谷佳知「僕と社会人野球」 都市対抗野球の若獅子賞受賞が、その先の道を切り開いた

パ・リーグ インサイト

2025.8.26(火) 15:00

谷佳知さん ©PLM
谷佳知さん ©PLM

 第66回都市対抗野球大会で若獅子賞(新人賞)を受賞。社会人野球・オリンピックでの実績を引っ提げてプロ入りし、オリックスと巨人で活躍した谷佳知さん。引退後は東芝(川崎市)野球部のエグゼクティブ・アドバイザーとして後進の指導にあたり、現在は解説者としてメディアに活動の場を移している。そんな社会人野球の醍醐味をよく知る谷さんに、社会人野球時代の思い出と、今年の都市対抗野球の展望を語ってもらった。

◇ ◇ ◇

創部2年目のチームから都市対抗、オリンピック、そしてプロへ

 社会人野球に進んだきっかけは大卒でプロに行く夢が叶わなかったからです。
 大卒プロ入りの希望は出していましたが、大学の先輩が三菱自動車岡崎(岡崎市)のマネージャーをされていたので、「もしプロに行けなかった場合は入部させてもらえますか」とお願いしていたんです。

 当時、三菱自動車岡崎は創部2年目。そう聞くとチーム体制はまだ出来上がっていない、ポジション争いもないと思われるかもしれませんが、実際は全然違ったんですよ(笑)。新しいチームというよりも、三菱系の水島、川崎、京都から選手が集まっており、ベテラン選手も多く、強豪が多い東海地区でも戦える戦力が揃っていました。施設は三菱重工の野球部のものを借りていて、グラウンドは午前と午後で自動車部と重工部が使い分けていました。

 社会人野球と高校・大学との違いといえば、作戦などの内容がより具体的になり、データ野球の要素も取り入れられていたこと。それに、グラウンドが午前中しか使えないため、全体練習以外に自主練習もあったことも大変でした。社会人からウエイトトレーニングが本格的に始まり、逆に走り込みが少なくなったのは、僕としてはありがたかったですけどね。

©PLM
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 社業の思い出というと、入社してほどなく全日本やオリンピックの代表候補選手強化合宿に呼ばれたり、野球部の練習に出ていたりでほとんど出社できませんでした。たまに出社して書類整理などの事務作業をしている雰囲気を出してみたり(笑)。それでも会社の皆さんは温かく応援してくださって、本当にありがたかったですね。

 1995年、三菱自動車岡崎は都市対抗野球に出られなかったのですが、僕は新日鐵名古屋(現日本製鉄東海REX、東海市)の補強選手として出場しました。補強選手のイメージってどんな感じですか? 地区大会を勝ち上がり、すでに出来上がっているチームに“おじゃまします”という状態かと思いきや、すごく歓迎されるし待遇がいいんです。新しいユニフォームやスーツが支給され、出場機会は必ず与えられる。恵まれた環境で1カ月間すごく楽しかったです(笑)。この都市対抗野球大会の初戦・東京ガス戦でホームランを打ち、若獅子賞を獲得しました。チームは準々決勝で敗れましたが記憶に残る大会でしたね。

新日鐵名古屋の補強選手として出場した谷さん ©毎日フォト・サービス
新日鐵名古屋の補強選手として出場した谷さん ©毎日フォト・サービス

 社会人時代の思い出といえば、やはりアトランタオリンピックでしょうか。大学・社会人のアマチュア中心でチームを組みましたが、松中信彦さん(新日本製鐵君津/現日本製鉄かずさマジック)や福留孝介さん(日本生命、大阪市)など、プロ入り前の錚々たるメンバーが集まりました。
 仲がよかったのは、同じ外野手で同級生だった西郷泰之(三菱自動車川崎/後の三菱ふそう川崎)。アトランタという地で一緒に戦えたのはいい思い出です。

 オリンピックでは、特にキューバ対策が論点となっていました。国際審判のストライクゾーンが広く、投手はアウトコースを落差の大きいスライダーで攻めてくるので、その対応を模索していたのです。ただ、僕は細かいピッチャーのデータは見ずに打席で対応するタイプで、データを頭に入れすぎると逆に自分のプレーができない。それに、打席に入って初めて肌で感じる数字以上のスピードが、キューバ投手陣にはありました。なので、打席で感じたことや来た球を打つというシンプルな感覚を大切にしていました。これはプロに入ってからも変わらなかったですね。

