強さが凝縮されたような初回の攻撃 各選手が力を発揮した福岡ソフトバンクが日本Sへ【最終決戦、運命を分けた1プレー】

中島大輔

2018.10.21(日) 19:15

初回にグラシアルが意表をつくセーフティバント
初回にグラシアルが意表をつくセーフティバント

 短期決戦は、初回に試合が動きやすい――。
「2018 パーソル クライマックスシリーズ パ」ファイナルステージが開幕する数時間前、埼玉西武の秋山翔吾とそんな話になった。

「CSは次に取り返す機会がないので、先発ピッチャーは野手以上に気持ちが高ぶっていると思います。野手は打てなければ打てないで割り切って、やれることをやる。ピッチャーは『抑えなきゃいけない』ということが(気持ちの)制限としてかかってくるので、立ち上がりの難しさがあると思います」

 第3戦を除き、今シリーズではすべての試合で初回に試合が動いていた。しかも、先制したチームがすべて勝っている。福岡ソフトバンクが王手をかけて迎えた第5戦も、そうした結末をたどった。

「今日は本当に大事な試合だと思っていたので、初回から勢い付けたかったです。初球から行こうと決めていたので良かったですね」

 そう振り返った福岡ソフトバンクの1番・上林誠知は、埼玉西武の先発・ウルフがど真ん中に投じた初球のツーシームを見逃さず、ライト線に2塁打。2番・明石健志は送りバントを2度ファウルにしたものの、死球で出塁する。負ければ敗退が決まる埼玉西武の先発・ウルフは、明らかにプレッシャーを感じているような立ち上がりだった。

 ここで、キューバ出身の3番・グラシアルが自らの意思で仕掛ける。
「ああいう状況だったので、バントをしてランナーを進めることが自分の打席でできる最大限の仕事と思ってやりました。野球の特性を考えて、打つ場面ではなくバントが必要な場面でした」

 グラシアルがファーストの山川穂高の前にセーフティバントを試みると、セカンドの浅村栄斗のベースカバーがわずかに間に合わずに無死満塁。今シリーズで打率.438と好調の柳田悠岐が打席に向かった。
「ノーアウト満塁だったので、楽に立たせてくれたかなとは思いました」

 3ボール、2ストライクとなって6球目、ど真ん中に甘く入ったツーシームを柳田はコンパクトなスイングで打ち返すと、走者一掃のタイムリー2塁打で大きな3点をもたらした。

「ツースリーになっていましたしね。フォアボールでも外野フライでも1点入ると思ったので、比較的楽に打席に入れました」

 1番と3番が自身の仕事を果たし、不安定な相手先発を攻めてチャンスメイク。フルスイングが持ち味の主砲は「外野フライでもいい」と力を抜いてバットを構え、やるべき仕事を遂行して最高の結果を残した。福岡ソフトバンクの強さが凝縮されたような初回の攻撃だった。

 先行した福岡ソフトバンクは常に優位に試合を進め、1点差に迫られた直後の6回には柳田がライトスタンドへの本塁打で4対2。

 再びリードを1点差にされた8回には2死1、2塁から上林がライトオーバーの2点タイムリー3塁打を放ち、貴重な追加点を叩き出した。
「追加点をとりたい場面だったので、最後にあの2点が大きかった。自分をほめたいですね」
 上林がそう振り返ったように、結果的にこの2点が最後に明暗を分けた。
 福岡ソフトバンクは8、9回に1点ずつ返されたものの、6対5で逃げ切って勝利。今シリーズを通じて各選手が勝負どころできっちり仕事を果たし、2年連続の日本シリーズ出場を決めた。

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中島大輔

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