2018年ドラフト指名選手に見る各球団の補強方針 変えた球団、変わらぬ球団

Full-Count

2018.10.27(土) 09:39

根尾昂、藤原恭大、小園海斗(左から)の高校生3人に計11球団の最初の指名が集中した※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史、編集部)
根尾昂、藤原恭大、小園海斗(左から)の高校生3人に計11球団の最初の指名が集中した※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史、編集部)

高校生中心に振った巨人、くじ引き以外は即戦力中心で変わらぬ横浜DeNA

 2018年のドラフト会議が25日に行われた。高校、大学、社会人などから支配下83名、育成21名が指名を受けたが、根尾昂、藤原恭大、小園海斗の高校生野手3人に計11球団の最初の指名が集中するという異例の展開。各球団が今年どのような戦略を取ったのか、近年の指名傾向から外れたのか変えなかったのかを検証してみる。

◯広島 高校生5人、大学生2人(育成1人)、その他0人

 育成型の球団として知られるが、高校生屈指の遊撃手・小園を引き当てたことで2位には大学生の島内颯太郎を即戦力として指名。3位林晃汰も強打の内野手で、高校では主に三塁手。三塁は12月で24歳の西川龍馬が今年主に守ったが、17失策とやや守備に難があり、小園も田中広輔の後継者となりうる素材で世代交代への対策は怠りない。4位以下も伸びしろのある高校生が3人。育成主体の方針に変わりない指名だ。

◯東京ヤクルト 高校生3人、大学生3人、社会人2人、その他0人(育成2人)

 バランスよく指名する傾向は変わらず。根尾、上茶谷を外して1位指名したのは大学生の清水昇投手だった。2位も大学生の中山翔太外野手で、根尾を外してからは上茶谷を含め即戦力重視の上位指名。3位の市川悠太投手は侍ジャパンU-18で根尾、藤原、小園のチームメートで昨年の神宮大会高校の部優勝投手。神宮が本拠地の東京ヤクルトに指名されたのも何かの縁かも知れない。

◯巨人 高校生5人(育成4人)、大学生1人

 根尾、大学生一番人気の辰己涼介外野手を外して即戦力野手にシフトするかと思いきや、大学生の左投手である高橋優貴投手を1位指名。2位以下は育成含め9人が高校生という思い切った指名をした。ポジション別では主力野手、とりわけ外野手の高齢化対策を行うと思われたが、外野手は高校生の育成1位・山下航汰だけ。投手が支配下4人、育成2人、内野手が支配下2人、育成1人。支配下指名3位以下の高校生選手はいずれも大型選手で4年、5年後は期待できるが、来年は現有戦力とFA、外国人に頼ることになりそう。3年連続V逸の状況で、原監督が若手の成長を待てるかどうか。

◯横浜DeNA 高校生2人(育成1人)、大学生2人、社会人1人、その他1人

 小園を外したが、すかさず大学球界屈指の右腕・上茶谷を指名して東京ヤクルトとの競合を制した。2位も大学生の伊藤裕季也内野手で、3位に社会人の大貫晋一投手と即戦力中心に補強。最初から単独指名にはいかなかったが、くじを外した場合のプランは例年通り、大学生の即戦力投手というブレない補強方針を貫いた。高校生も好素材で、4位の勝又温史は打者としても非凡で投手で結果が出なければ転向もできるし、5位の益子京右は将来性豊かな捕手。きっちりウイークポイントの対策は行っている。

大学生の即戦力中心のブレない埼玉西武、今年は大学・社会人中心だった鷹

◯中日 高校生3人、大学生2人、社会人1人

 1位入札は高校の人気選手を敢然と指名してくじ引き辞さずという基本姿勢は変わらず、今年は首尾よく根尾を引き当てた。2位も東洋大トリオの一角・梅津晃大投手、3位の勝野昌慶投手は社会人とバランスよく即戦力を補強。根尾と勝野は岐阜出身と、地域性もバッチリだ。4位の石橋は横浜DeNA5位の益子に劣らぬ強打の捕手、5位の垣越建伸投手は甲子園でも登板した左の本格派と、素材型もしっかり指名している。

◯阪神 高校生2人、大学生0、社会人3人、その他1人(育成1人)

