今季の東北楽天はシーズン序盤でつまずいたが、若い選手が一定の出場機会を得たのは来季以降への収穫だ。新人王候補の田中和基選手を筆頭に、将来の戦力となりそうな若手が台頭した。投打共に核となる選手がはっきりとしているだけに、脇を固められる存在は1人でも多く必要とされるだろう。その候補者たちは今季、二軍の本拠地・ウェルファムフーズ森林どりスタジアム泉を主戦場に汗を流した。
ファームシステムの充実が、チームの将来へ向けた布石となることは言うまでもない。一軍の本拠地が数多くの話題を提供する東北楽天も例外ではなく、二軍の運営にも工夫を施しながら、選手の環境へ投資することで、遠くない未来でのリターンを図っている。
今季、東北楽天に所属した選手は81人。球団創設1年目の2005年が69人で、以降も70人ほどのまま推移してきたが、2015年からは80人前後まで増えた。一軍はベンチ入りメンバーを28人登録できるが、今季の東北楽天であれば50人ほどが二軍に帯同することになる。
試合数が少ない二軍にもレギュラーがおり、さらに一軍の主力級が調整で合流すれば、全員が満足して出場するのは難しい。そのため東北楽天は二軍の非公式戦を増やしている。今季は巨人、福岡ソフトバンクなどの三軍やアマチュアとも35試合戦った。今後も選手育成の場には、様々なアイデアが検討されているようだ。
同球場はもともと、06年から練習場として使用されていた施設だったが、16年から二軍の試合を開催。過去2年は約20試合ほどだったが、今季は52試合と大幅に増やした。これに伴い、座席も拡充され、現在は高さ5メートルほどのスタンド席があり、グラウンド全体を望むことができる。
「見られている意識があることで選手の行動が変わる」と語るのは、投手として広島に4年間在籍し、現在は楽天野球団の広報を務める伊東昂大氏だ。客席だけではなく、ファンの動線からは室内練習場やブルペンの様子が見学可能で、目の前を選手が歩く。まだ発展途上にある球場だけに、ファームの魅力を語る際の枕詞である「ファンと選手の距離が近い」がより強く実感できる。
今年6月には、トレーニングルームが新設された。最新の用具がそろえられたことで、寮に住む選手や二軍でプレーする選手だけではなく、一軍の選手が訪れることもあるという。チーム統括本部育成部の水野芳樹氏は「天井も高くて広いトレーニングルームに改修されたことで、選手からも『モチベーションが上がる』、『トレーニングに行きたくなる』という声も聞かれます」と語る。
今オフ、東北楽天は平石洋介監督のもとで指導するコーチ陣を固め、ドラフトでは新たに10人の新戦力を迎え入れた。この地から、来季はどのような戦力が羽ばたくだろうか。
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