ロッテ・唐川「復帰しても入る隙がないな」夏場に昇格し抜群の存在感

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2022.9.6(火) 10:30

ロッテ・唐川侑己

◆ 勝ち試合の7回

 前半戦のロッテブルペンを支えた東條大樹(現在一軍復帰)、小野郁、ロベルト・オスナ(現在一軍復帰)といったリリーフ陣が新型コロナウイルス陽性判定を離脱し、チームが大ピンチとなった8月上旬に唐川侑己が一軍に帰ってきた。

 「僕は中継ぎなので、中継ぎもそうですけど、先発も含めたピッチャー陣がすごく良い形で投げていたし、復帰しても入る隙がないなと思って見ていました」。

 開幕は二軍スタートで、今季の実戦初登板は6月23日の楽天との二軍戦だった。一軍のブルペンは開幕当初こそ勝利の方程式に苦戦していたが、5月以降は“勝利の方程式”が確立され、6月下旬には新外国人のオスナも加わった。ブルペンの層が厚くなったなか、唐川は8月3日に特例2022代替指名選手として今季初昇格。

 同日の楽天戦で4-5の8回に1回を無失点に抑えると、5日の西武戦では3-3の9回に登板し、12日の日本ハム戦ではイニング途中からではあるが今季初めて勝ち試合の7回のマウンドにあがった。この登板以降は、主に勝ち試合の7回を任されている。

 「それは今コロナとかもあるので、そういうタイミングでたまたまその時に人がいなかったので、投げているだけですね」。

 ここまで12試合に登板して、1勝0敗7ホールド、防御率は0.79、現在7試合連続無失点中と、さすがの安定感だ。

 「結果として抑えられている日が多いので、いい感じではきていると思います。ただ試合数はそんなに投げていないですし、自分の調子自体はこれから上げていく必要があるなと思います」。

 “結果として抑えられている”、“調子自体はこれから上げていく必要がある”と話したときに、筆者は19年11月の取材で唐川が「いいときに抑えられるのは、誰でも抑えられる。悪い時にどうやって粘るか。やっぱり今年(2019年)1年間、益田とかを近くで見ていて、そういうのができるピッチャーとできないピッチャーの差があると思う」という言葉をふと思い出した。

 悪い時に粘る方法、抑えられる方法が見つかったのだろうかーー

 「明確なものではないですけど、そんなによくないなかでも、自分のベストを出す努力をしてという感じですね。それの積み重ねかなと思いますね」。

◆ カーブ、チェンジアップ

 今年の投球を見ていると、追い込んでからカーブ、ストレートを投げることが多い。その一方で、追い込んでから左打者へのチェンジアップが減少している。投球スタイルが今年は少し変わった印象だ。

 「それはキャッチャーとの兼ね合いもありますし、自分の調子もあるんですけど、別に自分のなかで偏るとかは思っていなくて、そのときそのときのベストな選択をというなかで、結果そうなっているのかなという感じです」。

 8月31日のソフトバンク戦では谷川原健太、ガルビスをカーブで連続三振奪うなど、カーブは非常に良く抜けているように見える。

 ただ本人は「え〜そうですかね、僕的にはもうちょっと頑張りたい」と納得がいっていない様子。

 チェンジアップの割合が減っている理由についても「今投げている球種のなかで順位が低いので、これからあと1カ月ちょっとありますけど、いろいろあるなかでその割合が変わってくるのかなと思います」と明かした。


◆ 代名詞のカット、そしてストレート

 唐川の代名詞といえばカットボール。リリーフに配置転換となった18年の後半から投球の軸となっている。6-5の7回に登板した8月19日の楽天戦では、打者3人に対し7球オールカットボールで三者凡退に抑えた。

 今季ここまでのカットボールについて「イマイチコントロールがよくないので、ボールボールになったりとか、3ボールになったりというのが結構あるので、そこらへんはストライク先行で修正していけたらもっとよくなるのかなと思っています」と改善の余地があるようだ。

 変わったといえば、21年からストレートを投げる機会が多くなっているが、今季は映像を見ていて昨年よりもストレートの割合が若干増えている印象だ。直近でいえば8月26日の楽天戦、1-0の8回二死走者なしで西川遥輝に対し1ボール2ストライクから空振り三振に仕留めた外角の145キロのストレートは見事だった。

 カットボールを投球の軸にし「あんまり通用していないから」とストレートを投げていない時期もあったが、ストレートに自信を取り戻したことなど、何か理由があるのだろうかーー。

 「自信はないですけど、新しく今年キャッチャーが松川と組むこともあるので、そのなかで彼が選択して投げているという感じですね。常に良いまっすぐを投げたいと思っているので、それの継続です」。

 シーズン残り22試合。唐川が投げる場面は、チームの勝利が関わってくる重要なポジション。責任もかなり大きく重圧がかかる。

 「チームで戦っている以上は目指すところは一つ。それに向けて僕がやれることというのは準備、心構えだとか色々あると思うので、それを全力でゲームに向けてやっていきたいなと思います」。

 唐川が勝ち試合の7回を投げ、そして抑える試合が増えれば、チームとしての大きな目標を掴みとることができているはずだ。

取材・文=岩下雄太

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