【オリックス】恩師・福良淳一氏が明かす“糸井嘉男伝説”の数々…「今、振り返っても、面白かったなあ」

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2022.9.22(木) 05:40

オリックス時代の2013年、当時ヘッドコーチの福良氏(中央)と笑顔で話す糸井(左)(右は森脇監督)

 オリックスの福良淳一ゼネラルマネジャー(GM、62)が21日、引退試合に臨んだ教え子の阪神・糸井嘉男外野手(41)に愛あるメッセージを寄せた。糸井の日本ハム投手時代の入団2年目から見守り、2006年の外野手転向後は2軍監督や1軍ヘッドコーチなどの立場で野球のイロハを教え、ブレイクを後押し。13年からはオリックスでコーチ、1軍監督として接した。超人を誰よりも間近で見てきた名伯楽が“糸井伝説”を振り返った。(取材・構成=小松 真也)

 * * * 

 嘉男(糸井)との思い出話だけで一冊の本が書ける(笑い)。今、振り返っても、面白かったなあ…。

 投手をしていた頃から打撃センスはあったし、足も速かった。とはいえ、06年に野手に転向してからは一から鍛えた。打撃マシンで真っすぐを打たしたらすごいけど、「変化球はどう打つんですか」って。でも、あいつが偉いのは、自分からコーチにお願いして居残って打ち込んだり、ノックを受けたり。寮生の夜間練習にも志願参加していた。こっちが「なんでいるんや? 帰れ!」と言うぐらい。止めないと朝まで打ち続けるし。今の時代の選手では考えられない練習量。みんな嘉男の身体能力がすごいと口にするが、一番は努力だと思う。イチローもよく練習していたけど、嘉男も負けず劣らずやっていた。

 2軍監督時代には、ベンチの私の隣の席に「糸井」と書いた紙を張りつけ、そこに座らせた。試合中に考えていることや会話を聞かせるため、専用席をつくった。ルールすら、わかっていなかったからね(笑い)。例えば、インフィールドフライを知らない。3ボールから「打て」のサインを出すと、あいつは何でも打たないといけないと思い込んでボール球を当てにいって、ポーンとファウルフライ。そんなことは、言い出したらきりがないぐらいある。

 嘉男が引退会見で「ペットの育て方みたいな本を買って、育てられた」と話していたけど、あれは本当。ある時、コーチ陣が集まって「糸井には、どうやって言えば、伝わるんですかね」と。それで、大村(当時2軍打撃コーチ)が子犬の飼い方の本を買った(笑い)。サインミスが起こることもわかっていたし、こっちの失敗かなと受け止めていた。ただ、チームに迷惑をかける怠慢プレー、ボーンヘッドだけはきつく叱った。

 1軍の主力になってから、ある試合で左翼線の打球をファウルと決めつけ、ちんたら走った。次の試合でもライトフェンス直撃の打球をちゃんと走らなかった。だから、当時の梨田監督の部屋に呼び出して、2人で「お前、辞めえ。ユニホーム脱げ」と。あいつのこれからの野球人生のことを考えたら、見過ごせなかった。嘉男も素直な男だし、思いは理解していた。それから、そういったプレーはなくなった。

 けがにも強い選手だったね。あいつが「痛い」と言う時は大けがだと思わないといけなかった。二塁にスライディングをして、足を引きずってベンチに帰ってきたから「大丈夫か」と聞いたら問題ないと。後から、じん帯を負傷していたことがわかった。ネクストバッターズサークルで重りをつけたバットを振った際に右肩を痛めたような素振りを見せた時も「大丈夫です」と言ったのに、左翼を守って遊撃までワンバウンド送球。全く投げられない状態だった。こんな話も山ほどある。我慢して、迷惑をかけたくないという気持ちがあったのだろう。

 私が13年にオリックスにヘッドコーチで復帰した時に、嘉男のトレード加入が決まって驚いた。「日本ハムで何年つき合った。ようやく離れられたのに」って(笑い)。本人は「また怒られる」と思ったかもしれないが。だけど、その頃には練習の取り組みとか、若手のいい見本だった。成長したと思ったよ。

 いろんなことがあったけど、やっぱり嘉男は憎めない。16年オフに阪神にFA移籍する時も律儀に断りを入れてきたし、引退を決めた後には電話をくれた。大人になったんかな…41歳にして(笑い)。少し休んで、今後は自分がやってきたことを若い連中に伝えてほしいね。本当に本当に、ご苦労さんやわ。(オリックス・ゼネラルマネジャー)

 ◆福良 淳一(ふくら・じゅんいち)1960年6月28日、宮崎県生まれ。62歳。延岡工高から大分鉄道管理局を経て、84年ドラフト6位で阪急入団。88、94年に二塁手のベストナイン。97年に現役引退。通算1240試合で打率2割7分9厘、50本塁打、372打点。オリックス、日本ハムでコーチを歴任し、13年にヘッドコーチとしてオリックスに復帰。16年から1軍監督を務め、19年6月にGM就任。右投右打。

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