開幕スタメン、完全試合、オールスター出場…高卒新人ながら一軍で戦い抜いたロッテ・松川虎生
ベースボールキング
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2022.12.27(火) 10:30
タッチを交わすロッテ先発の石川と開幕マスクを被った新人捕手・松川 (C)Kyodo News
「まずはZOZOマリン、一軍でプレーすることが目標なので、チームのためにしっかりやることが大事。まずは全力でしっかり戦っているところを見てもらえたらと思います」。今年2月2日に行ったオンライン取材でロッテ・松川虎生は“一軍でプレー”することを目標に掲げたが、高卒1年目の今季、開幕一軍を掴むと1度もファームに落ちることなく76試合に出場した。
「ピッチャーの良いところをどれだけ引き出せるかが、キャッチャーとして大事」と春季キャンプ中に話していたが、2月の対外試合から投手陣を引っ張った。2月の対外試合から開幕前のオープン戦まで松川がマスクを被ったとき(77イニング)の防御率は1.75。3点以上失った試合は、わずかに2試合と結果を残した。本前郁也は松川について「すごく投げやすいですし、登板前にテンポは早めでいこうと話してやっています」と評価した。
3月25日の楽天戦では『8番・捕手』で高卒新人捕手としては史上3人目となる開幕マスクを被り、石川歩、ゲレーロ、益田直也の3投手を無失点に抑えるリードで開幕戦の勝利を飾ると、3月31日のソフトバンク戦では1-2の6回二死一塁から3ボール2ストライクでスタートを切っていた一塁走者の中村晃を二塁で刺し、公式戦で初めて盗塁を刺した。
4月10日のオリックス戦では佐々木朗希を完全試合に導く好リード。松川自身もプロ野球新記録となる捕手ゲーム20守備機会、プロ野球タイとなる捕手ゲーム19刺殺を記録した。
石川歩、佐々木朗希、美馬学が先発の時にスタメンマスクを被ったが、4月終了時点で石川が防御率0.87、佐々木朗希が防御率1.50と、春先抜群の安定感を誇ったのも松川のリードによるところが大きい。
ピッチャーとの関係を築く上で松川は「日々、話すことでピッチャーの良いことがわかってくると思いますので、コミュニケーションを大事にしてやっています」と“会話”を重視した。
5月に入ってからも、12日の楽天戦、3-2の6回一死走者なしから先発・美馬が島内宏明、マルモレホスの連打で二、三塁のピンチを招くが、黒川史陽を1ストライクから5球連続で低めのスライダーで二ゴロ、辰己涼介もカーブで初球ストライクをとった後、5球連続フォークで中飛。二、三塁で後ろに逸らしたら失点という場面で、松川が美馬に5球連続でフォークを要求するところに凄さを感じた。
こんなこともあった。5月20日のソフトバンク戦、3-0の5回先頭の真砂勇介の初球、佐々木朗希が投じた160キロのストレートが首元にダイレクトに当たりマスクが外れる。サイン違いも痛がるそぶりを一切見せず、2球目以降も何事もなかったように佐々木の球を受け続けたのもすごかった。
打撃面では3月25日の楽天戦でプロ初犠打を決めると、5月17日の楽天戦で失敗するまで、5度の犠打機会で全て成功させた。4月24日のオリックス戦では、3-2の9回無死一塁の打席で、初球できっちりと送りバントを決めて髙部瑛斗の適時打に繋げている。
5月24日の広島戦では、1-0の5回二死一塁の第2打席、先発・床田寛樹に対して2球で追い込まれるもそこから粘り3ボール2ストライクから11球目の140キロツーシームをセンターオーバーの適時二塁打。1打席目に打ち取られたツーシームをきっちり弾き返したのは見事だった。
7月6日には「選んでいただいてすごく光栄に感じますし、感謝の気持ちで一杯です」と、『マイナビオールスターゲーム2022』の捕手部門でファン投票1位に輝きオールスター初出場を決めた。さらに7月11日に発表された選手間投票でも「まさか選手の皆様から選んでいただけるなんて正直、夢にも思っていませんでした」と1位を獲得。
そのオールスターでは第1戦(PayPayドーム)に7回の守備から途中出場すると、第2戦(松山)は『8番・捕手』で先発し佐々木とバッテリーを組んだ。0-1の2回一死二、三塁の第1打席、床田(広島)が1ストライクから投じた2球目の120キロパームをライト前に適時打。オールスター初安打を放った。
前半戦は最後までマスクを被った試合は41試合中10試合と試合終盤に入ると途中交代することがあったが、オールスター明けは、29試合中14試合で最後までマスクを被るなど、抑え捕手に頼らず最後まで試合に出場し続けた。
開幕から佐藤都志也と併用の形だったが、シーズン最終盤の9月は26試合中18試合でスタメン出場(チームは10勝8敗)するなど、美馬、石川、佐々木だけでなく、小島和哉、本前、佐藤奨真が先発の時にもマスクを被った。
冒頭にも述べたように松川は開幕から一度もファームに落ちることなく、一軍でシーズンを戦い抜き、先発捕手時のチーム成績は37勝33敗だった。
シーズン終了後にはフェニックス・リーグやZOZOマリンスタジアムで行われた秋季練習で来季に向けて汗を流した。秋季練習では打撃練習が終わった後に、1時間以上みっちりと守備練習に励んだ。
今季は高卒1年目ながら一軍の実戦で多くの経験を積んだ。田村龍弘、佐藤都志也、柿沼友哉などレギュラーを争うライバルは多いが、この経験を来季に繋げたい。
文=岩下雄太