キューバから日本へ、努力でつかんだ現在地。マルティネスが日本の野球から学んだコト

パ・リーグ インサイト

2025.8.5(火) 12:00

北海道日本ハムファイターズ・アリエル・マルティネス選手 ©PLM
北海道日本ハムファイターズ・アリエル・マルティネス選手 ©PLM

「日本のすべてが好きです」

 そう話すのは、NPB6年目のシーズンを迎えた北海道日本ハムのアリエル・マルティネス選手だ。キューバで生まれ育ったマルティネス選手だが、「日本に順応できていると思っていますし、(日本での生活を)楽しんでいます。日本の食べ物も大好きです」と笑顔を見せ、異国での生活にもすっかり馴染んでいる様子。今回は、そんなマルティネス選手の素顔に迫る。

野球を始めたきっかけとは? 日本の野球で学んだ「努力」の価値

 WBCなどの国際大会があるたびに、家族や近所の人たち全員でキューバ代表の試合を観戦する環境で育ったというマルティネス選手。そうした環境の影響もあり、「WBCやオリンピックで常に主役となる素晴らしいキューバのナショナルチームに、いつか入りたい」と思ったことがきっかけで野球を始めたと話す。

 さらに、かつてNPBで活躍したキューバ出身選手たちの存在も、マルティネス選手に大きな影響を与えた。特に、福岡ソフトバンクで活躍したアルフレド・デスパイネ選手やジュリスベル・グラシアル選手の成功は、マルティネス選手に自信をもたらしたといい、「彼らが成功する姿を見て、私にも自信が生まれましたし、“私もできるはず”と自分に言い聞かせました」と来日当時を振り返る。

 また、同じくキューバ出身の福岡ソフトバンクのリバン・モイネロ投手、巨人のライデル・マルティネス投手も、マルティネス選手にとって特別な存在だ。

「彼らとはとても仲が良いですし、日本で良い結果を出していることがとても嬉しいです。ライデルやモイネロとの対戦は、負ける可能性が高いと分かりながらも、だからこそ失うものは何もないと考えて、強い気持ちと勇気を持って臨んでいます。彼らは日本でもトップレベルの素晴らしいピッチャーなので、今後はもっと対戦したいですね!」

特に、同じパ・リーグでプレーするモイネロ投手とは食事に行く機会も多いといい、「最近は、モイネロが6月の月間MVPを取った時に、お祝いしました。彼が北海道に来るときは一緒に食事に行ったり、私が福岡に行くと彼が食事に誘ってくれたりしますよ」と笑顔で語った。

練習中に笑顔を見せるマルティネス選手 ©PLM
練習中に笑顔を見せるマルティネス選手 ©PLM

 日本とラテンアメリカでは文化や環境が大きく異なるが、マルティネス選手が日本に来てから最も大切にしているのは“努力すること”だという。

「NPBでプレーすることは、日本の若者にとって簡単なことではありませんし、多くの選手がNPBでプレーするために苦労していることを知っています。そんな中で、私はキューバから来る機会を得たからこそ、“努力すること”を大切にしなければなりません。ラテン系の私たちは少し楽観的になってしまう癖があるのですが、(日本に来てから)努力して目標を達成すること、熱心に練習することの重要性を学びました」

 言葉の端々からにじみ出るマルティネス選手の真面目な性格も、日本で成功を収めている理由の一つだろう。

チームメイトへのリスペクト 古巣・中日時代もともに過ごした仲間には特別な想いも

 2023シーズンは6位、そして昨季は2位に終わるも、今季は首位で前半戦を終えた北海道日本ハム。その大躍進の裏には、選手それぞれの成長がある。なかでも、マルティネス選手から見て、特に成長著しい選手をたずねると、「たくさんいますよ」と悩みながらも、「彼の肩と能力は、世界中で有名になりつつあります」と、万波中正選手のポテンシャルの高さを挙げた。続けて、水谷瞬選手の名前を挙げ、「才能の天井はまだはるか遠くにあると思います。最高レベルに達した時は素晴らしい選手になるでしょう」と語ると、「有望株の選手で、素晴らしい成長を続けていますね」と清宮選手の着実なステップアップも評価。

 また、古巣・中日時代もともに過ごした郡司裕也選手と山本拓実投手には、特別な想いがあるといい、「郡司は、常に多くのポジションをこなし、打撃でも大きく貢献する仕事ぶりがとても好きです」と笑みを浮かべる。

 同期入団の山本投手に関しては、「実戦形式の打撃練習で、(山本投手から)たくさん死球を受けたことを覚えています……。これからどんなピッチャーになっていくんだろうと心配していましたよ(笑)」と、当時を懐かしみながらも、「あれから8年が経ちますが、今では素晴らしいピッチャーです。たくさんの努力と練習を経て成長し、今ここにいるんだと思います」と語った。

練習中のマルティネス選手 ©PLM
練習中のマルティネス選手 ©PLM

日本野球の素晴らしさを母国・中南米地域へ

 7月8日の千葉ロッテ戦、延長11回に決勝打を放つと、ヒーローインタビューで、この日が誕生日だった奥さんへ愛のこもったメッセージを送るなど、家族やチームメイトなど周囲の人々をとても大切にしていることで知られるマルティネス選手。インタビュー中も、同試合のヒーローインタビュー後、チームの応援団がマルティネス選手の奥さんに向けてバースデーソングを演奏したことについて「トランペットで祝福してくれたシーンを映像やニュースで見て、妻も喜んでいました」と嬉しそうに話してくれた。このように、愛する家族がマルティネス選手の活躍をそばで支える一方で、母国・キューバや中南米地域に住む多くの友人も、マルティネス選手の活躍が気になっているようだ。

「いつも多くの友人が『どこで観られるの? どこで観られるの?』と聞いてくるんです」

 そこで、現在パ・リーグの試合が中南米地域でも視聴できることを伝えると、「彼らに伝えたいと思います!」と嬉しそうな表情を見せ、「ラテンアメリカでも、人々の生活の中で野球は重要なものなので、(パ・リーグの試合が中南米地域でも配信されていることは)非常に素晴らしいことだと思います。日本の野球は、盗塁やバントなど素晴らしいプレーがたくさんあるので、特に若い選手たちに見るように勧めたいです」と日本野球の素晴らしさが中南米地域でも広まることへの期待を口にした。

 最後に、後半戦への意気込みをたずねると、「チームの目標は優勝です。今年のチームは非常に完成度が高いですし、ここまで順調にきていると思います」と胸を張り、リーグ優勝を果たすには「自信を持つことが最も重要」と力強く語った。

インタビュー・竹林慎太朗
文・波多野アイ

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