
◆パ・リーグ 日本ハム0―6オリックス(11日・エスコンフィールド)
オリックス・曽谷龍平投手(24)は呼吸を整えた。「自分というより、首位のチームとやるにあたって、なんとか勝ちたい」。8回2死一塁、最後の力を振り絞り、郡司を外角低めのフォークで一直に仕留めた。6安打無失点、10奪三振の好投で、自身最多かつチーム単独トップの8勝目。自身初完封こそ逃したものの、両リーグ最速の10勝目を狙った伊藤との投げ合いを121球の熱投で制した。「中継ぎが厳しい中で、僕たちが投げないといけない。8回を投げ切れて本当に良かった」と息をついた。
3~5回は、いずれも得点圏に走者を背負う展開。ボルテージが最高潮に上がる敵地エスコンでも、左腕は落ち着きを失わなかった。さえ渡ったのは、その曲がり幅から、大学時代に友人に名付けられた決め球「ジェットコースタースライダー」だ。「(ピンチで)よりギアが上がって、感覚がとてもよかった。きょうは合格点」。タオルグッズも発売された宝刀について「一番、自信のある球。もっと自分の武器にできれば」と笑みを浮かべた。
今季は自身初の開幕ローテをつかみ、1学年下のエース宮城と左の両軸を形成。コンスタントに100球前後を投げても「そんなに疲れない」と頼もしいのは、グラウンド外での体調管理を怠らないからだ。昨秋の退寮後、一人暮らしの自宅に治療器を購入。登板翌日は2セットのサウナで整った体をもみほぐし、次の登板に備えるのがルーチンとなった。「より野球に向き合う時間が増えた。緊張もあるけど、もっともっと投げたいという気持ちの方が強い」。野球中心の生活が、3年目の飛躍を支えている。
チームは首位・日本ハムとのゲーム差を1・5に縮め、2位に浮上。キャリアハイ更新の白星にも「一個ずつだと思う。とにかく負けないピッチングをしていきたい」と浮かれることはなかった。北の大地でまた一つ、階段を上った背番号17。切れ長の両目で、静かにV奪回を見据えた。(南部 俊太)
「自分だけに勝ちがついて、いいんでしょうか」宮城大弥に気遣い
白星を重ねても、曽谷は心から喜べなかった。「自分だけに勝ちがついて、いいんでしょうか」。開幕から3か月以上がたち、7月に入ったある日のこと。担当の岡崎スカウトに連絡した。「自分だけ」と言ったのは、宮城の存在があったから。悩みを打ち明けた。
「メンタルにきてしまいそうです…」。先発で6回以上を投げ、自責点3以内で記録されるクオリティー・スタート。同じ14試合に先発し、8勝の曽谷が8度、宮城は12度で3勝というアンバランスを気にかけていたのだ。曽谷も昨年、防御率2・34で7勝11敗。「タメ口でもOK」と心を許す、1学年下の後輩エースの苦しみが痛いほど分かった。
同じドラフト1位入団の左投手。岡崎スカウトにはこう助言された。「毎試合、登板する試合は勝つ。その気持ちだけはぶらせてはいけないよ」。勝つことの厳しさ、難しさを知ってつかんだ、キャリアハイの8勝目だ。(オリックス担当・長田 亨)
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