私たちはなぜチアに? シーズンを駆け抜けたパ6球団チアの思い

高島三幸

2018.11.9(金) 11:00

(左から)「ファイターズガール」畠山茉央さん、「東北ゴールデンエンジェルス」KANOKOさん、「bluelegends」EMIKAさん、「M☆Splash!!」ASUKAさん、「BsGirls」CHALさん、「ハニーズ」NAYONさん
(左から)「ファイターズガール」畠山茉央さん、「東北ゴールデンエンジェルス」KANOKOさん、「bluelegends」EMIKAさん、「M☆Splash!!」ASUKAさん、「BsGirls」CHALさん、「ハニーズ」NAYONさん

 「SMBC 日本シリーズ2018」は、福岡ソフトバンクがセ・リーグ覇者の広島を4勝1敗1分で下し、2年連続9度目の日本一に輝いた。そんなシーズンを、さまざまな思いを抱えながら、選手たちと一緒に頂点を目指して駆け抜けた女性たちがいる。それが、各球団のチアリーダーたちだ。

 チアリーディングチームは、1993年頃からドーム球場を本拠地とする球団で相次いで創設され、現在は広島を除く11球団に存在する。一言でチアリーディングチームといっても、その特徴やカラーはさまざまで、仕事は試合の合間のダンスパフォーマンスだけでなく、多岐に渡るという。そんなパ・リーグのチアリーディングチームでは、どのような女性たちが、どのような思いで、どのような活動をしているのか。各球団のチアリーダーに話を聞いてみた。

チアリーダーの仕事の幅の広さに驚く

 『チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話』など、近年映画やドラマの影響で注目されたチアリーダーだが、球団のチアリーディングチームに入団しようと思ったきっかけは何だろうか。「東北ゴールデンエンジェルス」で活躍するKANOKOさんは、学生時代にチアリーディング部で活動し、“好き”を仕事にしたケースだ。

 「仕事としてチアリーダーを続けるには、プロ野球のチームが一番活動の場が多いと考えました。学生時代に多くのスポーツの応援に出向きましたが、中でも最も野球の応援が楽しかったです。私自身、秋田県出身なので、東北唯一のプロ野球団である楽天イーグルスのチアチームを志望するのは自然の流れでした」と語る。しかし、念願のチアリーダーの仕事に就いてみると、想像していた以上に、驚くことが多かったという。

「学生時代はチアだけでなく、バトントワリングなどの経験もありましたが、入ってみるとバレエやヒップホップ、ジャズダンスなどのさまざまなジャンルのダンスの能力が求められました。最初の頃は、先輩たちについていくのが精一杯で、無我夢中で覚えていましたね。仕事はパフォーマンスだけではなく、MCの能力も求められ、チアリーダーを仕事にするというのは、こういうことかと感じました」

 入団1年目は、3カ月間で開幕までに必要な全てのダンスを覚えるのはもちろん、MCのための話し方をマスターしたり、チアリーダーを育成するスクールのインストラクターになるためのトレーニングを受けたりと、慌ただしい日々を送った。慣れるまでは時間がかかったというが、一方でKANOKOさんの中に少しずつプロ意識が芽生えていったという。

「私が入団してすぐに東日本大震災が起こり、プロのチアリーダーとしてはじめての活動は被災地訪問でした。そういった活動の中でチアリーダーとは何かということをゼロから考える期間を過ごしました。与えられた仕事をただこなすのではなく、メンバー同士アイデアを出すなどしてコミュニケーションを取り能動的に動くようになりました」

CHALさん率いる「BsGirls」
CHALさん率いる「BsGirls」

チアの経験がゼロでも、この仕事が生きがいに

 チアリーダーの経験が全くなく、プロ野球のチアリーディングチームに入った女性もいる。オリックスの「BsGirls」でリーダーを務めるCHALさんだ。それまで、歌とダンスを学んでいた彼女は、ダンス&ヴォーカルユニットとして活躍するという夢を抱いていた。そんなときに目にしたのが、オリックスのチアリーディングチームがavexとコラボレーションしてダンス&ヴォーカルユニットに生まれ変わるということと、そのオーディションが開催されるという情報だった。

 夢が叶うチャンスだと考えたCHALさんは、迷うことなくオーディションを受け、その結果、約50倍という狭き門を見事に突破。念願のダンス&ヴォーカルユニットの一員となった。

