プロ初打席で強烈なインパクトを残してから4年。プロの高い壁に挑み、その都度挫折を味わってきた若武者が、ついに飛躍のシーズンを迎えた。リーグ最下位に沈む千葉ロッテの打線の中で気を吐く加藤選手。今季は文句なしで、キャリアハイの数字を残している。
上武大学出身の加藤選手は、2012年にドラフト4位で千葉ロッテに入団。ルーキーイヤーの2013年に、史上7人目(ルーキーでは史上2人目)となるプロ初打席初球本塁打を放って鮮烈なデビューを飾る。その年のフレッシュオールスターでも先制2ランを決めてMVPに輝き、クライマックスシリーズでも初打席で3ラン。思わず「持っている」と言いたくなる離れ業をやってのけ、プロ初年度からその存在をド派手にアピールした。
2年目には98試合に出場して打率.253を記録するなど、早くも一軍レギュラーの座を手にしつつあると思われた加藤選手。しかし、翌年は攻守で壁に直面し、一軍出場はわずか21試合に終わってしまう。続く2016年も一軍定着を果たすことはできず。スイッチヒッター、俊足、パンチ力、広い守備範囲など、持ち前の能力をなかなか成績に結び付けられずにいた。
そして迎えたプロ5年目となる今季、加藤選手はオープン戦絶好調のチームにあって熾烈な外野手争いを勝ち抜き、自身初となる開幕一軍入りを果たす。5月2日の時点で打率.148という打撃不振に陥り、再調整を余儀なくされた時期こそあったものの、再昇格して以降は上り調子。現在の成績は92試合248打数68安打5本塁打24打点、打率.274で、各部門で自己最高の数字をマークしており、飛躍への足掛かりをつかむシーズンとなっている。
井口選手の引退試合となった9月24日の北海道日本ハム戦では、千葉ロッテの選手全員が井口選手の背番号「6」をつけた。偉大な先輩の番号を背負ったこの試合で1番打者として起用された加藤選手は、5打数4安打と躍動。最後の打席でもきっちりと犠打を決め、鈴木選手の劇的なサヨナラ打へとつなぐ役割を果たしている。
1点を追う9回2死から、起死回生の3ランを放って勝利を呼び込んだ9月14日の北海道日本ハム戦。お立ち台で、「昨日の千隼(佐々木投手)も、今日の関谷も粘り強く投げていたので。ピッチャーが粘っても打線がなかなか援護できないことが今年やっぱりあったので、来年に向けて良い試合ができたんじゃないかと思います」と語っていた加藤選手。
5年間千葉ロッテを率いてきた伊東監督が辞意を表明し、精神的支柱でもあった井口選手も現役を退いた。1つの区切りを迎えたチームにとって、来季はいわば新しい時代の幕開けとなる。過去4年間、自身を突き放した壁を乗り越えた加藤選手は、今年で26歳。まだ若いとはいえ、ただ先輩の背中を追いかけるばかりではなく、チームを引っ張る存在になる自覚も芽生えているようだ。今後、千葉ロッテが新たな明るい時代を築いていくために、「全力プレー」を信条とするこの男の存在を欠くことはできない。
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