9月16日、福岡ソフトバンクがリーグ史上最速でパ・リーグ優勝の栄冠に輝き、いよいよレギュラーシーズンも残り数試合で終わりを迎える。各チームが若手選手主体のメンバーに切り替えつつある中でも、2000本安打達成を目指す福浦選手(千葉ロッテ)や、田中賢選手(北海道日本ハム)など、生え抜きのベテランは得難い精神的支柱となっている。しかし、中にはFAやトレードなどでそのチームに加入したベテラン選手たちもいる。今回はそんな選手たちの活躍ぶりを見ていきたい。
まずは、開幕から上位争いを繰り広げてきた楽天を支える藤田選手だ。近畿大学を卒業し、ドラフト4位で横浜(現・横浜DeNA)に入団した藤田選手は、2009年に自身初となる100試合出場を達成し、順調に一軍に定着していった。しかし同期入団の石川選手が頭角を現すと、出場機会も減少。2012年シーズンの途中に、トレードで楽天へと移籍した。
移籍後は3割を超える打率を残すなど、打撃力が開花。そして2013年、堅実な守備を武器に正二塁手としてチームのリーグ優勝、日本一に大きく貢献した。自身初となる規定打席にも到達し、ベストナインとゴールデングラブ賞を同時受賞。翌年は全試合出場を果たすと、球界屈指の二塁守備の名手としての地位を確固たるものにした。
今季は開幕から順調に出場を重ねていたが、腰痛により7月19日から約1カ月間の離脱を余儀なくされる。8月15日に復帰したものの、なかなか出番をつかむことができずにいた。しかし9月に入り順位争いがいよいよ激しさを増すと、再び二塁手、あるいは茂木選手に代わる遊撃手として先発出場を重ねることになる。勝負強さも発揮しており、その存在感は日増しに大きくなっていると言えるだろう。
続いて紹介するのは、オリックスの小谷野選手だ。創価大学から日本ハム(現・北海道日本ハム)に入団した小谷野選手は、2007年に113試合に出場すると、その後は7年連続で100試合以上に出場し、正三塁手として不動の存在感を示した。2010年には打点王のタイトルを獲得するなど勝負強さを見せ、一方で2番に固定された2012年には40犠打を記録するなど、柔軟な打撃でファンを魅了してきた。
しかし、2014年になると出場機会が減少。FA権を取得していた小谷野選手は、出場機会を求めてこの権利を行使し、オリックスへと移籍する。開幕戦の先発メンバーに名を連ね、新たなチームの一員として迎えた2015年だったが、左足の肉離れなど故障に苦しめられた。
再起を期して臨んだ今季は、5番・三塁として開幕スタメンに名を連ねると、4月27日の埼玉西武戦ではサヨナラ勝利を呼び込む一打を放つなど、持ち前の勝負強さを披露。3・4月は打率.360を記録して好調なスタートを切り、9月に今季初の登録抹消となったものの、復帰後はその打棒を遺憾なく発揮。4割超の打率に加え、9月14日の福岡ソフトバンク戦では1試合4打点を記録し、チームをけん引している。
最後は、福岡ソフトバンクの五十嵐投手を紹介したい。1997年、東京ヤクルトに入団した五十嵐投手は、160キロに迫る直球を武器に、2000年には56試合、2002年には64試合と登板数を重ね、中継ぎ陣の柱として活躍。2004年には最優秀中継ぎのタイトルを獲得し、2013年、メジャーリーグを経て福岡ソフトバンクに入団する。
五十嵐投手は、直球とフォークボール、さらにアメリカで習得したナックルカーブを武器に、加入1年目から51試合に登板すると、翌年には10年ぶりとなる60試合登板(63試合)を達成する。59回1/3を投げて71奪三振という驚異的な数字を残して、チーム2年ぶりのリーグ優勝に貢献。2015年も54試合を投げ10を超える奪三振率を記録し、チームの連覇の立役者の1人となった。
2016年は左太ももの肉離れに見舞われ、今季も7月中旬に同様の箇所を痛めたために戦線を離脱。復帰まで約2カ月を要したものの、2年ぶりに40試合に登板し、ここまで防御率1.25と強力リリーフ陣の中で存在感を示している。奪三振率は6.00と前年までより数字を落としているが、それはむしろキャリアを重ねた右腕が、投球スタイルを柔軟に変化させているとも考えられる。昨年参戦したウィンターリーグでは先発も経験したリリーフエースは、進化を続けて変わらない存在感を示し続ける。
ベテランと言えば、小谷野選手とともに強力なオリックス打線を支える中島選手、前人未到の50セーブを達成したサファテ投手も、シーズンを通して活躍している。惜しまれつつも引退した井口選手(千葉ロッテ)や、現在はファーム調整中の渡辺直選手(埼玉西武)や松井稼選手(楽天)など、パ・リーグにはまだまだ「ベテラン移籍組」の選手たちがいる。経験豊富ないぶし銀たちの輝きが、今季のパ・リーグの戦いを面白くしてくれたことは間違いない。
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