日本ハム・杉谷拳士は「継続の男」 第二の人生は「これからの方がすごいんだから」

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2022.11.8(火) 10:27

栗山英樹監督(左から3人目)に労われる杉谷拳士

 ギリギリまで迷って、声をかけた。5日、東京ドームで行われた侍ジャパンと日本ハムの強化試合。今季限りでの現役引退を表明した日本ハム・杉谷拳士内野手が、“引退試合”に向けた準備を始めようとしていた。それまで「引退ではなく前進」という本人の気持ちをメディアを通じて聞いていた。どのように声をかけようか…。悩み抜いた結果、「前進、おめでとうございます」と伝えることにした。

 反応は、少し予想とは違っていた。今回の決断について「(想像していたより)気持ち早かったかな」と言った。もっと長くプロ野球の世界で戦い続けたいという思いを持ちながら、今後の人生を考える中で引き際を決断したのだろう。その葛藤が垣間見えた気がした。

 18年からの3年間、日本ハム担当を務める中でグラウンド内外でとてもお世話になった。同学年ということもあり、自宅に招いてもらったこともあった。教わったのは、継続が生み出す力の大きさだと思っている。

 根底にあったのは、プロボクサーであった父・満さんの教え。「父親もアスリートだったから、習慣にはうるさかった。『継続しなさい』とずっと言われていた。朝起きてランニングに行ったり、夜寝る時間もほとんど同じ。朝のランニングは必ず欠かさずやった。それが普通だと思って育ってきた」。全体練習開始の何時間も前に、まだ薄暗い札幌ドームの外野フェンス沿いを走り込む姿を何度も見た。

 20年シーズンには、試合前の国歌斉唱を大きな声を張り上げて歌った。プロ野球界では珍しい光景だったので、SNSなどでも話題になった。最初は1人だった歌声は次第に周囲に変化をもたらし、シーズン終盤には隣にいた清宮が歌い始めた。背番号2は「継続する力」が生み出す影響力の大きさを知っていた。

 5日の試合では7回に代打出場。右飛に倒れたが、スタンド全体から拍手を浴びた。試合後には同僚だけでなく、侍ジャパンも含めたメンバーに胴上げされ、5度宙を舞った。またしても周囲を動かす影響力の大きさを感じ、多くのファンから愛される理由を改めて実感した。

 今後は国内外問わずにスポーツビジネスについて勉強し、企業やプロ野球球団に関わる役割にも興味を示しているという。冒頭の場面、これまでの感謝と今後の活躍を祈念する言葉を贈ると、杉谷はいつもの明るい表情に戻って力強く言った。「任せておいてよ。これからの方がすごいんだから!」。杉谷拳士にしかできない第二の人生がこれから始まる。野球の枠を越えて多くの人を楽しませ、笑顔にさせた14年間のプロ生活。本当にありがとうございました。(18~20年日本ハム担当・小島 和之)

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