【オリックス】宇田川優希投手インタビュー…フォークでつかんだ野球人生初の日本一
スポーツ報知
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2022.11.14(月) 09:27
今季、チームの日本一に貢献したオリックス・宇田川優希投手(24)=仙台大出=がこのほど「とうほく報知」のインタビューに応じた。育成でスタートした今季は7月下旬に支配下登録を勝ち取ると、19試合登板で2勝1敗3ホールド、防御率0・81。ヤクルトとの日本シリーズでも躍動した右腕に、活躍できた要因や来季の目標などを聞いた。(取材、構成・高橋 宏磁)
今季は26年ぶりに日本一に輝いたオリックス。10月下旬、ヤクルトとの日本シリーズは4勝2敗1分けで制した。宇田川にとっても、喜びは格別だった。
「日本一は野球人生では初めて。本当は京セラドームで決めたかったですが、神宮球場は大学時代に目標としていた場所。その場所で日本一になれて、本当に幸せでした」
日本シリーズは7試合中4試合に登板し計5回2/3を投げ2安打無失点、10奪三振。2敗1分けで迎えた第4戦は圧巻だった。1点リードで迎えた5回1死三塁、2番手でマウンドへ。2者連続三振でピンチを切り抜けると、6回は1死一、三塁のピンチを背負うも、2者連続空振り三振で無失点に抑えて勝利投手に。決め球になったのはフォークだった。
「真っすぐを狙ってくると思ったので(5回1死三塁では)初球からフォークで行きました。外野フライや内野ゴロでも同点に追いつかれる場面。三振を狙いに行きました。捕手の若月(健矢)さんのおかげです。信頼しているからこそ、思い切りフォークを投げられた。少しでも(後ろに)それることを考えたら、フォークが落ちきれずに打たれたと思います」
道のりは平たんではなかった。今春、新型コロナウイルスに感染し離脱。約2週間の隔離生活を送り、体重も筋肉量も減った。だが隔離生活が終わると、地道に肉体を鍛え直した。
「しばらくは試合でも投げられないので、ウェート(トレーニング)に力を入れようと思いました。大学時代、1回のスクワットでは最高で150キロしか持ち上げられなかったですが、今では310キロを上げられるようになりました」
球速アップを目的に、瞬発力なども強化。さらに進化した肉体に合わせて投球フォームも改造した。大学時代に最速152キロの球は、159キロまで球速が上がった。自慢の直球で押すスタイルで7月に支配下登録を勝ち取ったが、1軍は甘くなかった。8月13日のソフトバンク戦(ペイペイD)。同点の9回に登板も、周東佑京に153キロ直球を右翼席へ運ばれ、プロ初黒星を喫した。
「サヨナラ負けで、自力優勝が消滅したと報道で見ました。『とんでもないことをしてしまった』と思いました。このままでは通用しない、と思いました」
だが、落ち込んだままでは終わらなかった。先輩たちの投球を見つめ、自身に取り入れた。参考にしたのが平野佳寿投手(38)だ。
「夏までは直球で空振りやファウルを取って、フォークで三振を取りに行くというスタイル。ただ平野さんの投球を見て学んで、勉強させてもらった。平野さんが、小さいフォークを使っていることに気がつきました。自分にも(落差の)小さなフォークがあったので、勝負球のフォークとカウント球のフォークを使い分けるようにした。それから楽に投球ができるようになった。一試合一試合、成長できたと思います」
高知キャンプ第2クール最終日となった10日にはブルペン入りし約60球を投げ込んだ右腕。来季に向け、目的を持って練習に取り組んでいる。
「日本シリーズ中は、ウェートもできなかった。ウェートに力を入れつつ、真っすぐの強さ、フォークのコントロールを見つめ直したい。高知キャンプではトレーナーさんやコーチからは『無理をしなくていいよ』と言われましたが、第2クールからは強度も上げてやっています」
来季の目標を問うと、力強い口調で語った。
「今年、1軍で投げたのは8月から。3か月の短い間でしたが、体がしんどいところもあった。1年間になるともっと大変だと思いますが、来年は開幕からシーズンが終わるまで、1軍でやれたら。ビールかけも優勝パレードも、もう一回やりたい。また来年、優勝できるよう頑張りたい」
◆宇田川 優希(うだがわ・ゆうき)1998年11月10日、埼玉県出身。24歳。日本人の父、フィリピン人の母を持つ。八潮南では甲子園出場なし。仙台大から2020年の育成ドラフト3位でオリックス入団。今年7月に支配下登録。8月3日に1軍デビューし、9月8日の西武戦(ベルーナD)で初勝利。19試合2勝1敗、3ホールド、防御率0・81。MAX159キロ。184センチ、92キロ。右投右打。
宇田川をよく知る仙台大スタッフ陣が当時を振り返った。高い潜在能力を期待された“未完の大器”は、卒業するときも“未完の大器”だったという。入学当初はノックでも暴投が多く、フィールディングの足運びもぎこちなく、森本吉謙監督(48)は「野球に取り組む姿勢、本人の自覚がまだまだだったのだと思います」。投手として総合的な面は低かった。
しかし投手中心に指導する坪井俊樹コーチ(36)が「1年生のときから素材は抜群だった」と話すように、ブルペンで投げる球はピカイチ。1年時は140キロそこそこだった直球の最速は体が大きくなるにつれて速くなり、4年時には150キロを超えた。「リリーフで失敗した記憶はほぼないですね。何度も助けてもらった」と坪井コーチ。先を見据えて先発に取り組んだこともあったが、救援への適性は昔から高かったようだ。だが目立った成績は最後まで残せず、成長途上の印象が強かった。
仙台大での4年間そしてオリックスでの育成期間を経て、今年大ブレイク。しかしまだ“完成形”ではないはず。どんな投手へ成長するのか楽しみだ。
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