 その年の秋にドラフト指名され、創部初のプロ野球選手になりました。
 そこから三菱自動車岡崎はプロ野球選手を多数送り出しています。山口和男(現オリックススカウト/山本由伸投手などを担当)も会社・プロ(オリックス・ブルーウェーブ)の後輩ですね。そういえば、彼の社会人野球入りは僕が誘ったんですよ。「2年後(プロに)行けるから」って。

今年の東芝は“打”のチーム

©PLM
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 引退後の2021年に東芝のエグゼクティブ・アドバイザーに就任しました。選手とのコミュニケーションや、監督・コーチへのアドバイスが主な仕事です。プロの経験を生かし、選手に寄り添いながらチーム全体の方向性についてアドバイスをしていました。

 昨年の都市対抗野球優勝の三菱重工East(横浜市)、日本選手権優勝のトヨタ(豊田市)など強豪が多いですが、今年の東芝、優勝してほしいですね。
 東芝は「勝って当たり前」のチームとして歴史を積み重ねてきました。最近は下山悠介(慶應高―慶應大)や齊藤大輝(横浜高―法政大)などプロ志望の強打の選手が入ってきて戦力が充実しています。セカンドの山田拓也(東海大相模高―青学大)も大学時代にキャプテンを経験して成長してきている。とにかく打力があるので、打って打って打ちまくって勝ってほしいです。

 選手たちは都市対抗野球大会のために1年間練習を積み重ねています。その努力が目に見えてわかりますし、命をかけるくらいの思いで取り組んでいます。選手たちには自分にとっていい大会、思い出に残る大会になってほしいと思います。

 都市や企業と一緒に戦っている姿が都市対抗では見られるので、僕はそれが楽しみですね。選手たちには存分に力を発揮してほしいと思います。応援しています!

谷 佳知
1973年大阪府生まれ。尽誠学園高校(香川)、大阪商業大学を経て、三菱自動車岡崎野球部に入部。1996年のドラフト会議でオリックス・ブルーウェーブから2位指名を受けて入団。2007年シーズンから巨人、2014年シーズンからはオリックス・バファローズでプレーする。2015年引退後は解説者や東芝のエグゼクティブ・アドバイザーとして活動。現在は駒澤大学野球部の息子・佳亮さんのサポートに余念がない。


語り・谷 佳知
聞き手・海老原 悠

Information

第96回都市対抗野球大会
全国の都市を代表する32チームがトーナメントで火花を散らす。三菱自動車岡崎は8月29日の第2試合(14時開始)でJR四国(高松市)と、東芝は同じ日の第3試合(18時開始)でJR東日本(東京都)と、それぞれ対戦する。

開催日程:2025年8月28日(木)〜9月8日(月)
場所:東京ドーム
チケット、出場企業情報:https://www.jaba.or.jp/96cityopposition/

チケットキャンペーン:
パ・リーグの北海道日本ハム、東北楽天、オリックス、千葉ロッテ、さらにセ・リーグの巨人、広島、中日、横浜DeNA、東京ヤクルト各球団のファンクラブ会員には、都市対抗野球大会の当日券が特別割引価格で販売されます。東京ドームのチケット販売窓口で会員証をご提示ください。割引価格は以下のとおりです。

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プレミアム席   3,300円 → 3,100円
特別席S     2.750円 → 2,400円
特別席      2.650円 → 2,200円
エキサイトシート 5,500円 → 4,850円
バルコニーA席  2,400円 → 2,000円
バルコニーB席  2,200円 → 1,750円
※外野席、グループボックス席、グループテラス席、グループシート、車いす席の割引はございません。特別席とバルコニー席のこども料金の割引もございません。
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また9月6日(土)、7日(日)の2日間は「マイナビキッズデー」として、当日券のこども料金(特別席、バルコニー席)が無料となります。


プレゼントキャンペーン:
第96回 都市対抗野球大会で選ばれた橋戸賞(MVP)、久慈賞(敢闘賞)を獲得した選手のサインボールを贈呈いたします。
個数:各1個
応募フォーム:https://forms.cloud.microsoft/r/zn8nixdHaV
期間:8月26日(火)~9月8日(月)

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