「優れたピッチングは優れたバッティングに勝る」。絶好調の投手を前に、打線の勢いがぱたりと止まるのはよく見られる光景だ。ピッチャーはバッターの打てないスポットにボールを投げ込むことができるし、投球を始めなければ試合は動かないのだから、その前提からして守る側のバッテリーがゲームの主導権の大半を握っている。打てるボールが来るまで、基本的にバッターは受け身の姿勢で待たなければならない。
今季前半戦のパ・リーグをリードした楽天の快進撃の象徴となったのは、長打を打てる茂木選手とペゲーロ選手の1、2番だった。バッテリーとバッターの間にある能動と受動の関係を崩せる可能性が高まる点に、長打力のある打者をツートップに据える最大のメリットがある。その感想を求められたプロ野球OB解説者の「嫌ですね」は常套句。初回の攻撃から2人をバッターボックスに送り出した時点で、指揮官の梨田監督は先制のジャブを放ち続けていたことになる。
繰り出したジャブが先制パンチになることもあった。今季、茂木選手は6本の初回先頭打者弾を放ち、ペゲーロ選手も4度、初回にアーチをかけている。2人のうちいずれかが初回に長打を記録した試合での楽天は、16勝5敗で勝率.762。生え抜きとしては球団初の2桁本塁打に到達した茂木選手と、7月12日の福岡ソフトバンク戦での156.4メートル弾を筆頭に特大弾を叩き込むペゲーロ選手を、大事な試合の入りから迎えなければならない相手バッテリーの心理は推して...