 しかし、チアの経験がないCHALさんにとって、最初は戸惑うことばかり。「立ち姿やポーズまで、以前のチアグループから続いていた細かいルールがあり、驚きました。でも、ダンス&ヴォーカルユニットとして生まれ変わるためにどうすればいいか、前チームから継続して活動するメンバーと話し合いを重ね、新しいユニットの形をみんなで作りあげていったことが、自分を成長させてくれました」と振り返る。

 初心者だったCHALさんも、今やリーダーとしてチームを率いる存在となり、自分たちで作詞を手がけたオリジナル楽曲で観客を楽しませている。そんな日々を過ごしているうちに、パフォーマンスを仕事にしたいという入団当初の彼女の思いは、いつしか自分たちのパフォーマンスで選手とファンをつなげる存在になりたいという思いに変わっていったという。

「活動を通じて球団を深く知り、選手たちが一生懸命に戦う姿や、そんな選手を応援するファンの皆さんの諦めない気持ちに心打たれました。このような仕事につけたことを幸せに思い、選手と一緒に戦いながら、チームが優勝することが今の夢です!」。

 同じように、福岡ソフトバンクのオフィシャルダンス&パフォーマンスチーム「ハニーズ」に所属するNAYONさんも、以前は全く野球に興味は無かったが、通っていたダンススタジオで練習している「ハニーズ」を見て、チアという存在を知った。そこから野球にも興味が沸き、野球が好きになったという。「自身がチアリーダーとして活動することで、チアを通して野球やホークスに興味をもってくれる方が少しでも増えたらうれしいです」と話す。

少女たちの憧れ「ファイターズガール」
少女たちの憧れ「ファイターズガール」

小学校からの夢が…

 球団のチアリーディングチームに入ることそのものが、幼い頃からの夢だった女性もいる。北海道日本ハムのチアリーディングチーム「ファイターズガール」の畠山茉央さんだ。小学1年生の時に、ファンクラブの抽選で、母親が熱烈なファンだったという「ファイターズガール」と踊る機会があり、かっこいいダンス姿に見惚れ、優しく自身に接してくれた「ファイターズガール」の“お姉さん”に憧れを抱くようになった。

 その日から「ファイターズガール」になることを夢見てダンスを習い、受験資格がなかった中学生の頃から応募書類を送り続け、応募資格を得た高校1年の時に念願の合格切符を手にした。長年の夢がかない、両親はもちろん、彼女の夢を応援してきた周りの友人たちも一緒になって喜んでくれたという。

 高校時代は球団の規則でデーゲームしか出演できなかった畠山さんだが、全てのナイターに足を運んで観戦し、先輩たちのパフォーマンスや応援する姿を見ながら、自主練習を重ねた。

「最初は満足いくダンスができず、その悔しさから必死に練習して、先生に声をかけてチェックしてもらう日々の繰り返しでした。あの頃はダンスを上達させることで頭がいっぱいでしたが、今ではパフォーマンスの向上や選手の応援はもちろん、ファンの皆さんが笑顔になるようにおもてなしの心で接したいという気持ちが大きくなりました」。

 来場者にドームについて何を聞かれても答えられるように、ドームのどこに何があるかといった位置関係をすべて頭に入れているという。

 千葉ロッテ「M☆Splash!!」を率いるリーダーのASUKAさんも、幼い頃に地元千葉のイベントで踊っていた「M☆Splash!!」の姿を見てかっこいいと憧れを抱き、「M☆Splash!!」を育成するダンススクールに入った。先輩たちの踊りを見て指導を受けながら、いつかグラウンドで立って踊りたいと様々なダンスを必死で覚えて、その夢をかなえたという。

 このようにチアガールになりたいと思った動機やきっかけは、さまざま。しかし、チアを続けるにつれ、野球への愛が大きくなり、選手やファンのために応援していきたいという思いは共通する。後編では、具体的な仕事の内容ややりがい、どんな仲間と一緒に活動したいかについて聞いた。

ASUKAさん率いる「M☆Splash!!」
ASUKAさん率いる「M☆Splash!!」

チアリーディングチーム新メンバーオーディション要項

北海道日本ハム「ファイターズガール」
東北楽天「東北ゴールデンエンジェルス」
埼玉西武「bluelegends」
千葉ロッテ「M☆Splash!!」
オリックス「BsGirls」
福岡ソフトバンク「ハニーズ」

記事提供:

高島三幸

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