台湾の国際親善試合で井口資仁監督が挙げた意外な名前。「必死にアピールしている姿が見てとれた」

パ・リーグ インサイト マリーンズ球団広報 梶原紀章

2018.11.10(土) 11:00

【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】
【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

 投打に輝きを見せ、初戦は終わった。「桃園最強Power Series 2018」日台バトルカップの名の下、台湾は桃園国際棒球場で行われた台湾王者・Lamigoモンキーズとの3連戦初戦。千葉ロッテは6対1で勝利した。この試合のMVPに選ばれたのは先発した二木康太投手。5回を投げて被安打2、1失点、7奪三振の好投で台湾のファンにインパクトを与えた。

「5番・サード」でスタメン出場したルーキーの安田尚憲内野手も2安打2打点。試合後には日台のメディアから取材攻勢を受けた。たくさんの選手が活躍し、首脳陣にアピールをした交流試合初戦。井口資仁監督の口から最初に出てきた選手の名前は、記者会見でマスコミが何度も口にした二木投手でも安田選手でもなかった。

「今日の試合で一番、うれしかったのは香月(一也)の猛打賞と島(孝明)のピッチングかな。香月は必死にアピールしている姿が見てとれた。島は去年、あれだけ投球に苦しんでいた中で、こうやってしっかりと投げられるようになった。うれしかったね」

「9番・セカンド」でスタメン出場をした香月選手は3安打で猛打賞と気を吐いた。この3連戦にかけるつもりで台湾入りをした。親善試合とはいえ、この男にとっては未来をかけた戦場だ。一軍の首脳陣が見守る中での試合。絶好の機会にアピールをしようと必死になる姿が指揮官の目に留まった。

「もう来季に向けた戦いは始まっている。この3連戦も来季に向けていろいろなことを試す。そして見据える。来季に向けたスタート。その中で選ばれた選手たちにはいいアピールをしてもらいたいと思っている」

 試合前に将が語ったメッセージ通りの活躍だった。思えば香月選手は今季、スタートからつまずいた。春季キャンプではインフルエンザA型と診断され離脱。復帰後の3月には左手親指靭帯断裂形成手術を受け全治3~4ヵ月と診断された。井口マリーンズとして新しくスタートした今季の一軍定着を目指した一年は、いきなりとん挫した。

 それでも6月8日、イースタン・リーグの東北楽天戦(ロッテ浦和)で復帰すると二軍で今季、12本塁打。守っても本職のサードだけではなく、出場機会を増やすためセカンドにも挑戦。一塁、外野を含む4ポジションを守り分ける器用さを見せた。

 今季は残念ながら一軍昇格の機会に恵まれなかったが、指揮官はその悔しさを痛いほど感じ取っていた。秋季キャンプでの強烈なスイングには魂がこもっていた。そして迎えたこの日の一軍首脳陣の前での実戦。チームで唯一の猛打賞で強烈アピール。その心意気が何よりもうれしかった。

 投手では2年目の島投手の名前を挙げた。ルーキーイヤーの昨年は二軍で3試合、1.2回を投げて8失点で防御率は43.20。フォームに悩み、制球難に苦しんだ。一度、すべてをリセットして一から取り組み直した今年。春季キャンプではキャッチボールとシャドーピッチングなどを繰り返し、原点回帰した。

 長らく実戦からも遠ざかっていたが、今季は二軍で11試合に登板した。11.2回を投げて防御率10.80と数字には出なかったが、威力あるストレートにはどこまでも広がる未来が見えた。

 そんな苦難の日々を乗り越えてのマウンド。7回に4番手として登板すると、1イニングを被安打1、無失点で抑えた。最速146キロのストレートは一塁側ベンチで見守る井口監督にも威力あるものに感じ取れた。何よりもコントロールに苦しみ、真っ暗闇の中から駆け上がってきた若者の堂々たるマウンドさばきがうれしかった。3年目となる来季に飛躍の予感を感じ取った。

「みんなそれぞれが秋季キャンプの成果を見せてくれたと思う。あと2試合もしっかりと見させてもらう」

 井口監督は充実した表情で帰りのバスまでの長い廊下を歩いた。これで台湾一のレベルを誇るLamigoとの交流試合は通算で6勝4敗。敵地での親善試合とはいえ負けるつもりはない。残り2試合も貪欲なアピール合戦が繰り広げられる。

【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】
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