目指すは精神的支柱の「冷静」なエース~オリックス・西勇輝インタビュー~

パ・リーグ インサイト 岡田真理

2016.2.15(月) 00:01

オリックス・バファローズ 西勇輝投手 ※球団提供
オリックス・バファローズ 西勇輝投手 ※球団提供

一年を通して投げ続ける体力はだいぶついてきたが、ここぞという時にパワーが出せない。8年目のシーズンを前にそう感じていた西勇輝投手は、昨年のプレミア12でチームメイトとなった巨人・菅野智之投手にオフの合同自主トレを志願した。

「菅野さんは大一番で強いピッチャー。ランニング、筋力トレーニング、体幹メニューすべて、今まで僕がやってきたものと質も量もまったく違ったのでびっくりしました。それと同時に、これをやっていけばまだまだ自分も成長できると確信しました」

その甲斐もあり、ベストコンディションで宮崎入り。今回のキャンプでは「一日も無駄にしていない」と実感している。「オフにやってきたことが、キャンプでも継続してできています。結果がどうなるにせよ、やってきたことに間違いはないと自信を持ってやっていけそうです」

プロ入りした当時、「自分はあまり注目されていない」と感じていた。そのせいか弱気になり、なかなか自分からアピールすることができなかった。1年目のシーズンを終えた頃、「このままではいけない」と猛省。自分を変えるために、目標をきちんと体系化して紙に書き出すことを始めた。

「プロ野球選手というのは、この先何年できるか分からない仕事。改めてそういう危機感が生まれたんです。結果を出すためには、運も味方につけなくてはならない。それも実力のうちかな、と。そのために、やって損はないと思って始めました」

何歳までにこれをクリアして、何歳までにこれだけ稼ぐ。目指す成績と年俸は、具体的な数字で紙に書き出した。それを1年後、2年後はもちろん、10年後、20年後までシミュレーションする。シーズンに入ったら、1ケ月ごとの短期目標も忘れない。

「そのくらい具体的じゃないと、プロフェッショナルとして立ち向かえません。ただ一軍で活躍したいという漠然とした目標では、ここぞという時に力が出ないですから。プロ1年目のオフに立てた目標は、当時の僕からすると現実離れしたものが多かった。でも、少しずつそこに近づいています。あの頃は現実的じゃなかった数字にも、今はちゃんと届いています」

チームには、西投手にとって「エースの理想形」である金子千尋投手がいる。「金子さんは練習を抜いてやることがない。とてもストイックです。だから、何も言わなくても周りが自然とついてくる。金子さんが投げて負けたら仕方ないと思わせるような存在です」

西投手の記憶に強く残っているのは、2014年5月31日の巨人戦。金子千尋投手がノーヒットノーランを逃した試合だ。「あの時の金子さんの冷静なリアクション。ああいうところが金子さんらしい。そのあたり、やはりエースだなと感じました」

昨シーズン金子千尋投手が戦線離脱した時、精神的支柱を失ったチームが迷走するのを誰も止めることができなかった。「僕はピッチャーとしてチームを引っ張ることができなかった。ああいう時に引っ張っていけるようにならないといけない。そのために、自分はもっと冷静さを習得しなくてはと思っています」

自分の性格を、「一喜一憂が激しい」と分析している。その背景には、プロ2年目に発症した顔面神経麻痺もあった。

「病気のせいにはしたくない。でも、ああいうこともあって、自分にはちょっと冷静さが欠けているかなと思うことがあるんです。気を付けているのは、試合以外の時。私生活や練習でも自分をできるだけ客観視して、普段から冷静でいられるように心掛けています」

体系化された目標と、ここぞという時のパワー。そして冷静さ。西投手は、エースに必要な武器を次々と得て進化しようとしている。彼がオリックスの精神的支柱になる日は、そう遠くないかもしれない。

文・岡田真理

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