東京六大学屈指のスラッガーも初年度は苦戦
東北楽天の岩見雅紀は滋賀県出身。比叡山高校から1浪して慶応大に進んだ。3年生からレギュラーとなり、4年生の2017年、東京六大学記録となる5試合連続本塁打を記録し、一躍注目を浴びた。
大学通算本塁打は史上3位の21本。今も東京六大学の関係者の中には、打者を評価する時に「あの選手は岩見級になるんじゃないか」という人もいる。それくらいのインパクトがあった。
2017年のドラフト2位で東北楽天に入団すると、1軍キャンプでのスタートが内定したが、直前に発熱して2軍スタートとなる。久米島の2軍キャンプでは抜群のパワーを見せた。
187センチ、108キロの恵まれた体。ひげを生やし、悠々と打席に立つ姿には、ファンから「あんな外国人選手いたっけ?」という声も上がったほどだ。
開幕も2軍スタートとなったが、好成績を上げて5月18日に1軍デビュー。しかし、打てども打てども安打が出ず、6月には再び2軍降格となった。9月に再昇格するも初安打は出ず。1年目は12試合24打席24打数0安打14三振2併殺打という成績に終わった。
今季、両リーグで2桁以上打席に立って無安打だった選手を見てみよう。(※は投手)
岩貞祐太(神)42打席36打数0安打 ※
京山将弥(De)25打席23打数0安打 ※
岩見雅紀(楽)24打席24打数0安打
庄司隼人(広)15打席14打数0安打
岡崎太一(神)13打席11打数0安打
荒波翔(De)13打席11打数0安打
熊代聖人(西)10打席9打数0安打
由規(ヤ)10打席10打数0安打 ※
山中浩史(ヤ)10打席8打数0安打 ※
大野雄大(中)10打席7打数0安打 ※
野手では岩見がワーストだった。どんないい打者でも、20~30打席程度は無安打が続くこともある。その点は心配に及ばないが、岩見は新人。24回も打席に立ちながら初安打を記録できなかったのは、憂鬱なことだったろう。
2軍では、113試合338打数96安打14本塁打42打点、打率.284。イースタン・リーグで打率4位に食い込み、安打、本塁打、打点はチームトップという堂々たる成績を残している。
デビュー年無安打の名球会入り打者は多数、野村は11打数無安打
2000本安打を記録した大打者の中には、長嶋茂雄のように1年目から本塁打、打点の2冠王という華々しい成績を残した選手もいるが、全く鳴かず飛ばずの1軍デビューだった選手も割と多い。
〇2000本安打達成者の1軍デビュー年、安打数ワースト10 ※は投手登録
野村克也(1954年)11打席11打数0安打 打率.000
金本知憲(1992年)5打席3打数0安打 打率.000
内川聖一(2001年)2打席2打数0安打 打率.000
加藤秀司(1969年)9打席8打数1安打 打率.125
秋山幸二(1981年)6打席5打数1安打 打率.200
柴田勲(1962年)4打席4打数1安打 打率.250
石井忠徳(1989年)5打席5打数2安打 打率.400 ※
和田一浩(1997年)22打席21打数4安打 打率.190
松原誠(1962年)35打席31打数6安打 打率.194
中村紀洋(1992年)27打席27打数6安打 打率.222
衣笠祥雄(1965年)46打席44打数7安打 打率.159
川上哲治(1938年春)38打席35打数7安打 打率.200 ※
(石井忠徳はのちの石井琢朗)
史上最強捕手と言われた野村克也も、平成年間最多安打の金本知憲も、1年目は無安打だった。そこからスタートして大打者へと上り詰めたのだ。
岩見は最初の契約更改で50万円ダウンとなったと報じられた。しかし、落ち込む必要は全くないだろう。活躍して大選手になれば、初年度「24打席無安打」は格好の話題となる。岩見の来季のリベンジに期待したい。
(広尾晃 / Koh Hiroo)
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