 ここ5年、圧倒的に大学生を指名してきたが、今回はゼロ。藤原、辰己を外してなお外野手にこだわって社会人の近本光司外野手を1位指名した。社高-関西学院大-大阪ガスと地域性もあり、福留、糸井のベテランの後継者を作りたい球団の思惑がはっきりしているが、近本は長打力よりも俊足好打タイプ。スラッガー不足のチーム事情とは少々違う選手を指名した印象だ。2位の小幡も知名度は高くないが、スカウトの眼力と伸びしろに期待。世代的に高校生中心かと思われたが、巨人と違い即戦力期待の選手を中心に補強してきた印象。

◯埼玉西武 高校生2人(育成1人)、大学生3人(育成2人)、社会人2人

 投手力に課題があるとはっきりしているだけに、予想通り大学生の松本航投手を単独指名。人気の高校生野手には見向きもせず、一本釣りを好む球団の戦略もブレなかった。2位で素材のよさで高く評価されていた高校生の渡辺勇太朗投手を獲得し、山川、外崎の富士大野手のラインで佐藤龍世内野手も獲得。揺るぎないドラフト戦略が、指名選手からもくっきり見えた。

◯福岡ソフトバンク 高校生2人(育成2人)、大学生2人(育成2人)、社会人3人

 珍しく(?)高校生より大学生、社会人を補強した。小園、辰己を外して東洋大トリオの即戦力、甲斐野を補強。2016年に大学生の田中正義を1位で引き当てた際も、支配下2位~4位、育成6人全員を高校生で固めたが、今回は2位の杉山一樹投手も社会人、3位の野村大樹内野手でようやく高校生を指名した。とはいえ、大学生の6位・泉圭輔投手は粗削りな素材型。育成の看板を下ろしたわけではなさそうだ。

高校生の人気選手に迷わず入札した北海道日本ハム、話題性ある選手を好んだ東北楽天

◯北海道日本ハム 高校生5人、大学生1人、社会人1人、その他0人(育成1人)

 高校生の1番人気・根尾に入札し外したが、1位の吉田輝星投手以下、2位野村佑希内野手、4位万波中正外野手、5位柿木蓮投手と甲子園で名を馳せた選手を次々に指名して話題を呼んだ。育成で選手流出を補う北海道日本ハムの戦略からすれば、ブレないドラフト戦略だ。たまたま、スカウティングによる素材の評価が甲子園のスター選手に集中したというところだろう。捕手の田宮も、正捕手が37歳の鶴岡慎也ということを考えると、今のうちにとっておくのはうなずけるところ。球団初の育成選手、海老原一佳外野手にも注目だ。

◯オリックス 高校生2人、大学生2人(育成1人)、社会人3人

 小園を外して同じ高校生の大型遊撃手・太田椋内野手を指名。高校生野手の1位指名は2010年以来8年ぶりだが、内野手が欲しかったチーム事情をうかがわせる。小園を敢然と指名し、くじ引きに臨んだところは、単独指名志向だった最近の傾向とは異なるが、2位で大学生の頓宮裕真捕手、3位の荒西祐大投手、4位の富山凌雅投手は社会人と、即戦力重視の指名傾向は変わっていない。

◯千葉ロッテ 高校生4人、大学生3人、社会人1人、その他0人(育成1人)

 1位で藤原を引き当て、4位山口航輝外野手、8位土居豪人投手と素材型を指名。6位の古谷拓郎投手は、打者転向し2000本安打の福浦和也の後輩でもあり、地域性もしっかり考えている。2位東妻勇輔、高校時代選抜大会優勝の小島和哉の大学生2投手を補強し、バランスをとった。即戦力も素材の補強も両立させた、いいドラフト戦略だったと言えそうだ。

◯東北楽天 大学生5人、高校生2人(育成1人)、社会人1人(育成1人)

 藤原への1位入札は、高校生のスター選手を好む傾向通りだが、外した後も外野手にこだわり、辰己に入札して見事に引き当てた。今年は圧倒的に大学生が多かったが、過去5年も人数的には大学生が一番多く、ドラフト戦略自体はそれほど変わっていない。高校生のスター選手こそ逃したものの、6位の横浜高元監督・渡辺元智氏の孫・佳明内野手や育成2位の則本昂大投手の弟・佳樹投手なども指名され、話題性のある選手を好む傾向も例年通りだった。

 こうしてみると、今年に限って見れば巨人、福岡ソフトバンクなどは補強方針を転換し、埼玉西武、北海道日本ハムなどはブレない補強方針を貫いた印象のあるドラフトだ。バランスのいい補強、スムーズな世代交代はチームを強化するために必要だけに、このような方向性の違いが5年後、10年後にどういう結果をもたらすか、興味深い。

(Full-Count編集部)

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