松本を一本釣りの埼玉西武、小園指名の広島は方向性が見える
2018年の「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」は25日、都内のホテルで行われ、支配下83選手、育成21人の計104人が指名を受けた。ドラフト1位では4球団競合の根尾昂は中日、同じく4球団競合の小園海斗は広島、3球団競合の藤原恭大は千葉ロッテが抽選の末に交渉権を獲得した。
1位指名でまず重複したのは上記の3人。12球団のうち11球団がこの3人のいずれかに入札し、“一本釣り”の単独指名に成功したのは、松本航を指名した埼玉西武のみ。“外れ1位”でも辰己涼介に福岡ソフトバンク、巨人、阪神、東北楽天の4球団が競合。各球団2度目の抽選では、東北楽天が“当たりクジ”を引き当てて、交渉権を確定させた。
支配下の指名で最も少なかったのは巨人、横浜DeNA、中日、阪神の6選手、最多でも東京ヤクルト、千葉ロッテ、東北楽天の8選手。5球団は7選手の指名だった。ここでは12球団の補強ポイントに照らし合わせ、今ドラフトの指名を検証してみよう。
まず真っ先に高く評価できるのは、それぞれ抽選で根尾、藤原を引き当てた中日と千葉ロッテだ。
千葉ロッテは公表していた通りに藤原を1位で指名し、井口資仁監督が見事、交渉権を引き当てた。熱望していたスピードとパワーを兼ね備えた高校ナンバーワン外野手を指名しただけでなく、2位で東妻勇輔、3位で小島和哉と即戦力の左右両腕を指名。4位と6位で山口航輝、古谷拓郎と高校生投手2人、5位で中村稔弥の大学生左腕と指名した。
中日は準地元の岐阜出身の根尾昂を1位で指名。今ドラフト最多タイの4球団競合となったが、与田剛新監督が抽選を引き当てて“意中の恋人”を射止めた。さらに、2位で梅津晃大、3位で地元・三菱重工名古屋の勝野昌慶と即戦力の右腕2人を指名し、課題だった投手陣を補強した。この2球団は上々のドラフトとなったのではないか。
北海道日本ハムは吉田、野村佑、万波、柿木と“甲子園のスター”を指名
今季、それぞれリーグを制した埼玉西武と広島も方向性が見えるドラフトだった。
埼玉西武は一本釣りで松本航を指名。補強ポイントとされていた即戦力投手の単独指名に成功した。4位で粟津凱士、6位で森脇亮介とこちらも即戦力として期待する投手も指名。浅村のFA移籍の可能性がある内野手には3位で山野辺翔を指名し、7位には山川や外崎、多和田を輩出した“得意”の富士大から内野手の佐藤龍世も指名した。
広島は小園海斗を競合の末に獲得。将来的な菊池、田中の後継者候補の指名に成功した。2位では島内颯太郎という即戦力投手を加えた。3位以下は林晃汰、中神拓都、田中法彦と高校生を次々に指名し、将来性を重視した指名に。今季3連覇しているように現有戦力はリーグナンバー1で、数年先もしっかりと見据えたドラフトだったといえる。
大きな注目を集めていた吉田輝星投手を指名したのは北海道日本ハム。根尾を外したものの、“外れ1位”で単独指名に成功。2位では右の大砲候補である野村佑希、4位で万波中正、5位で柿木蓮と、昨年の清宮幸太郎に続く“甲子園のスター”を続々と指名。3位では即戦力投手の生田目翼も指名できており“らしい”ドラフトだった。
横浜DeNAは小園を抽選で外し、“外れ1位”で上茶谷大河を指名。東京ヤクルトとの競合となったが、抽選で引き当てた。近年、即戦力投手が入団し活躍しているだけに上茶谷にも期待だ。2位では強打の二塁手である伊藤裕季也を指名。チームの補強ポイントの二遊間を補強した。同じく小園を外したオリックスは、小園と同じ遊撃手の太田椋を指名。“ポスト安達”の候補をチームに加え、2位では長打力のある頓宮裕真、そして3位、4位で荒西祐大、富山凌雅と即戦力投手を補った。
東北楽天は藤原を外したものの、同じ外野手の辰己を“外れ1位”の4球団競合の末に引き当てた。辰己をはじめ、2位の太田光、4位の弓削隼人、6位以下の渡辺佳明、小郷裕哉、鈴木翔天と大学、社会人を中心に指名した。根尾、上茶谷を連続で外した東京ヤクルトは即戦力の清水昇を“外れ外れ1位”で指名。大学生3人、高校生3人、社会人2人と満遍ない指名だった。
福岡ソフトバンクは抽選2連敗も最速159キロの甲斐野を指名
福岡ソフトバンクは昨年に続きクジ運に恵まれず。昨年は清宮、安田、馬場と“3連敗”、今年も小園、辰己で“2連敗”した。最も課題とされる野手を逃したものの、“外れ外れ1位”で159キロ右腕の甲斐野央を指名できたのは、まずまず。3位で指名した王貞治球団会長の後輩にあたる野村大樹に、松田、内川の後継者として期待したいところ。
巨人も根尾、辰己の抽選を相次いで外し、こちらは最速151キロ左腕の高橋優貴が1位に。どちらかといえば、高齢化の進む野手にテコ入れしたいところだが、高校生の増田陸、松井義弥の2人を指名したのみ。来季に向けては、FA補強に乗り出すか、現有戦力でなんとかするしかない。支配下6人中5人が高校生という指名になった。
12球団で最も苦しいドラフトとなったのは阪神か。藤原、辰己と外野手に相次いで入札したものの、抽選で“2連敗”し、侍ジャパン社会人代表の近本光司を指名した。福留、糸井と高齢化の進む外野手を補いたかったのは頷けるが、果たして、1位で指名するほどだったか。
さらに、2位ではそれほど下馬評の高くなかった高校生内野手の小幡竜平を指名。東妻や梅津といった1位候補がまだ指名されておらず、しかも、2位指名のウエーバー順が東北楽天に続く2番目であることを考えると、この1位、2位にはいくばくかの疑問が残る。近本、3位の木浪聖也、4位の齋藤友貴哉の社会人3人と独立リーグの6位・湯浅京己と即戦力4人の指名となったが、果たして……。
ドラフトの成果は、この後、指名された選手がどのような結果を残したかによって計られるもの。1年ではなく、5年、10年後に、このドラフトがいかなる結果となっているか……。数多くの選手が、プロ野球界を沸かせる活躍を見せてくれることを願いたい。
(Full-Count編集部)
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