【オリックス】中嶋聡監督5度舞った「非常にいい夜空でした」2敗1分けから4連勝で26年ぶり日本一

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2022.10.31(月) 06:00

中嶋聡監督を胴上げするオリックスナイン(カメラ・岩崎 龍一)

◆SMBC日本シリーズ2022 第7戦 ヤクルト4―5オリックス(30日、神宮)

 「SMBC日本シリーズ2022」第7戦が行われ、オリックスが2敗1分けから4連勝で1996年以来26年ぶり5度目(阪急時代含む)の日本一に輝いた。初回表に太田椋内野手(21)が史上初のプレーボール弾。5点リードの8回に1点差まで詰め寄られたが、逃げ切って昨年シリーズで敗れたヤクルトにリベンジを果たした。96年の優勝メンバーだった中嶋聡監督(53)が、パ・リーグ6球団の中で最も日本一から遠ざかっていたチームを頂点へと導いた。

 感情は中嶋監督にしか分からなかった。涙を我慢したのか、それともうれしすぎたのか。日本一の瞬間、ベンチで頭を抱えた。「ここにいる選手たち、舞洲(ファーム)にもいる選手たち。全員で勝ち取った優勝だと思います」。敵地・神宮で26年ぶりの悲願。顔を上げ、次々と抱擁を交わした。「非常にいい夜空でした」。マウンド付近で選手たちを見つめた。力強くガッツポーズし、胴上げは連覇時と同じ5度。体がふわりと持ち上げられた。

 「この悔しさを忘れないように。悔しさを晴らすのは、連覇しかない。連覇できるのは、俺たちしかいない」。昨年11月27日。95年に続き、同じヤクルトとの頂上決戦に敗れた。試合後のほっと神戸。中嶋監督の声が響いた。現実と向き合うことから再出発した。

 レギュラーシーズン最終戦、143試合目で有言実行した。マジック1だったソフトバンクが敗れ、オリックスが勝つことだけが条件だった。「9分の1を引いたな」。優勝確率を9分割にしたチャートを眺め、大きく息をついた。CSでもホークスを下し、完全な力勝ちでシリーズ進出。予想外の危機も乗り越えた。

 第1戦は山本で負けた。5回途中で降板したエースは左脇腹を負傷した。呼吸すると、痛みがあった。明らかな離脱危機。それでも処置を受け、ベンチへ戻った。応援に回っていた。戦う意思が伝わってきた。「引きずっても仕方ない」と指揮官として発信した。しかし2戦目は、延長12回で引き分け。9回に阿部が同点3ランを浴びた。2年目で中継ぎの柱に成長した右腕。ネット上で心ない中傷を浴びた。「阿部を生き返らせるぞ!」。翌日から合言葉のように広がっていった。苦しみはすぐ、笑いに変換。明るい空気感が、いつもチームにはあった。

 前回の日本一は96年。巨人とぶつかった。「こんなの、誰が打てるんや…」。戦前の相手分析。斎藤雅のスライダー、槙原のフォークに仰天した。選手同士で思わず、顔を見合わせた。捕手・中嶋としての出番は2試合だけ。悔しさを忘れるような奇跡もあった。

 2点差を追いつかれた第1戦の延長10回。イチローが決勝弾を放った。打席へ向かう直前、天才打者は「ホームラン、打ってきますよ」とベンチの仲間へ向け予告した。打線のカギとした松井は19打数4安打、ノーアーチ。指揮した今回も、同様に主砲を封じた。

 「あのスイングですからね。本当に怖い」ととにかく警戒した3冠王・村上のバット。1本塁打こそ許したものの、7試合で26打数5安打にとどめた。内角、外角の速球をいかに厳しく投げられるか。先発マスクを分け合ってきた伏見、若月は2人きりでも話し合い、勝つための策を共有した。「(ヤクルトは)本当に怖いチームで、本当に強かったです」。1分けを含む2連敗スタートで、日本一確率24%からの大逆転。この日もプロ初の中4日だった先発・宮城が5回無失点と粘り、継投で1点差を守り抜いた。全員でミラクルを完成させた。

 激闘を制し、球団からは正式に来季続投を要請される。「調子のいい選手をどんどん使って全員で勝つ。本当に、シンプルにそれをやっただけだと思います」。パ・リーグ3連覇、75~77年以来となる連続日本一への第一歩。中嶋オリックスが黄金時代を再来させる。(長田 亨)

 ◆1996年の日本一 イチロー、中嶋聡、田口壮、星野伸之、野田浩司らを擁し、2年連続のリーグ優勝を決めた仰木彬監督率いるオリックスは、長嶋巨人との日本Sで初戦から3連勝。4戦目は落としたものの、10月24日のグリーンスタジアム神戸(現ほっと神戸)での第5戦で5―2と勝利。19年ぶり4度目の日本一に立った。前年1月に阪神大震災が発生し「がんばろうKOBE」の合言葉を掲げる中で復興の象徴となった。

 ◆中嶋 聡(なかじま・さとし)1969年3月27日、秋田県生まれ。53歳。鷹巣農林(現秋田北鷹)高から86年ドラフト3位で阪急(現オリックス)入団。西武、横浜(現DeNA)、日本ハムと渡り歩き、2007年からバッテリーコーチ兼任。15年限りで引退。19年からオリックス2軍監督。20年途中から1軍監督代行、21年から1軍監督。通算1550試合、804安打、55本塁打、349打点、打率2割3分2厘。右投右打。

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