若い力で上昇、そして失速も… 「試合巧者」の底力を見せた北海道日本ハムの1年【シーズン総括】

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2018.11.22(木) 16:00

北海道日本ハムファイターズ・栗山英樹監督(C)PLM
北海道日本ハムファイターズ・栗山英樹監督(C)PLM

 2017年のオフシーズン、北海道日本ハムは激動の中にあった。投打で圧倒的な存在感を示していた大谷選手(現エンゼルス)を筆頭に、守護神の増井投手(現オリックス)、リリーフのマーティン投手(現レンジャーズ)、主力捕手の大野選手(現中日)と、複数の主力がチームを離れたことで大幅な改革を余儀なくされたのだ。

 当然、今シーズンの北海道日本ハムをBクラスに予想する声は多かった。しかし、その前評判を跳ね返すかのように、選手たちは春から躍動する。今季スタートダッシュを決めた埼玉西武からも大きく離されることなく、長きにわたってAクラスをキープし続けた。

下馬評を覆し、優勝も見えたシーズン しかし…

 上沢投手が7月末までに10勝を挙げるブレイクを果たし、エース候補に名乗りを上げる。新加入のマルティネス投手はシーズンを通じてローテーションを守り続け、6月中旬までに7勝を記録。同じく新助っ人のトンキン投手も8月17日の時点で防御率1点台と安定した投球を続け、中継ぎ・抑えとしてチームを支えた。

 野手陣では、4番の中田選手がチーム最多26回の殊勲安打を放つなど、昨季の不振から脱却した姿を見せ付け、FA権を行使して古巣復帰した鶴岡選手がチーム最多の89試合でマスクをかぶった。3度目の盗塁王に輝いた西川選手や、リーグ3位となる打率.323、同2位の出塁率.427を記録した近藤選手もそれぞれの持ち味を発揮し、大田選手も2カ月近くの離脱がありながら「恐怖の2番打者」として14本塁打、出塁率.350。高い出塁率と足、長打力を備える生産性の高い上位打線は、対戦相手の脅威となった。

 雲行きが怪しくなったのは、8月に入ってからだった。首位の埼玉西武を追いかけ続け、3連勝すれば首位奪取という状況で迎えた3日からの天王山。その重要な初戦では、2点をリードしたまま終盤へ突入したが、守備の乱れで痛恨の逆転負け。これをきっかけに、シーズン全体の流れが変わり始めてしまう。

 悪い流れを止められずに8月を10勝13敗2分と負け越すと、8月2日時点で7ゲーム差をつけていた福岡ソフトバンクに、2位の座を明け渡す。9月に入ってからも大きく浮上することはできないまま、最終的にはリーグ3位に終わり、「パーソル CS パ」ファーストステージも1勝2敗で福岡ソフトバンクに敗れた。

新陳代謝の活発さと試合運びの巧さがチームの強み

 シーズン開幕前の評価を考えれば、Aクラス入りは大健闘だろう。しかし優勝争いを繰り広げた序盤戦の戦いぶりを思えば、終盤の失速ぶりは惜しまれるところだ。

 チーム全体にブレーキがかかってしまった要因はいくつも考えられる。まずは主力選手たちのシーズン終盤の不調だ。上沢投手は8月に入ってから勝ち星に見放されて、最後の9先発でわずか1勝止まり。10勝目を挙げた時点で2.43だった防御率は8月に4.50、9月に5.40と打ち込まれた。同じくマルティネス投手も後半戦は援護に恵まれず、7月以降は12先発で3勝6敗。それでも来日1年目から10勝11敗、防御率3.51と好成績を残した。

 また、有原投手、高梨投手、加藤投手ら、主力の3投手ともが防御率4.50台に終わり、トンキン投手が終盤戦に深刻な不調に陥ったことも痛手だった。トンキン投手は8月中旬まで安定していたが、18日の埼玉西武との首位攻防戦で8回に3失点を喫して負け投手になるなど、月間防御率7.71と背信の投球が続く。「パーソル CS パ」ファーストステージ第3戦でも、1点を追う6回に登板すると、2者連続本塁打を被弾。1死も取れずにノックアウトされ、後味の悪い形で来日1年目を終えた。

 ただ、育成には定評があり、新陳代謝が活発なチームだ。いずれはチームを背負うだろう若手の出現が期待され、幸い、現時点でも将来有望な選手も少なくない。二塁のレギュラー獲得が見込まれる渡邉選手や、正捕手候補として86試合に出場し、7本塁打とパンチ力を披露した清水選手、シーズンで低打率にあえいだもののポストシーズン2本塁打を放った横尾選手といった面々は、近い将来の主力として大きな期待がかけられている。

 また、ゴールデンルーキーの清宮選手、堀投手などポテンシャルを評価される選手たちが一軍で経験を積んだ。まだ22歳ながら抑えに抜擢された石川直投手も、過酷な実戦の中で飛躍的な成長を遂げており、来季はそれに続く存在が出てくる可能性も高いだろう。

 多くの主力を失いながらAクラスに食らい付き、単純な選手層では測れない強豪チームとしての「底力」を感じさせた北海道日本ハム。来季も「らしい」戦い方でシーズンを戦い抜き、北の大地に3年ぶりの歓喜をもたらすことができるだろうか。

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パ・リーグ インサイト 望月遼太

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