チームOPSは12球団ワーストの貧打…データで今季を振り返る【オリックス編】

Full-Count

2018.11.24(土) 11:49

オリックスの得点と失点の移動平均グラフ※写真提供:Full-Count
オリックスの得点と失点の移動平均グラフ※写真提供:Full-Count

1試合平均得点が平均失点を下回る

 3位と8ゲーム差の4位、クライマックスシリーズ進出争いに加わることもなく、4年連続のBクラスに終わったオリックスバファローズ。今年のペナントレースにおける得点と失点の移動平均を使って、チームがペナントレースのどこでどのような波に乗れたかを検証してみます。移動平均とは大きく変動する時系列データの大まかな傾向を読み取るための統計指標です。

 グラフでは9試合ごとの得点と失点の移動平均の推移を折れ線で示し、

得点>失点の期間はレッドゾーン,
失点>得点の期間はブルーゾーン

 として表しています。

 例年通りと言ってしまえばそれまでなのですが、好調と不調の波が交互に来て、いい時と悪い時がはっきり別れており、勝率が大きく伸びない様子が伺えます。

 今季のオリックスですが、投手陣は好調でした。防御率3.69は12球団トップ、1試合平均失点は唯一の3点台(3.95)、WHIP1.25、クオリティスタート(QS=先発投手が6イニング以上を投げ、3自責点以内に抑える)率52.4%も12球団1位です。

 グラフでも失点の移動平均が5点を超えることなく低い水準で推移していることが分かります。ただチームOPS.673は12球団ワースト。1試合平均得点が3.76と平均失点を下回る状況では、ピタゴリアン期待値として推定される勝率.480程度の勝率しか期待できないのは当然のことでしょう(実際の勝率は.471)。

戦線離脱が多く、メンバーを固定しきれない打線

 攻撃陣は主力と期待された選手の離脱が多く、戦術的な意味合いで変えているというよりも、オーダーを変えることを余儀なくされているという状況だったように見えます。それは各打順のスタメン最多起用選手の試合数を見ると明らかで、スタメン出場が50試合以下の打順が、リーグ最多の6か所存在しているというデータにも表れています。

○各打順スタメン最多起用選手
1番 宗佑磨 48試合
2番 福田周平 49試合
3番 ロメロ 63試合
4番 吉田正尚 85試合
5番 中島宏之 39試合
6番 T-岡田 29試合
7番 T-岡田 40試合
8番 安達了一 46試合
9番 若月健矢 92試合

 そのため打者の規定打席に到達した選手は、吉田正尚、ロメロ、安達了一のわずか3人でした。

 また1、2番を任された打者のデータを見ると

1番 打率.228 出塁率.303 OPS.659
2番 打率.222 出塁率.289 OPS.571

 と芳しくなく、3番ロメロや4番吉田正尚の前にチャンスメイクができていない状況もうかがえます。初回の得点確率も27%しかなく、試合序盤でのリードができなければ、いくら投手陣が優秀でもそのプレッシャーはかなり大きなものになることでしょう。

オリックス、4月の救援投手登板表※写真提供:Full-Count
オリックス、4月の救援投手登板表※写真提供:Full-Count

 先に述べたように優秀な数値を残してきた投手陣ではあるのですが、投手の運用方法については腑に落ちない部分も感じられます。4月4日に1軍に登録された山崎福也は5日、7日と登板した後、8日から29日まで22日連続で登板なしの状況が続き、そのまま30日に登録抹消されました。

 かと思えば、8月には山田修義がNPBタイ記録の月間18試合の登板を行なっています。

オリックス、8月の救援投手登板表※写真提供:Full-Count
オリックス、8月の救援投手登板表※写真提供:Full-Count

 特定の投手への負担が大きくなる運用は、次年度以降に影響を及ぼしかねません。

オリックスの各ポジションごとの得点力グラフ※写真提供:Full-Count
オリックスの各ポジションごとの得点力グラフ※写真提供:Full-Count

野手は吉田正のみプラス評価 投手陣は先発、救援とも大きくプラス

 次に、オリックスの各ポジションの得点力が両リーグ平均に比べてどれだけ優れているか(もしくは劣っているか)をグラフで示して見ました。そして、その弱点をドラフトでどのように補って見たのかを検証してみます。

 グラフは、野手はポジションごとのwRAA(平均的な打者が同じ打席数立った場合に比べて増やした得点を示す指標)、投手はRSAA(特定の投手が登板時に平均的な投手に比べてどの程度失点を防いでいるかを示す指標)を表しており、赤ならプラスで平均より高く、青ならマイナスで平均より低いことになります。

 攻撃では、レフト吉田正尚の貢献のみプラス評価です。吉田正は自身初のシーズン全試合出場を果たし、打率.321(リーグ4位)、本塁打26(リーグ7位)、OPS.956(リーグ3位)と一人気を吐き、6月からは4番に定着しました。また前述の通り、投手は先発、救援ともに大きなプラス評価となっています。

 ドラフトでは全ポジションマイナス評価となっている内野を埋めるべく、4人の内野手を指名しました。小園海斗はくじで外してしまいましたが、1位指名の太田椋は俊足強肩強打の遊撃手として高く評価されてきた逸材です。また太田椋の父は元プロ野球選手で、現在はオリックスで打撃投手を務める太田暁氏。父の投げる球を息子が打つという練習光景が見られる可能性もあるでしょう。

 投手は3人すべて社会人を指名しています。即戦力として期待の指名でしょう。というのも、今年の開幕投手を務め、RSAAが10でチーム1位とオリックス先発陣の核となっていた西勇輝がFA移籍する可能性が濃厚とされているからです。

 また、2014年のパ・リーグMVPで、2008年からオリックス先発投手陣の屋台骨となって活躍してきた金子千尋も、年俸の大幅ダウン提示を不服として球団に自由契約を申し入れました。確かに2015年以降の成績から判断すれば球団提示の金額は致し方ないにしても、これまでの球団に対する貢献を考慮しない交渉態度は、事実上の戦力外通告と言っても過言ではないでしょう。

 さらには、開幕は出遅れたものの、5番として最多出場の中島宏之にも大幅減額を提示したものの、こちらも自由契約で退団し、巨人への移籍が決まりました。FA宣言していた浅村栄斗がオリックスとの交渉に至らなかったのは、この件が影響したとの見方もあります。ついには、バファローズを応援してきたPontaカードのイメージキャラクター・ポンタもツイッターでFA宣言をする始末。

 現時点では、野手の大型補強が見受けられませんが、来季は、外野では22歳の宗佑磨や西村凌、内野では26歳の福田周平や19歳の廣澤伸哉といったプロスペクトの底上げに期待をかけることになるでしょう。

(鳥越規央 / Norio Torigoe)

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、統計学をベースに、テレビ番組の監修や、「AKB48選抜じゃんけん大会」の組み合わせ(2012年、2013年)などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。
文化放送「ライオンズナイター(Lプロ)」出演
千葉ロッテマリーンズ「データで楽しむ野球観戦」イベント開催中

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