フルスイングに秘めた打撃理論としたたかさ。Ns method中村紀洋氏インタビュー(前編)

2017.12.28(木) 00:00 パ・リーグ インサイト 藤原彬
中村紀洋氏(C)PLM

プロ野球のグラウンドを離れて3年が経っても「生涯現役」の信念を曲げることはない。中村紀洋氏は現在、Ns methodで野球の指導に携わることでチャレンジを続けている。「ヤフオクドームは狭くなったね。あんなの楽勝ですよ」と笑う大阪が生んだホームランバッターは、広い大阪ドームやナゴヤドームを本拠地にしても、お構いなしにスタンドの最深部へホームランを突き刺し続けた。インタビュー前編では、シグネチャーであるフルスイングの哲学から大阪近鉄のリーグ制覇、中日での日本一など、実働22年に渡る激動のプロ野球生活について振り返ってもらう。

「ホームランの打ちそこないがヒット」の真理

「初球からは打たない。真っすぐやったら『1、2、3』で打てて面白くないからね」
プロ野球歴代17位となる通算404ホーマーを放った中村紀洋氏にとって、豪快なスイングから繰り出されるホームランが代名詞であることに異論の余地はない。そのキャリアで、個性派選手によって彩られてきたパ・リーグの顔として、数多の強打者を輩出した“いてまえ打線”の象徴として、見事なバット投げや派手な風貌でもファンを大いに楽しませた。だが、それらはすべて真実であっても、野球選手・中村紀洋のすべてではない。
「チャンスになったら、それまで見逃していた初球のボールをカーンと打ちます。相手は『見逃していたのに』となりますよね。そこはデータが頭の中にある。ピッチャーの心理を考えても、こういう場面ではほとんどストライクゾーンにボールが来ます。ただフルスイングをしただけでは打てないので、予告先発が発表されたら、夜も寝ずにその投手のビデオを見て、イメージしながら全部整理しておきます。前の状況を少し書いておけば、次にバットを構えて相手を見た時にその内容を思い出します。文字を書くことによって『来た!』と身体が勝手に反応するよう...

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