ロッテ、12球団トップの89盗塁 今季も光る“1つ先の塁”を狙う走塁意識の高さ

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2022.7.25(月) 09:02

リーグトップの盗塁数を誇るロッテ・髙部瑛斗(C) Kyodo News

◆ 12球団トップの盗塁

 ロッテはチーム打率.225、チーム294得点はリーグワースト、チーム本塁打53本もリーグ5位と打線に課題を抱えるなかで、“1点”を奪うために“1つ先の塁”を狙った走塁が光った。

 チーム盗塁数は12球団トップの「89」を記録。個人の盗塁数を見ても、髙部瑛斗がリーグトップの29盗塁、昨季盗塁王に輝いた和田康士朗がリーグ7位の11盗塁をマークし、荻野貴司、岡大海、中村奨吾はリーグ10位タイの8盗塁だ。

 昨季ファームで盗塁王となった髙部は、盗塁するうえで一軍と二軍の違いについて「多少は感じますけど、そこまで変わりはないんじゃないかなと思います」と一軍の舞台でも変わらず盗塁を積み重ねている。

 注目すべきは、髙部のイニング別盗塁数を見ると1回の11個、8回の6個と試合の序盤、そして1点を争う試合終盤での盗塁が多いこと。髙部は初回と8回の盗塁が多い理由について「序盤と後半というので、序盤はなんとか勝負するというところだと思いますし、後半の8回というのはどうしても1点が欲しいときに先に進めたいと思うので、その結果前半と後半で分かれているんじゃないかなと思います」と分析した。

 髙部をはじめ、荻野、中村と盗塁ができる選手がスタメンに名を連ね、荻野と髙部の“1、2番”は相手投手にとって足が使えてとても嫌な存在であることは間違いない。試合終盤にも和田康士朗という切り札がおり、ベンチスタートであれば岡大海、一軍でプレーしていれば藤原恭大、小川龍成といった足の速い選手が控えていることもある。これはロッテの武器といってもいいだろう。


◆ 1つ先の塁を狙った走塁

 盗塁に加えて、1本の安打で1つ先の塁を狙う積極的な走塁は、井口資仁監督が就任した2018年以降、チーム内で徹底されているように見える。年々、“1つ先の塁”を狙うことが当たり前のような感覚になってきている印象だ。

 前半戦は相手選手の“捕球体勢”を見て内野フライでも三塁から生還するというシーンが何度かあった。5月8日のソフトバンク戦、3-8の6回一死一、三塁でレアードの打球はショートとレフトの間のフライとなり、ショートが後ろ向きでキャッチしているのを見て三塁走者の菅野剛士が生還。

 7月9日のオリックス戦でも0-2の4回無死一、三塁で安田尚憲が三遊間後方に放ったフライをショートがランニングキャッチし、捕球体勢が悪かったのを見て三塁走者の髙部がホームインした。

 髙部は6月に行ったオンライン取材で「(1つ先の塁を狙う意識は)もちろんしています。簡単にヒットが出るものではないと思うので、なんとか走塁で1点取れたら強いと思います。全力でいくことで生まれる1点もある。そこは井口監督が大切にしている部分。僕たちも期待に応えられるようにと思ってやっています」と話した。

 相手のミスを見逃さず、次の塁を狙い得点に繋げることも多かった。5月24日の広島戦では6-0の9回無死一塁、エチェバリアの打席中に岡が二塁盗塁を試みると、捕手が後逸。その間に一気に三塁を陥れる好走塁と好判断(記録は二塁盗塁、捕逸の間に三塁進塁)。岡は小川の犠飛でホームインし、ちなみに無安打での得点だった。

 5月26日の広島戦では、佐藤都志也が0-1の2回無死走者なしの打席、一塁へ強烈なゴロを放ち、一塁・マクブルームがファンブルしている間に全力疾走し一塁セーフを勝ち取り(記録は一失)、続くレアードが逆転2ランに繋げた。6月1日のヤクルト戦では、3-3の6回二死走者なしで中村がレフトへの飛球を放つと、レフトが弾いている間に二塁へ進み、レアードのセンター前で決勝のホームを踏んだ。


◆ 足が速いといえない選手も

 足の速い選手だけでなく、足が速いとはいえない選手たちも、積極的に次の塁を狙っているのがロッテの良さでもある。

 レアードは6月8日の中日戦、2-2の3回一死一、二塁から安田の左中間を破る当たりで二塁走者の佐藤に続き一塁から長駆ホームインすれば、山口は7月21日の西武戦、2-4の9回無死一、二塁の場面、レアードの中飛で二塁から三塁へタッチアップし、岡の適時打で生還した。安田は7月6日の日本ハム戦、1-2の4回無死二、三塁から井上の右犠飛で三塁走者に続き二塁から三塁にタッチアップ。佐藤の中犠飛で勝ち越しのホームを踏んだ。

 安田は「自分は足が速くないので、できることは限られているんですけど、そのなかで最大限努力していきたいと思っています」と話した結果が、7月6日の日本ハム戦のような走塁に繋がっているといえそうだ。

 打てない、点がなかなか取れないなかで、選手一人一人の走塁への意識の高さ、なんとか1点をもぎとってきた。オールスター明けも、1つ先の塁を狙った走塁で1点でも多く得点に結びつけていきたいところだ。

文=岩下雄太

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