年までプレーをし、2016年から昨年の秋季リーグまでは母校で監督を務めていた。ということは、才木は自身が手塩に掛けて育てた教え子ということになる。

 母校の監督を退任した後、今年1月1日付でオリックスの広報部に採用された。10日から現場に出たばかりで、11日の朝には現役時代に一緒にプレーした経験のある岸田護投手コーチから「広報で仕事をするのは昨日まで知らなかった」と声を掛けられるなど、チーム内でもまだ浸透していないようだ。


 そんな山本氏にとって、広報担当としての初めての仕事が、教え子である才木の記者会見のサポートだった。

 才木も「年明けに(山本さんから)直接聞くまで知らなかったので驚いた」というが、「僕のことを知っていて下さる方がチーム内にいらっしゃることは心強い。自分は恵まれている」と、大学卒業後も“監督と選手”の関係で、しかも選手をサポートする広報担当に就任したことを喜んでいた。


 監督としての山本氏の印象は「選手一人ひとりのことを考えて下さる指導者。しっかりと自分の野球観を持っていて、プロとしての心構えも教わった。どんな人に対しても謙虚さを忘れずに接する人」という。

 一方の山本広報は、才木について「性格も素直で応援したくなる選手。日本を代表する選手に育って欲しい」とエール。

 自身の初仕事が、秋までリーグ戦をともに戦っていたエースの記者会見だったことに関しても「自分でも驚いている。サポート出来ることがあるか分からないが、出来ることをしたいと思う」と特別扱いは否定しつつ、他の選手同様に温かく見守っていくとした。

 「ありがとうございました。よろしくお願いします」。会見室を出る報道関係者全員に、深々と頭を下げた山本広報。この時ばかりは、恩師の表情だった。


取材・文=北野正樹(きたの・まさき)

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