現役引退から即就任「中に入って分かったことも多かった」
就任1年目のシーズンをリーグ5位で終えた千葉ロッテ井口資仁監督。チームスローガン「マクレ」を掲げ、開幕からAクラス入りを争ったが、シーズン終盤に失速してしまった。攻撃面では、埼玉西武に次ぐ12球団2位の124盗塁を記録した一方で、本塁打数は12球団最少の78本。投手陣は、先発がクオリティスタート(QS、6回以上を投げて自責3以下)率46.15%と低く、救援投手に負担をかけた。収穫と課題が見えた2018シーズンを終え、井口監督は何を感じ、何を思うのか。Full-Countの独占インタビューで明かした監督の本音を全4回でお届けする第1弾だ。
――1年を戦い終えて、率直な感想を教えて下さい。
「やっぱり夏以降の失速っていうのがね。怪我人が出て、そこでやっぱり層の厚さの必要性を感じたシーズンでしたね」
――監督1年目。まずは1シーズンを戦い、勝利を目指す中でも、戦力の見極めを図る1年だったのでは。
「去年までフルで(試合に)出た選手がほとんどいない中で、今年はいろんなポジションに当てはめていって、いい時も悪い時も1年間乗り切らせるというのが目標だった。そこで取っ替えひっかえしていたら、元も子もない。やっぱり『この選手だ』と思った選手は1年間ちゃんとレギュラーとして使い続けて、それでどういう風に彼らが感じるかっていうのを、今年は求めていました。
そういう意味では、今年は井上(晴哉)だったり、中村(奨吾)だったり、藤岡(裕大)だったり、田村(龍弘)もそう。全試合に出て、しっかり機能した。そこに、ベテランとか中堅、例えば(鈴木)大地だったりがいて……。今までパズルのピースがほとんどなかった状態だったのが、今季を終えてピースとしてしっかりハマるようになってきた。これからの球団のドラフトを含めた戦略だったり、3年後、5年後に球団がどうしていこうっていう、ある程度のスタートラインができたっていう1年でしたね」
「チームが持つ戦力によって、戦い方は変わってくる」
――シーズンを通じて選手を使い続け、それぞれに長所や課題が見えたと思います。
「こちらも見えたし、選手本人たちも見えたものがあると思います。3年後、5年後にどの選手が入ってくるのかを、こっちも探りながらでしたが、ある程度センターラインはできてきた。ただ、荻野(貴司)の故障が非常に大きくて、そこから外野がガタガタと……。やっぱり外野が今年最大の補強点ですね。あとは中継ぎも後半みんな、しんどかった。その辺も日本人で補うのか、外国人で補うのか。いろんな課題が明確になりました」
――大砲がいない中、機動力を生かした攻撃で戦った。手応えを感じたのでは?
「チームが持つ戦力によって、戦い方は変わってくると思うんです。それが僕の方針とかではなくて、この戦力では足を使わなければ勝てないと思った。目標の140盗塁には達しなかったですけど、いい形でどんどん積極的にみんないってくれたし、そこはチーム全体として非常にプラスになったんじゃないかと。もちろん、失敗もいっぱいありましたけど、それは来シーズンの成功につなげればいい。自分たちの判断力が問われるところ。みんな1年、いい勉強をしたんじゃないかと思います」
――就任以来、1軍と2軍で一貫した信念や育成方針を貫きました。
「1軍と2軍が組織として統一されていた。首脳陣でのコミュニケーションは良く取れていたし、選手に対するアプローチの仕方も一緒だったし。我々としては風通しがいいというか、すべて見える状態になっていましたね。あとは、若い選手を育成して勝つ育成プランという点で、きっちりできてきたのかな、と」
近い将来を見据えた育成プランの確立「2軍監督に感謝したいと思います」
――元々、高額フリーエージェント選手を獲得するのではなく、若手を育てるチーム方針ですよね。
「そのはずなんですが……(笑)。自分が選手だった頃には見えず、中(首脳陣)に入って分かったことも多かった。育成プランを立て直すという意味では、今岡(真訪)2軍監督がしっかり2軍を見てくれて、その存在は大きかったと思います。逆に、選手にとっては、ちょっと縛られているように感じる部分もあるかな、と思うけど、それは今までできていなかった部分。2軍監督に感謝したいと思います」
――若手選手からは、去年の秋季キャンプから監督の求めるものが変わらないから目標が立てやすい、という声も聞こえました。
「1軍と2軍が統一されていなかったのは、選手の立場からは見えなかった部分。スタートの年でしたけど、いいコミュニケーションを取りながらできたと思います」
――以前、選手、監督・コーチ、フロントオフィスの3者が同じ方向を見ないと、チームは強くなれないと仰有っていました。1年を終えて、3者の意識がまとまりつつあるのでは。
「そうですね。会社も本腰を上げてくれて、今回の丸(佳浩)選手も本気で取りにいってくれています。そういう意味では、球団自体も勝ちたいという思いが強くなってきているんじゃないかと。同時に、それだけ現場に期待してもらっているんで、何とか早いうちに、その期待に応えなければならないと思います」
(佐藤直子 / Naoko Sato)
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